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第2話

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 目が覚めるとどこかの廃墟にいるようだった。俺はなぜか折り畳まれた服の上にいた。横に視線をずらすと瑠璃色の艶やかな髪をしたパジャマ姿の可愛らしい美少女が布団がわりの布にくるまって寝息を立てている。美少女は廃墟のすき間から風が吹き込む度にブルリと震え、またお腹がすいているのか時折腹を鳴らす。

 自分の体を見ることはできないが、美少女と自分とを比べたサイズ感、そしてあの神様との会話からしてどうやら本当に自分はパンティーになってしまったのかも。とそこへ。

(おーおー、無事パンティーに転生できたようじゃの! お主のイメージ通りの可愛らしいパンティー型の魔道具じゃ。感謝するがよい!)
(感謝するがよい、じゃねえ! どうしてくれる!)
(お主がそう言ったからの? こちらに非はないぞ?)
(確かに言ったけどよ、普通冗談だってわかるだろうがよ……)
(フォッフォッフォッフォ)
 神様の声が頭に響いたので心の中で言葉を発してみたら会話が成立した。あとやっぱりパンティーになってしまったのは確定らしくガックリと落ち込む俺。いや、落ち込んでる場合じゃない。

(それよりもこれどういう状況なんだよ、ってか人間に戻してくれよ!)
(それは無理じゃ。再び人間に転生するには、魔道具として生を全うし、徳を積まねばならぬのじゃ!)
(なんだと!?)
(とりあえずそこにいる少女を助けてみることじゃ。徳を積み、魔道具として生を全うすれば、いずれ人間として転生させることも可能なのでな)
(まじか……)
 俺は横にいる美少女の寝顔を見る。確かに頬が煤《すす》けて汚れており、せっかくの美少女が台無しだ。こんな廃墟に住んでいることからも何か困っている状況にあるのだと推測できる。

(あとお主には貯まった徳を使ってお役立ち能力スキルをつけてあるので説明するぞい。言語理解、五感、魔力上昇(小)、影獣(狼)、空間収納(小)、探知(小)じゃ。言語理解と五感で会話が可能に、魔力上昇(小)はお主を装備する者の魔力を上げる、影獣(狼)は敵と戦わせることのできる獣魔を召喚することができるスキルじゃの。まずは色々試してみることじゃ)
(わかった……)
 スキルって言えば、漫画とかで出てくるあれだよな。

(ステータスとスキルポイント、スキルツリーと心の中で唱えれば、表示されるようになっておる。ステータスとスキルポイントはモンスターを倒してその魔石を体内に取り込めば上がるし、スキルを使うのに必要な魔力もそれで回復する。新たなスキルを取得してせいぜいサバイブするがよかろう。そこは人の身で生き抜くにはかなり危険な世界なのでな)
 モンスターがいるのか……。

(あとはその少女とのファーストコンタクトじゃが…、まああんまり説明しすぎるとワシの楽しみが減るのでの、このくらいにしておくぞよ。それでは素敵な魔道具ライフを送るのじゃ! ふぉーっふぉっふぉっふぉっふぉ!)
 「俺は神様の娯楽のために生きてるわけじゃないんですけど!」と文句を言おうと思ったら、神様は笑ゥ◯ぇるすまんのような笑い声の余韻だけを残し気配はすでになくなっていた。
 まあ、文句を言ったところで徳とやらを積まないと神様にもどうしようもできないようだし意味がない。何より徳さえ積めば人間に転生し直すことができると神様は言た。ゴールが明確なら人間頑張れるってもんだ。

 ならやってやんよ、魔道具パンツライフ。人間になどすぐに返り咲いてやる。
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