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第14話

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「何だか貧乏くさい匂いがするなあと思ったらアルシアの匂いだったわ。影が薄すぎて気がつかなかったわあ??」
「あれあっれー? 第二王子の腰巾着はボウズですかあー?? 魚釣りもできない使えない女に入れ込むなんて、頭沸いてるんじゃね??」

 滝壺の釣り場の一角で適当に釣り糸を垂らしていると、案の定他の冒険者パーティーが声をかけてきた。安い挑発だなと俺は思うけど、アルシアにとっては許せないことだったらしい。顔を赤くしたり青くしたりトマトみたいになっていて、火魔法でもぶっぱなしかねない情緒不安定。

 ちなみに冒険者が冒険者に攻撃することは御法度。そんなことをすればアルシアには罰が下るのはもちろん、アルシアと懇意にしている第二王子と第一王女の評判を貶めることにもなってしまう。事前にそういったことも含めて打ち合わせをしているので大丈夫……、だよな?

 下を向いて何かをぶつぶつ言っていたアルシアだが(俺には「しねしねしねしね」とハッキリ聞こえていた)、うざがらみをしてきた冒険者たちにニヘラっとアホっぽい笑顔を見せ、「そーなんだよねー、なんでだろー」と言いながら後頭部を右手の人刺し指でポリポリ。

 どこからどうみてもチンピラにしか見えない冒険者たちも、
「ねえべオルグ、こんな小娘相手にするだけ時間の無駄よ。行きましょ?」
「ちっ! つまんねーガキだな。てめえら行くぞ!」
 と捨て台詞を吐いて去っていった。どうやら向こうもアルシアを挑発して攻撃させて、第二王子の評判を下げる魂胆だった模様。

「よくやったぞアルシア! これでアグニス様の風聞は守られた!」
「うん、そうだね! ありがとうシャーデン!」
 俺に褒められたアルシアは喜んでいるようだった。素直な子や。

「じゃあ、そろそろベースキャンプに影鷹と影狼が戻ってきているかもしれないし、戻ろうか。魚とってきてるかもなー」
「あ、そうだった! お魚さん~♪」

 焼き魚にかぶりつく自分を想像したのだろう、アルシアはニヘラっと表情をだらしなく緩ませた。
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