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始まりと終わり

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ソワソワして落ち着かず、何度も何度もステファンにまだかまだかと聞いてしまう。
ステファンはメイドに確認もせずに「まだですよ」なんて返事をする。

確認すらしないでニヤニヤと笑うなんて、この男も随分と表情が柔らかくなったものだ。

ムッとアビーの方を見ても、同じく笑ったまま「まだですよ」と答える。
まだ聞いていないのに。

それがなんだか恥ずかしく、落ち着こうと手元の書類に視線を戻すが内容が頭に入ってこない。

そうしている内にやっと知らせが入り、つい勢いよく立ち上がってしまった。
アビーに何か言われた気もするが、メイドが待ってましたとばかりに扉を開けたのでそのまま執務室を出た。

だんだんと息が弾んでいる気がする。

あの日、ミア嬢を見送ったエントランスを過ぎて

メイドたちが扉を開き待っていた。

ちょうど、馬車が入ってきたところだった。

思わず足が止まる。


これは、あの時と同じ光景だと思ったから。


ドクドクと体が揺れる。耳がおかしくなりそうだった。
急いで来てしまったから息が弾んでいるのか、不安で息が浅くなっているのか。

あの時の同じように馬車の御者がうやうやしく扉を開けると

中から長身の男性が降りてきた。



旦那様



声にならない息が待ち人を呼んだ。
それが耳に届いたのか、あの蒼の瞳が私を見つけゆるりと優しく解けた。

あの蒼い瞳に私を映し、私の元へと歩いてくる。

自然と私の足も旦那様の元へと進む。

一歩、一歩と近付いていく。


「クリスティーナ、戻ったよ」

「おかえりなさい。旦那様」








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感想 3

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みんなの感想(3件)

umiiro
2024.07.11 umiiro
ネタバレ含む
解除
こやま
2024.06.28 こやま
ネタバレ含む
解除
こやま
2024.06.28 こやま

以前に読んだような気がします。でも内容がちがうような。

コーヒー牛乳
2024.06.28 コーヒー牛乳

コメントありがとうございます!
前回、全年齢版を公開してたのですがR18にするにあたって全年齢版の方は削除しました。
こちらはR18+加筆修正版で設定も少しだけ変わっています。また読んでもらえて嬉しいです。ありがとうございます。

解除

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