痣。

藤野 優

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あいつがあいつだと気づくまでの話。

1−5

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仕事を始めてから1,2週間ほど過ぎて
初めの方はおぼつかなかったことも、出来るようになってきた。

そんなある木曜日の夕方須藤さんに話仕掛けられた。
「ねぇ黒木さん、明日の閉店後飲みに行かないかしら?
他店の方とも一緒にやるんだけれど、、。
そういえば、黒木さんの歓迎会をやってなかったなぁと思って、ね?いいでしょう?」

ここ数週間で分かったことといえば、須藤さんは香水の匂いと押しが強いことだ。
断れる雰囲気でも、何かしなければならない予定もなかったし、
飲みに行ったぶん、食費が浮くから都合が良かった。
わかりました、行きますね。と返事をした









ついに金曜日になった。
その日は早番だったので、開店時間から昼前まで店にいて
昼は、ご飯の買いだめにスーパーに行ったこと以外には家にいた。
出発する予定の30分前になって、痣を隠すためのテープファンデを貼り、
馴染むように少し化粧をした。
なんで、男のお前が化粧なんかしてるんだと言われたらなんとも返せないが
こればかりはしょうがない。

23時半に駅前集合とのことだったので、
ちょうどに着くんじゃないかなと思いつつ、23時に家を出た。

都会の光で霞む夜空を見上げて「ハメを外しすぎないように。」
と、誰に言うでもなくポツリと呟いた。



バスも地下鉄ももう終電が行った頃で、徒歩になったもんだから30分かかった。
それを見越して出発したつもりだったが、体力までは考えてなかった。
そのせいで、駅前に着く頃には足が悲鳴を上げていた。

お疲れ~んじゃぁねぇ~、と他社のお酒を飲んで赤くなっている女性が近くの居酒屋から出てきていた。
確かに本来この時間は、二次会に向かうか帰宅するかの時間帯だった。

俺の努めているところは、やっぱりスタッフ皆でお祝いしたいから!
と終業に合わせて、飲みに行くことになったのだ。

駅前のよくわからないモニュメントの前にいた須藤さんがこっちを見るなり大きく手を降ってきた。
恥ずかしいのでやめて欲しかった。足にムチを打って早足でモニュメントのもとに向かった。


お待たせしました。と予定の5分前に言うのは違和感があったが、それ以外にかける言葉もないのでそう言った。
まだ5分前でしょ~と須藤さんは笑っていた。
ちょっとずつ時間が過ぎて、集合時間から15分ほど経った頃に全員が集まった。
人数は10人ほどしかいなかったが顔も知らない人がちらほらいた。

「さ、こんなとこに居ても何だから早くお店入ちゃお」
という店長の声で他店の人もいるであろう居酒屋に向かった。
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