2 / 4
序章
2話:クロッサム・ベリーとカフェイン過剰摂取
しおりを挟む
「【カフェイン】というのがわからんな、お前わかるか?」
「えっと、カフェインは緑茶やコーヒーなどの植物に含まれるもので、眠気覚ましの覚醒効果があります。逆に飲み過ぎると眠れなくなったり、ひどい場合には依存症になったり、禁断症状が出て寝込む場合もあるのですが…」
異世界にもお茶くらいは流石にあるだろうが、緑茶やコーヒーがあるとは限らない。似たような植物があればいいけど。
「ああ、それならクロッサム・ベリーがそれかもしれん。庶民の間でもたまに眠気覚ましに食べるし、偏食貴族がバカみたいに食べて頭痛で寝込んだという話も聞いたことがある。この辺りにも果物の木が生えてるはずだから探しに行くぞ。足元に注意して着いてこい」
リュウさんは降ろしていた大きめなリュックサックと大きな両手剣を背負い直すと、お目当ての植物を探すため歩きだした。
「お前、靴履いてないのか。ちょっと待ってろ」
靴下だけの状態だった私を見かねたリュウさんが、ターバンの上部な布と紐で簡易的な靴を作ってくれた。
「よし、これでだいぶんマシだろ」
「すみません師匠…」
あとでちゃんと恩返ししないとだ。
クロッサム・ベリーを探ししばらく歩いていると、グレーウルフなる2メートルくらいの狼モンスターが出現した。それでもリュウさんは危なげなく両手剣で一閃、真っ二つにグレーウルフを切り捨てたのだった。
頭から真っ二つになった狼の死体を試しに鑑定してみると、どうやら雑魚モンスターらしい表記がなされていた。しかしナイフ一本もたない私では、この雑魚モンスターにすら勝てなかっただろう。というか素手で狼に勝てる人間など、大の男でもそうはいない。
それからさらに歩き、リュウ師匠は目的の果物の木を見つけた。
リュウ師匠は両手剣で手際よく手頃な枝を果物ごと切り落としてキャッチ。「食ってみろ」と私にクロワッサンの形をしたベリーを一房渡してくれた。
食べる前に一応鑑定してみると、
【クロッサム・ベリー:カフェインを含有する果物。食用可能、そこそこ美味しい】
だそうだ。
「あ、リュウ師匠、この果物、カフェイン含んでいるみたいです!」
試しにベリーを一粒ちぎって口に放り込む私。くちに広がる爽やかな酸味が口に広がっていく。カフェイン独特の血流が早まり、頭がゆっくりと覚醒する感じが心地いい。キまる~!
と油断していたら、若干引き気味のリュウ師匠が目に入った。違いましてよ私はお嬢様デスワ。オホホのホ。
「で、どんな感じだ?」
「あ、そうでした。ちょっと待ってください!」
自分に鑑定! と念じると、
レベル:1
体力:7
魔力:3(+1)
俊敏さ:6
器用さ:7
カフェイン:1(許容限界7)
スキル:鑑定、アイテムボックス、カフェインテイマー
ステータス項目に「カフェイン」が追加されていた。それに魔力に+1、とついていた。
「リュウ師匠、カフェインってステータスに書いてあるんですが、なんでしょう…?」
「詳しくはわからん。だがスキル説明から推測するに、このカフェインを消費するか維持するかして、テイミングを行うのかもしれん」
「なるほど…」
「では、ものは試しだ。一回カフェインが7以上になるまで食ってみろ」
「え? 怖いので嫌です」
実際それで転生したわけだし。
「いいから食え。どんなスキルなのか確かめておかないと、いざという時に使えんだろう!」
「確かにそうですが! でも嫌なものは嫌です!」
「強情な弟子だ」
躊躇する私の口に、クロッサム・ベリーを突っ込むリュウ師匠。言うことは確かに間違ってないけど、心の準備というものが。
えーい、ままよ!
意を決して口にぶち込まれたクロッサム・ベリーを飲み込む私。カフェイン特有の脳が覚醒する感じは相変わらずだが、それとは別に不思議な力のようなものが湧いてきている感覚があった。
摂取量はコントロールしないといけないので、私は飲み込む都度自分を鑑定し、過剰摂取になりすぎないよう少しづつ飲み込むことを心がけた。口にぶち込まれたといっても、飲み込まない限り過剰摂取にはならないはず。ちなみに魔力の値がカフェイン1の状態だと+1だったものが、カフェイン7の状態だと+49と魔力が爆増していた。
「これ、今なら私魔法使いになれるかも!」
とビックマウスを叩いた瞬間、事は起こった。
カフェインの値が7に到達した後も調子に乗って果物を飲み込んでいたら、カフェイン7の数字が赤文字になってしまった。と同時に、手足が痺れ動けなくなった。助けてリュウ師匠!
