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あいつがあいつだと気づくまでの話。
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自傷行為以外にも現実逃避の術は持っていた。
読書だ。
図書館に入れば、皆静かに本を覗いてこっちを見ない。
安心して息が吸える。
それだけじゃない。
本を開けば、自分じゃない人間になれるし
そうすることによって自分に痣があることを忘れることが出来る。
多い日には開館と同時に入って、閉館と同時に出たこともある。
その日は食事を忘れていて、慌ててコンビニで軽食を買ったことを覚えている。
いつまでも居れる
いや、居たいと思える空間は今の所ここしかない。
■
ところがある日静かに集中して本を読んでいたのに、声をかけられた。
まだ閉館時間の23時じゃない。
最悪だ。
人と無駄な干渉をしないために、ここにいるのに。
しばらく知らないフリをして過ごしていたが、何度も何度も「あのぉ、すいません、ちょっといいですか」と繰り返してくる。
しつこいなぁ。声かけてくんなよ。
流石にこんなことは言えないが隠す気もサラサラなかった。
必死にそういう雰囲気を出していたのだが、努力も虚しく肩を叩かれてしまった
「は、えっと、私のことですか、、?」
その時初めてあなたの存在を知りました、と言わんばかりの顔と声で
顔を上げた。
きれいな顔立ちをしていかにも自分大好きみたいなオーラを醸し出す
自分とは真逆の人間が立っていた
最悪だ。
用なんかないだろ。
たぶん隣の人と間違えてんじゃないのか???
まぁそんなことないか。
ハイネックからはみ出てたのか、、。
だんだんよれて首元ゆるくなってるのかもしれないな
新しいのを買って、フード被ろう。
そんなことをくるくる考えていたら
目の前のやつは小さく確認するように
「えっと、黒木だよな、、?」
と言った。
は、、?
なんで俺の名前知ってんの
え、こんなやつ知り合いにいねぇぞ
脳内はパニックを起こした。が、
そんな脳内の片隅で「俺みたいな痣だらけの人間なんか一回見ただけで覚えるだろ。」
と思ってしまった。
ただそんな焦りはマスクとメガネを付けた人間の顔に現れることはなかった。
「え、っと、、ひ、人違いだと、お、思います、、。」
・・・。
声には表れたけれども。
図書館としては正しいのかもしれないが、
人間間の中ではなんとも言えない違和感のある沈黙が流れた。
とても長く感じられる沈黙を抜けて
「そう、、ですよね、、。すいません。読書中にお声がけしてしまって。」
そう言い残して変なイケメンは去って行った。
「まさか人違いするとは思ってなかったな。
でも、あの見た目で間違うこともないと思うんだけどなぁ。
っつか、小中高大と一緒にいて忘れられてたらちょっと悲しいんだけど。」
とぶつぶつ呟いてた声は
いいことなのか悪いことなのか俺の耳には、入って来ていなかった。
読書だ。
図書館に入れば、皆静かに本を覗いてこっちを見ない。
安心して息が吸える。
それだけじゃない。
本を開けば、自分じゃない人間になれるし
そうすることによって自分に痣があることを忘れることが出来る。
多い日には開館と同時に入って、閉館と同時に出たこともある。
その日は食事を忘れていて、慌ててコンビニで軽食を買ったことを覚えている。
いつまでも居れる
いや、居たいと思える空間は今の所ここしかない。
■
ところがある日静かに集中して本を読んでいたのに、声をかけられた。
まだ閉館時間の23時じゃない。
最悪だ。
人と無駄な干渉をしないために、ここにいるのに。
しばらく知らないフリをして過ごしていたが、何度も何度も「あのぉ、すいません、ちょっといいですか」と繰り返してくる。
しつこいなぁ。声かけてくんなよ。
流石にこんなことは言えないが隠す気もサラサラなかった。
必死にそういう雰囲気を出していたのだが、努力も虚しく肩を叩かれてしまった
「は、えっと、私のことですか、、?」
その時初めてあなたの存在を知りました、と言わんばかりの顔と声で
顔を上げた。
きれいな顔立ちをしていかにも自分大好きみたいなオーラを醸し出す
自分とは真逆の人間が立っていた
最悪だ。
用なんかないだろ。
たぶん隣の人と間違えてんじゃないのか???
まぁそんなことないか。
ハイネックからはみ出てたのか、、。
だんだんよれて首元ゆるくなってるのかもしれないな
新しいのを買って、フード被ろう。
そんなことをくるくる考えていたら
目の前のやつは小さく確認するように
「えっと、黒木だよな、、?」
と言った。
は、、?
なんで俺の名前知ってんの
え、こんなやつ知り合いにいねぇぞ
脳内はパニックを起こした。が、
そんな脳内の片隅で「俺みたいな痣だらけの人間なんか一回見ただけで覚えるだろ。」
と思ってしまった。
ただそんな焦りはマスクとメガネを付けた人間の顔に現れることはなかった。
「え、っと、、ひ、人違いだと、お、思います、、。」
・・・。
声には表れたけれども。
図書館としては正しいのかもしれないが、
人間間の中ではなんとも言えない違和感のある沈黙が流れた。
とても長く感じられる沈黙を抜けて
「そう、、ですよね、、。すいません。読書中にお声がけしてしまって。」
そう言い残して変なイケメンは去って行った。
「まさか人違いするとは思ってなかったな。
でも、あの見た目で間違うこともないと思うんだけどなぁ。
っつか、小中高大と一緒にいて忘れられてたらちょっと悲しいんだけど。」
とぶつぶつ呟いてた声は
いいことなのか悪いことなのか俺の耳には、入って来ていなかった。
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