痣。

藤野 優

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二人のあいつ、そして距離の話。

2−4

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なぜ今オレは小中学校のときのいじめっ子、金田に腕を握られているのだろうか。痛いのでやめてほしい。

あの、離していただけませんか?と聞くと、マスクを外せと帰ってきた。腕が開放されることはなかった。日本語が通じない。 
マスクを外せば開放されるかもしれないという希望にマスクを外すと、舌打ちされた。なぜなのだろう。

悪あがきににしかならないがもう一度手を解くように言う。

すると、人違いだったと適当なことを言って解いてくれた。まさかコイツと日本語で話せるときが来るとは思っても見なかったので、かなり驚いた。ただ、ここに突っ立っていれば、いつバレるかなんて時間の問題だ。

ソサクサとその場を離れて本来行きたかったところに向かう。
用を足して、いつものように手直しをする。まぁよほどのことがなければ、ずれることなんて早々ない。

ササッっと首を動かして痣がはみ出ていないかを確認する。気づかないうちにハァとため息が出た。
毎度まいど、ふとした時にこんな痣がなければ、こんなことをしなくても良かっただろうなと思ってしまう。

キィィとドアが開く音がしたので急いで、マスクを上げて蛇口から水を出した。

誰かが入って来ればこんなことはできない。女性ならまだしも俺がやっていれば不審でしかない。
手を洗うふりをする。そこまで目立ったズレや剥がれはなかったので、手直ししなくてもいいかと諦めてトイレから出る。


元いた席に行くと、また白鳥が面白くなさそうな顔をしながらスマホを睨んでいた。
こっちに気づくとスマホから目を離し、おかえり遅かったね。なんかあったの?と言ってきた。
なかったといえば無かったのだがないわけではない。

ただ、小学校のときの同級生がいたと言えば、それはすなわち白鳥の同級生でもあるわけだから、ごまかしが効かない。大したことじゃないよ。それより、会計を済ませよう。とお茶を濁して話題を変える。


お会計を済ませ、外に出るとまだ行列が残っていた。そんなに人気があったんだなぁ、自分はあまり好きだは無かったけれど。と思いながら、列の向きとは反対に帰路についた。

分岐点で別れを告げ、午後にはシフトが入っていないのでそのまま家に帰る。


ようやく、アパートに着いて階段を登ると誰かが俺の部屋のドアをガチャガチャといじっていた。空き巣だ。
え・・と思わず声が漏れてしまった。本当にこんな事があるのか、、と息を呑んだ。
震える手で警察を呼んで静かに、そいつがどう行動するかをじっと見ていた。きっと、こっちに気づいていないうちに警察が来るはずだろう。





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