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うちの子は反抗期ですか?
【閑話】うちの子はお友達と仲良くやっていますか?
しおりを挟む次の絵葉書からは、なっちゃんからもメッセージが記入されて返ってきた。頻度は二週間に一、二回ほど返事が届く。絵葉書は最初、花の絵だったが最近は風景の写真になっている。とても綺麗なので部屋の壁に飾っている。
私のいない夏。なっちゃんは、ちゃんとお友達と遊んでいるだろうか……。
毎年毎年夏はべったり二人で過ごしているが、あれはなっちゃんがまだ一年生の頃だった。
なっちゃんと二人で近所のヤギ(おじいちゃんの家の近所にヤギがいるんですよ。田舎でしょう?)を、懐柔しようとヤギを観察している時に、急に現れた同い年ぐらいの子どもたちが「魔女!! なつきを独り占めするな!」と言ってきたことがあった。急に大きい声を出したらヤギが驚くでしょうが!
子どもたちの様子から察するに、なっちゃんの友達かなと隣をチラッと見ると。いつも穏やかな微笑みを崩さない天使が無表情で子どもたちを見ていた。え、なっちゃんはそんなお顔も出来るの? 照れてるの?
「え? なっちゃん? 知ってる子なんだよね? お友達が遊ぼうって誘いに来たよ」
身を屈めて返事を促すように、なっちゃんの顔を覗き込むと
なっちゃんの小さな手が私の手をソッと掴んだ。ついでに私の心も鷲掴みにされた。ぐわし、だ。
「……みほちゃんと遊ぶ」
「えー」
「魔女め! なつきを離せ!」
「えー」
なっちゃんに捕まれているのは私なんだけど……
なっちゃんモテモテだな……
捕まれた手を離そうとすると、逆になっちゃんはしがみついて来た。小さな体で、私に、話すなと……くっ、可愛すぎる。しかし、なっちゃんの人間関係を私が独占するわけにもいかないのは事実だ。私は夏にしか田舎に遊びに来ないが、なっちゃんはここで生活をしている人間なのだ。ここでの人間関係を疎かにして困るのは、なっちゃんなのだ。
「……じゃあ、みんなで一緒にあそぼっか?」
「「「「いやだ!!」」」」
なんでそこだけハモるんだ。
実は仲良しだろう。
「魔女なんかどっか行け!!」
「そうだ! 帰れ!」
「なつきを離せ!」
なっちゃんを魔女から守ると闘志を燃やしている勇者三人は、キャンキャンと吠えまくっている。しかし、重装備で黒づくめの私が怖いのか近づいてはこない。
そもそも、こんにも幼気な少女のどこが魔女なのか。この黒ずくめファッションは意味があるんだ。ちゃんと。黒は紫外線を通しにくいんだぞ。暑いけど意味があるんだぞ。もしかして、この服装だからヤギにも警戒されているのかもしれない。
生意気なガキんちょに怒る気にもなれず、まあまあと大人の余裕を見せつけ仲裁を続けようとしたその時、ヤギ広場(勝手に命名)に、なっちゃんの可憐な声が響いた。
「──みほちゃんは魔女じゃない。妖精さんなんだ!!」
「「「「……え?」」」」
いや、え? なっちゃん? 妖精は嬉しいんだけど、え? なんて言った? 妖精?
これにはガキんちょたちも、我関せずと昼寝を始めていたヤギさんもポカーンだ。
「みほちゃんは今、こんな変な恰好してるけど! 本当は妖精さんみたいにフワフワでかわいいんだからな!!」
おい。今、変な恰好って言ったか。
妖精さんって言っとけば相殺できると思ったか! できるわ! ありがとう! 照れる!
「なっちゃん……もういいから……」
「今はこんなトンボみたいなサングラスかけて見えないけど、目だって茶色くてキラキラで綺麗なんだから!!」
「ほんと勘弁して」
「髪の毛だって、今はおばあちゃんみたいな帽子の中に仕舞ってるけど、本当はサラサラでフワフワでツヤツ……!」
「もういいから!」
なっちゃんのお口は封印だ!静まれ!
「ごめんね、みんな。私は魔女でも妖精でもないから大丈夫よ。そうだ。明日の夕方のお祭り、みんなで行こっか。ね。そうしよう。五時に、なっちゃんの家に集合ね。お家の人にちゃんと伝えてね」
モゴモゴと、まだ何か言いたそうななっちゃんを引っ張り帰宅の途についた。
*
お祭り当日。
私もおばあちゃんに仕立ててもらった浴衣を着ていそいそとなっちゃんの家に向かうと、昨日とは打って変わって従順な子どもたちが待っていた。
「お姉ちゃんもお祭りに行くの?」
「なつきの友達?」
「お姉さんどこから来たの?」
キラキラと潤む瞳が集まって、大歓迎だ。
お、なんだ。こうやって見るとかわいいちびっ子たちだな。うん。
「みほちゃーん!! 浴衣かわいいねっ」
子犬たちの大歓迎に癒されていたら、今度はなっちゃんが飛びついてきた。今日のなっちゃんは甚平を着ていて、かわいいオヒザがコンニチワしてた。
ンンンッ! かわいいのはお前だよ!
「なっちゃんは浴衣じゃないんだね。甚平もかわいいね」
ツルツルのお膝もかわいいね。やだ、変態っ☆
来年はなっちゃんとおそろいの浴衣もいいな~~と浮かれるのもしょうがない。
(※まだ夏樹が女の子だと思ってる時期です)
「みほ……!? お前、魔女か!」
「まじょ……」
「あの変な格好はどうしたんだよ!」
ざわっ……!と、私の正体に気付いた子犬たちは、小生意気ながきんちょに戻ってしまった。
「あの格好は太陽から肌を守ってるの。夕方に着てもしょうがないでしょ」
「みほちゃんのこと魔女って言うやつは帰れ!」
「なっちゃん。帰れ、はダメよ。君らも、もう魔女でもなんでもいいからお祭り行こ?」
まだヒソヒソ納得がいってない様子のがきんちょをお姉さんが! 先導した。そのお姉さんの手を引いて歩くのはなっちゃんだが!
なっちゃん。さすがにお祭りの場所くらい覚えてるわよ。
お祭りでは生意気ながきんちょも、もう魔女のことはいいのか大変仲良く楽しく過ごした。お祭り、楽しかったなぁ。
次の日からは、がきんちょとも仲良く……
「おい魔女! いつまでヤギなんて見てるんだ、それより裏山に基地を作ろうぜ!」
「みほ姉。見てるだけで暑苦しいから黒はやめたら? 白だったらヤギも仲間だと思って近づいてくるかも」
「せめて、そのサングラスやめたら? 早くヤギを攻略して裏山を支配下におかないと」
「みほちゃん。はい、ちゃんとお茶飲んで。あと、これ山崎のおばさん(ヤギの飼い主)から餌をもらってきたよ。これあげたら仲良くなれるよって言ってたよ」
仲良くやっていると思う。うん。
なっちゃんも楽しそうでよかった。健やかであれ!
______________________________
なっちゃんの友達3人衆は
・小岩 瑛太(こいわ えいた)
・平井 仁志(ひらい ひとし)
・亀戸 修斗(かめいど しゅうと)
忘れたらごめんな…
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