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哀れな人魚姫の恋の結末
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ミア視点。微グロ?注意
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もう何度も何度も同じことを聞かれている。
何度も何度も同じことを話したのに。
嘘をつくなと何度も言われ
答えは、こうやって女を痛めつけるのが好きなサド野郎が話す筋書き通りじゃないと許されない。
私はただ……ジョシィが欲しかったの……
そのままの私を認めてくれるジョシィが……
もう叫び過ぎて声が出ない。水がほしい。
眠ると水をかけて起こされるし、いつの間にか爪も無くなって手の感覚も足の感覚もない。
眠りたい。パンが食べたい。
ジョシィと一緒に食べた食事は温かかった。
味はなんでも美味しかった。でも、今思い出すのは温かかったこと。
「哀れなローレライ。調子はどうだ?」
あの時、偉そうにソファーに座っていた男の声がした。声がした方に目を動かすと、ジョシィよりも淡い金の髪をした貴族らしい服を纏った男が立っていた。
声を出そうにも、空気が掠れるばかりで声が出ない。
乾いてしまった唇を濡らそうとするけど、舌が動かない。
これじゃあ歌えないじゃない。
ジョシィが大好きだった、私の歌。
「おや、もう歌えないのか。残念だ。もうそろそろ眠ってしまいそうかな。では、ローレライが眠りにつくまでに"お話し"を聞かせてあげよう。
人間の男に恋をしてしまった、哀れな人魚姫の恋の結末は……まあ、どうなるのかローレライはもう知っているね。その人魚に人間の脚という魔法をあげた魔法使いの正体を知っているか?
その魔法使いはね、なんてことない。貴族のご落胤だ。娼婦の子として産まれ、母親から聞く父親に救いを描いていたんだろうな。いつか自分を迎えに来ると。まあ、そんな日は来ず、やっと見ることが出来た父親には自分と同じ年頃の……なのに自分とは全く違う息子がいた。父親に愛され、信頼し合う親子の姿を見ていたら壊したくなったそうだ。
そこで同じ貴族の落胤であるアデルの容姿に目をつけ、アデルを父親の元に送り込み薬を飲ませ続け廃人へ。その息子にはお前を送り込むことにしたそうだ。
──だが、こんなありきたりな話。つまらないだろう?」
男は腕を組み、なんてことない風に話し続ける。
「クピドは西の国で産まれ育ったそうだ。ちょうどよかったよ。まだもう少し話を肉付けする必要はあるけれど、西の国に仕掛ける良い”きっかけ”が出来た。王女を押し付けて来た隣国にも早速ご協力頂いて、力を削いでおかないと。──今回の件はアデル、ルートン領主、それにローレライも仲間だから。ちゃんと覚えておいてね」
ちがう、と声にならない空気が抜けていく
「……もうローレライは歌えなさそうだから言うけれど、アドラー公爵家はルートンでの事業で横領しているんじゃないかって疑っていたんだ。
現当主が倒れても怪しい資金の流れは変わらないから、黒幕はジョエルかって目星をつけていたんだけれど。まさかアデルとルートン領主がグルだったとはね。ジョエルには悪いことをしたよ」
ふーっと細く長い溜息が聞こえた。
「──ジョエルが黒幕だったら、まとめて掃除してティーナにはクリフをあげたかったんだけど……男女ってわからないもんだね。ティーナはジョエルがいいんだって。二人の幼馴染としては、クリフの方がお似合いだと思うんだけど。
お前もそう思うよねえ?……あぁ、眠ったのか。
ゆっくりとおやすみ。ローレライ」
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もう何度も何度も同じことを聞かれている。
何度も何度も同じことを話したのに。
嘘をつくなと何度も言われ
答えは、こうやって女を痛めつけるのが好きなサド野郎が話す筋書き通りじゃないと許されない。
私はただ……ジョシィが欲しかったの……
そのままの私を認めてくれるジョシィが……
もう叫び過ぎて声が出ない。水がほしい。
眠ると水をかけて起こされるし、いつの間にか爪も無くなって手の感覚も足の感覚もない。
眠りたい。パンが食べたい。
ジョシィと一緒に食べた食事は温かかった。
味はなんでも美味しかった。でも、今思い出すのは温かかったこと。
「哀れなローレライ。調子はどうだ?」
あの時、偉そうにソファーに座っていた男の声がした。声がした方に目を動かすと、ジョシィよりも淡い金の髪をした貴族らしい服を纏った男が立っていた。
声を出そうにも、空気が掠れるばかりで声が出ない。
乾いてしまった唇を濡らそうとするけど、舌が動かない。
これじゃあ歌えないじゃない。
ジョシィが大好きだった、私の歌。
「おや、もう歌えないのか。残念だ。もうそろそろ眠ってしまいそうかな。では、ローレライが眠りにつくまでに"お話し"を聞かせてあげよう。
人間の男に恋をしてしまった、哀れな人魚姫の恋の結末は……まあ、どうなるのかローレライはもう知っているね。その人魚に人間の脚という魔法をあげた魔法使いの正体を知っているか?
その魔法使いはね、なんてことない。貴族のご落胤だ。娼婦の子として産まれ、母親から聞く父親に救いを描いていたんだろうな。いつか自分を迎えに来ると。まあ、そんな日は来ず、やっと見ることが出来た父親には自分と同じ年頃の……なのに自分とは全く違う息子がいた。父親に愛され、信頼し合う親子の姿を見ていたら壊したくなったそうだ。
そこで同じ貴族の落胤であるアデルの容姿に目をつけ、アデルを父親の元に送り込み薬を飲ませ続け廃人へ。その息子にはお前を送り込むことにしたそうだ。
──だが、こんなありきたりな話。つまらないだろう?」
男は腕を組み、なんてことない風に話し続ける。
「クピドは西の国で産まれ育ったそうだ。ちょうどよかったよ。まだもう少し話を肉付けする必要はあるけれど、西の国に仕掛ける良い”きっかけ”が出来た。王女を押し付けて来た隣国にも早速ご協力頂いて、力を削いでおかないと。──今回の件はアデル、ルートン領主、それにローレライも仲間だから。ちゃんと覚えておいてね」
ちがう、と声にならない空気が抜けていく
「……もうローレライは歌えなさそうだから言うけれど、アドラー公爵家はルートンでの事業で横領しているんじゃないかって疑っていたんだ。
現当主が倒れても怪しい資金の流れは変わらないから、黒幕はジョエルかって目星をつけていたんだけれど。まさかアデルとルートン領主がグルだったとはね。ジョエルには悪いことをしたよ」
ふーっと細く長い溜息が聞こえた。
「──ジョエルが黒幕だったら、まとめて掃除してティーナにはクリフをあげたかったんだけど……男女ってわからないもんだね。ティーナはジョエルがいいんだって。二人の幼馴染としては、クリフの方がお似合いだと思うんだけど。
お前もそう思うよねえ?……あぁ、眠ったのか。
ゆっくりとおやすみ。ローレライ」
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