「ふむ、これが許容限界に達したということか。なるほど、この状況からどのくらいで回復するのか確かめねばなるまい…」
いや、そんなこと言ってる場合じゃ! と思っていたら、リュウ師匠は私の口に自分の指を突っ込んで口内に残った果物をかき出し、皮袋に入った水を飲ませてくれた。リュウ師匠は私の目を見て意識を確認したり、脈をとったり、呼吸を確認。
「どうやら麻痺しているだけのようだな。しばらくすれば治るだろう」
リュウ師匠は仰向けに倒れ芋虫みたいになっている私に対してそう言うと、手頃な倒木に腰掛けて目を閉じたのだった。
地面に倒れ、頭と体の節々がズキズキするような鈍痛とともにピクピク痙攣し続けるという地獄のような時間を味わった私だったが、30分ほどで症状も落ち着きようやく動けるようになった。
試しに自分を鑑定すると、カフェインの数値は6になっていた。糖尿病の血糖値かよ。
「なるほど、だいたいわかった。おそらくカフェインの値が体力値以上になるまで摂取してはいけない、ということだろう。それに過剰摂取のペナルティ、麻痺状態からの回復時間は半刻ほどのようだ。わかってよかったな」
座っていた倒木から立ち上がったリュウ師匠は私を見下ろし、悪い笑顔でそう言い放つのだった。
「えっと、カフェインは緑茶やコーヒーなどの植物に含まれるもので、眠気覚ましの覚醒効果があります。逆に飲み過ぎると眠れなくなったり、ひどい場合には依存症になったり、禁断症状が出て寝込む場合もあるのですが…」
異世界にもお茶くらいは流石にあるだろうが、緑茶やコーヒーがあるとは限らない。似たような植物があればいいけど。
「ああ、それならクロッサム・ベリーがそれかもしれん。庶民の間でもたまに眠気覚ましに食べるし、偏食貴族がバカみたいに食べて頭痛で寝込んだという話も聞いたことがある。この辺りにも果物の木が生えてるはずだから探しに行くぞ。足元に注意して着いてこい」
リュウさんは降ろしていた大きめなリュックサックと大きな両手剣を背負い直すと、お目当ての植物を探すため歩きだした。
「お前、靴履いてないのか。ちょっと待ってろ」
靴下だけの状態だった私を見かねたリュウさんが、ターバンの上部な布と紐で簡易的な靴を作ってくれた。
「よし、これでだいぶんマシだろ」
「すみません師匠…」
あとでちゃんと恩返ししないとだ。
クロッサム・ベリーを探ししばらく歩いていると、グレーウルフなる2メートルくらいの狼モンスターが出現した。それでもリュウさんは危なげなく両手剣で一閃、真っ二つにグレーウルフを切り捨てたのだった。
頭から真っ二つになった狼の死体を試しに鑑定してみると、どうやら雑魚モンスターらしい表記がなされていた。しかしナイフ一本もたない私では、この雑魚モンスターにすら勝てなかっただろう。というか素手で狼に勝てる人間など、大の男でもそうはいない。
それからさらに歩き、リュウ師匠は目的の果物の木を見つけた。
リュウ師匠は両手剣で手際よく手頃な枝を果物ごと切り落としてキャッチ。「食ってみろ」と私にクロワッサンの形をしたベリーを一房渡してくれた。
食べる前に一応鑑定してみると、
【クロッサム・ベリー:カフェインを含有する果物。食用可能、そこそこ美味しい】
だそうだ。
「あ、リュウ師匠、この果物、カフェイン含んでいるみたいです!」
試しにベリーを一粒ちぎって口に放り込む私。くちに広がる爽やかな酸味が口に広がっていく。カフェイン独特の血流が早まり、頭がゆっくりと覚醒する感じが心地いい。キまる~!
と油断していたら、若干引き気味のリュウ師匠が目に入った。違いましてよ私はお嬢様デスワ。オホホのホ。
「で、どんな感じだ?」
「あ、そうでした。ちょっと待ってください!」
自分に鑑定! と念じると、
レベル:1
体力:7
魔力:3(+1)
俊敏さ:6
器用さ:7
カフェイン:1(許容限界7)
スキル:鑑定、アイテムボックス、カフェインテイマー
ステータス項目に「カフェイン」が追加されていた。それに魔力に+1、とついていた。
「リュウ師匠、カフェインってステータスに書いてあるんですが、なんでしょう…?」
「詳しくはわからん。だがスキル説明から推測するに、このカフェインを消費するか維持するかして、テイミングを行うのかもしれん」
「なるほど…」
「では、ものは試しだ。一回カフェインが7以上になるまで食ってみろ」
「え? 怖いので嫌です」
実際それで転生したわけだし。
「いいから食え。どんなスキルなのか確かめておかないと、いざという時に使えんだろう!」
「確かにそうですが! でも嫌なものは嫌です!」
「強情な弟子だ」
躊躇する私の口に、クロッサム・ベリーを突っ込むリュウ師匠。言うことは確かに間違ってないけど、心の準備というものが。
えーい、ままよ!
