痣。

藤野 優

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あいつがあいつだと気づくまでの話。

1−6

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居酒屋に入るとごった返した人と揚げ物の匂いが溢れかえった。

こっちこっち~と、もう出来上がっているであろう人物がさっきまでの店長のように手を振っていた。
畳に上がって隣の机に皆がぞろぞろと座り始めたので、俺はその机の一番端の席に腰をおろした。


「飲み物何にする?」と大学生ぐらいの女子が聞いてきたので烏龍茶で、と言うと
えー生にしないの?と帰ってきた。

じゃぁなんで聞いてきたんだよ?生でいい?って聞けばいいだろ。と思ってしまった。
酒は弱いわけではないが母親のことを見ていたのでと抵抗があった。
ただ、そんなことを言うのは気が引けたので
「あんまりお酒、強くないので。すいません。」と答えた。
弱くはないが強いわけじゃない。だから嘘は言ってない。

へーそうなんだ、じゃ烏龍茶ね、と流されたので意味もなくホッとした。

唐揚げやフライドポテトなど飲み物の他にも各々欲しい物を注文していてあたりはガヤガヤとしていた。


とりあえず一回目の注文を終わらせて、数分経った頃に飲み物がきた。
黄金色の飲み物の群れに焦げ茶が一つだけ混じっていて、申し訳なく思った。
ジンジャエールとかドデカミンあたりの色が似ている飲み物を頼んでおけばよかったなと反省した。

かんぱ~い、とはじめからテンション高めの号令がかかると店長が新しいスタッフが来た。と長々話を始めた。
別に嫌なことではないがこうも長々と話することはないだろう。

マスクを外すのが嫌だったので、しばらくお茶は飲まないようにしていた。

周りはお酒が入って、よりガヤガヤしてきた。須藤さんは俺の隣に来て
「いやぁほんとにありがとね。覚えもいいし教育しがいがあるわぁ」と絡んできた。

それはお役に立てて何よりです、と酔っ払った人に行っても意味のないような
当たり障りのないことを口から絞り出した。

正直つらい。絡み酒ほんと無理。酒臭いし。暴力ふるってくるやつより平気だけど。でも、辛い。
それが、顔に出てたのか他店の”いわゆるイケメン”がこっちによってきた。


「はじめまして大北店の白鳥 快しらとり かいです。よろしくおねがいします」
ニコニコキラキラしながらこっちに寄ってきて自己紹介を始めた。
しょうが無いのでこっちも自己紹介をしてしばらく話していたが
どうやら、女子に絡まれるのにうんざりしてこっちに来たらしい。呪うぞ。


そういえば別のキラキライケメンは結構前に図書館で話しかけてきたなと思ったが
雰囲気も顔も全く違う。いや顔に関してはイケメン全員おんなじに見える。
みんな芋に見えるよこの野郎。

そんなことを考えていたら、
「黒木さんは飲まないんですか?」
と聞いてきた。
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