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外伝・アルフレッド王編・夢の国の果て
アルフレッド王編・夢の国の果て 7
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エルシオン王国で暮らすうちに、僕はよく笑うようになった。
明るくもなった。
そして考え方は根底からひっくり返った。
どの人も親切で、心はいつも安らか。
時々皇太子様たちと城を抜け出し町に遊びに行くこともあったが、庶民たちは皆ニコニコと寄ってくる。
危険な目にあったことなど一度も無い。
護衛もつけていないのに。
豊かで美しくて、まさに理想の国。この世の楽園だ。
人の手によってここまでの国が造れるのなら、僕の国だっていつかはそうなれるかも。
ああ、僕の祖国もこのような優しい国となって欲しい……。
エルシオンに来て一年がたったころ、僕は父上に頼み込んで継承権を廃していただいた。
父王は中々応じてくださらなかったが、そうするのがきっと一番いい。
エルシオン王国レベルで仲良くというのは無理としても、これ以上祖国の皆に争って欲しくはない。
正妃様は、元々は優しい方だった。
そして父の女好きは、最近ほぼ収まってきているという。
後は僕が恨みを捨て、自らの『低き血統』をわきまえて継承権を放棄すれば、正妃様もきっと落ち着かれる。
祖国の妾妃たちも少しは目が覚めて、自分の立場を自覚なさるだろう。
一番の問題は、僕の代わりに世継ぎの座に再び着く『正妃様のお子』のこと。
しかし彼は、他はともかく『性格だけ』は良い。
大きくなるにつれ周りから色々学び、成長するだろうし、優秀な補佐をつければそれなりに世継ぎとしてやっていけるに違いない。
確かにあの子は、僕が故国にいる頃には極めて愚かに見えた。
でもエルシオン王国にいるうちに僕は考えを変えた。
病気の召使の仕事を代わってあげた心優しき王妃様のような事を……そうだ、あの子は最初からしていたではないか。
……慈善団体に(勝手に)寄付をしたり。(後に悪徳団体と判明)
……持病のある侍女の母のために極めて高価な薬を求めたり。(偽薬をつかまされた事が後に判明)
……城外見回りのときに見つけた浮浪者に同情して、分不相応な地位を与えたり。(元々の臣下たちに大不評だったが、正妃様の力でごり押し)
他にも諸々、全く懲りずにやったけど……。
でも優しさに付け込む悪者どもが悪いだけであって、あの子が悪いわけではない。
そうだ、あの子は『地上の楽園エルシオン』に最も近い清らかな心の持ち主。
あの子が王になるのが一番なのだ。
争うなんて馬鹿馬鹿しい。
僕はそう考え、父王に頼み込んで皇太子の地位を廃していただいた。
我侭を聞いてもらう代わりに国に帰らねばならなくなったが、王宮から遠く離れた辺境の土地を頂いたので、そこで無難に過ごせればいい。
ああ、もっと早くにそうすれば良かった。
国に居た頃にその考えに至っていれば、きっと母を失う事だって無かったはずなのに。
明るくもなった。
そして考え方は根底からひっくり返った。
どの人も親切で、心はいつも安らか。
時々皇太子様たちと城を抜け出し町に遊びに行くこともあったが、庶民たちは皆ニコニコと寄ってくる。
危険な目にあったことなど一度も無い。
護衛もつけていないのに。
豊かで美しくて、まさに理想の国。この世の楽園だ。
人の手によってここまでの国が造れるのなら、僕の国だっていつかはそうなれるかも。
ああ、僕の祖国もこのような優しい国となって欲しい……。
エルシオンに来て一年がたったころ、僕は父上に頼み込んで継承権を廃していただいた。
父王は中々応じてくださらなかったが、そうするのがきっと一番いい。
エルシオン王国レベルで仲良くというのは無理としても、これ以上祖国の皆に争って欲しくはない。
正妃様は、元々は優しい方だった。
そして父の女好きは、最近ほぼ収まってきているという。
後は僕が恨みを捨て、自らの『低き血統』をわきまえて継承権を放棄すれば、正妃様もきっと落ち着かれる。
祖国の妾妃たちも少しは目が覚めて、自分の立場を自覚なさるだろう。
一番の問題は、僕の代わりに世継ぎの座に再び着く『正妃様のお子』のこと。
しかし彼は、他はともかく『性格だけ』は良い。
大きくなるにつれ周りから色々学び、成長するだろうし、優秀な補佐をつければそれなりに世継ぎとしてやっていけるに違いない。
確かにあの子は、僕が故国にいる頃には極めて愚かに見えた。
でもエルシオン王国にいるうちに僕は考えを変えた。
病気の召使の仕事を代わってあげた心優しき王妃様のような事を……そうだ、あの子は最初からしていたではないか。
……慈善団体に(勝手に)寄付をしたり。(後に悪徳団体と判明)
……持病のある侍女の母のために極めて高価な薬を求めたり。(偽薬をつかまされた事が後に判明)
……城外見回りのときに見つけた浮浪者に同情して、分不相応な地位を与えたり。(元々の臣下たちに大不評だったが、正妃様の力でごり押し)
他にも諸々、全く懲りずにやったけど……。
でも優しさに付け込む悪者どもが悪いだけであって、あの子が悪いわけではない。
そうだ、あの子は『地上の楽園エルシオン』に最も近い清らかな心の持ち主。
あの子が王になるのが一番なのだ。
争うなんて馬鹿馬鹿しい。
僕はそう考え、父王に頼み込んで皇太子の地位を廃していただいた。
我侭を聞いてもらう代わりに国に帰らねばならなくなったが、王宮から遠く離れた辺境の土地を頂いたので、そこで無難に過ごせればいい。
ああ、もっと早くにそうすれば良かった。
国に居た頃にその考えに至っていれば、きっと母を失う事だって無かったはずなのに。
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