意を決して口にぶち込まれたクロッサム・ベリーを飲み込む私。カフェイン特有の脳が覚醒する感じは相変わらずだが、それとは別に不思議な力のようなものが湧いてきている感覚があった。
摂取量はコントロールしないといけないので、私は飲み込む都度自分を鑑定し、過剰摂取になりすぎないよう少しづつ飲み込むことを心がけた。口にぶち込まれたといっても、飲み込まない限り過剰摂取にはならないはず。ちなみに魔力の値がカフェイン1の状態だと+1だったものが、カフェイン7の状態だと+49と魔力が爆増していた。
「これ、今なら私魔法使いになれるかも!」
とビックマウスを叩いた瞬間、事は起こった。
カフェインの値が7に到達した後も調子に乗って果物を飲み込んでいたら、カフェイン7の数字が赤文字になってしまった。と同時に、手足が痺れ動けなくなった。助けてリュウ師匠!
「ふむ、これが許容限界に達したということか。なるほど、この状況からどのくらいで回復するのか確かめねばなるまい…」
いや、そんなこと言ってる場合じゃ! と思っていたら、リュウ師匠は私の口に自分の指を突っ込んで口内に残った果物をかき出し、皮袋に入った水を飲ませてくれた。リュウ師匠は私の目を見て意識を確認したり、脈をとったり、呼吸を確認。
「どうやら麻痺しているだけのようだな。しばらくすれば治るだろう」
リュウ師匠は仰向けに倒れ芋虫みたいになっている私に対してそう言うと、手頃な倒木に腰掛けて目を閉じたのだった。
地面に倒れ、頭と体の節々がズキズキするような鈍痛とともにピクピク痙攣し続けるという地獄のような時間を味わった私だったが、30分ほどで症状も落ち着きようやく動けるようになった。
試しに自分を鑑定すると、カフェインの数値は6になっていた。糖尿病の血糖値かよ。
「なるほど、だいたいわかった。おそらくカフェインの値が体力値以上になるまで摂取してはいけない、ということだろう。それに過剰摂取のペナルティ、麻痺状態からの回復時間は半刻ほどのようだ。わかってよかったな」
座っていた倒木から立ち上がったリュウ師匠は私を見下ろし、悪い笑顔でそう言い放つのだった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
前世で医学生だった私が転生したら殺される直前でした。絶対に生きてみんなで幸せになります 2
mica
ファンタジー
続編となりますので、前作をお手数ですがお読みください。
アーサーと再会し、王都バースで侯爵令嬢として生活を始めたシャーロット。幸せな婚約生活が始まるはずだったが、ドルミカ王国との外交問題は解決しておらず、悪化の一途をたどる。
ちょうど、科学が進み、戦い方も変わっていく時代、自分がそれに関わるには抵抗があるシャーロット、しかし時代は動いていく。
そして、ドルミカとの諍いには、実はシャーロットとギルバートの両親の時代から続く怨恨も影響していた。
そして、シャーロットとギルバートの母親アデリーナには実は秘密があった。
ローヌ王国だけでなく、ドルミカ王国、そしてスコール王国、周囲の国も巻き込み、逆に巻き込まれながら、シャーロットは自分の信じる道を進んでいくが…..
主人公の恋愛要素がちょっと少ないかもしれません。色んな人の恋愛模様が描かれます。
また、ギルバートの青春も描けたらと思っています。
転生先が森って神様そりゃないよ~チート使ってほのぼの生活目指します~
紫紺
ファンタジー
前世社畜のOLは死後いきなり現れた神様に異世界に飛ばされる。ここでへこたれないのが社畜OL!森の中でも何のそのチートと知識で乗り越えます!
「っていうか、体小さくね?」
あらあら~頑張れ~
ちょっ!仕事してください!!
やるぶんはしっかりやってるわよ~
そういうことじゃないっ!!
「騒がしいなもう。って、誰だよっ」
そのチート幼女はのんびりライフをおくることはできるのか
無理じゃない?
無理だと思う。
無理でしょw
あーもう!締まらないなあ
この幼女のは無自覚に無双する!!
周りを巻き込み、困難も何のその!!かなりのお人よしで自覚なし!!ドタバタファンタジーをお楽しみくださいな♪
チート転生~チートって本当にあるものですね~
水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!!
そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。
亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
転生幼女の異世界冒険記〜自重?なにそれおいしいの?〜
MINAMI
ファンタジー
神の喧嘩に巻き込まれて死んでしまった
お詫びということで沢山の
チートをつけてもらってチートの塊になってしまう。
自重を知らない幼女は持ち前のハイスペックさで二度目の人生を謳歌する。
男女比崩壊世界で逆ハーレムを
クロウ
ファンタジー
いつからか女性が中々生まれなくなり、人口は徐々に減少する。
国は女児が生まれたら報告するようにと各地に知らせを出しているが、自身の配偶者にするためにと出生を報告しない事例も少なくない。
女性の誘拐、売買、監禁は厳しく取り締まられている。
地下に監禁されていた主人公を救ったのはフロムナード王国の最精鋭部隊と呼ばれる黒龍騎士団。
線の細い男、つまり細マッチョが好まれる世界で彼らのような日々身体を鍛えてムキムキな人はモテない。
しかし転生者たる主人公にはその好みには当てはまらないようで・・・・
更新再開。頑張って更新します。
異世界転生したら何でも出来る天才だった。
桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。
だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。
そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。
===========================
始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる