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うちの子は思春期ですか?
うちの子は思春期ですか? 2
しおりを挟む十月。
いよいよ文化祭が始まった。
文化祭初日は大学部、高等部それぞれで開催される。二日目は中央学院全体の生徒が参加でき、三日目は一般ゲストが来る日程となっている。
私たちのクラスは巨大テトリスや仮装した人間を使ったチェス、貸し切りミニプラネタリウムなどのアミューズメントコーナーになった。
初日で改善点もわかったし、明日は大学部の方に遊びに行って大ちゃんの活躍を見るのだ! 楽しみすぎて顔が緩む!
*
初日の疲れを癒すため、半身浴をしながらスマホで音楽を楽しむ。科学の進歩である。
ご機嫌で一緒に歌っていると、音楽が鳴り止み着信音に切り替わった。画面を確認すると、なっちゃんからの電話である。
「──はぁい。もしもし」
『みほちゃん! お疲れさまっ』
うん。今日もかわいい。安定の癒しだ。
忠犬なっちゃんは、いつでも連絡がとれるようになったからといって頻繁に連絡をしてくるようにはならなかった。意外にも「待て」が出来る子のようで、絶妙に私の負担にならない程度の頻度で連絡をしてくる。
できた子だよ、ほんと。
今日は電話の日らしく、お互いに日常のことを話した。
『なんだか今日は声が響いてるね。どこにいるの? かけ直す?』
「あー、今、お風呂入ってるの」
『お風呂!?』
なっちゃんの声が少し裏返った。ふーん。声だけでも動揺した様子が手に取るようにわかる。きっと、顔を赤くして恥ずかしがっているのだろうと思うと、からかってみたくなった。
「──うん。見たい?」
『見……ッ』
スマホのカメラをONにすると、思った通り。画面になっちゃんの赤い顔が映った。カメラに向かってニコリと笑みを向け、カメラをゆっくりと下にズラしていく。
『み……、えない』
そりゃあ、お風呂の蓋を置いてますんで。
胸の前に風呂蓋を置き、湯気が逃げないようにしているのだ。
「見たかった?」
スマホの画面を元に戻すと、なっちゃんは顔を赤くしたままムッとした顔をしていた。
ん~かわいいっっ!
「残念だったね。また今度ね」
『え!? また今度ってな──』
遮るように途中で通話を切り、スマホを置いてニンマリしてしまう。
なっちゃんをからかうのは楽しい。初々しい反応がたまらなくかわいいのだ。
またスマホが鳴ったので、待てが出来なかったなっちゃんにメッと言おうと決めてスマホに耳を寄せる。
「──こら。待て、よ?」
『……待て?』
電話から聞こえてきたのは、低く甘やかな声だった。
「ひゃ!? か神田さん!!??」
『……ちゃんと確認してから電話に出ようね?』
クスクスと笑う声が耳をくすぐる。やばい。右耳が妊娠してしまう。スマホから耳を離し、スピーカーにする。近いと危険だ。耳元で話されているような気分になってくる。
「すみません。あの、どうかしました?」
『あぁ。明日の中央祭のことでね。大地のところに遊びに行きたいでしょ? 大地の店番の時間をお知らせしようと思って』
「あぁありがとうございます! そうですよね。すっかりチェックするのを忘れていました」
神田大明神様は本日も先見の明があるようだ。ありがたや~~~
『──音が反響しているようだけど、今お風呂入ってた?』
どうやら神田さんクラスになると電話の音だけで、相手がどこにいるのかわかるらしい。
ははーん。さっきのなっちゃんで気を良くした私の悪戯心が暴れるぜ!
「……確かめてみますか?」
私に出来る限りのしっとり声を出し、神田さんの反応を待った。
ふっふっふ。どうだ。見たいか? 欲望に忠実な十代(偏見)だ、見たいんじゃないか? 素直に見せてください海帆様と降伏するんだ! 見せないけどね!
ふふん、と余裕の笑みを浮かべていると急にスマホの画面が切り替わり、眼鏡なしバージョンのベットに寝転がる神田さんが映し出された。いつもと違って髪もゆるく崩され、表情もどこかやわらかい。服装も部屋着なのかラフでありつつ、いつもは見えない鎖骨が見えていていかんともしがたい。
『──あぁ。ほんとにお風呂だね?』
「……~~~!!」
風呂蓋で見えるわけがないのに、見られているような気がして急いで胸を隠した。
『隠れちゃうの?』
「か、隠れますよ! なんで急にカメラONにするんですか!」
『確かめさせてくれるんじゃないの?』
クスクス笑う表情がいつもより柔らかく、かわいい。
「ク、クイズだったんです!!」
と、苦しい言い訳を残し、電話を切った。
ドキドキさせるつもりが、ドキドキしてしまったじゃないか……。
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