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出会い編
その手の中 1 ※
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「待っていたって……」
「お前がいつか言っていただろう。男は無理だとな」
確かに遠い昔にそんなことを言ったような気もするが……。
「私はお前を好ましく思っているずっと。抱きたいが、無理強いは趣味じゃない。こうなるのは、嫌か?」
「……そんなの」
嫌かと聞く癖に、がっちりと下半身をホールドされて逃げ場がない。
迷うように差し出した手首を舐められて、カイルは、んっと呻いた。
逐一触り方が、いやらしい。
いっそこのまま何も考えられないように、なし崩しに逃げ場をなくしてほしい。無理やり奪ってほしい。
だけど、真正面から聞かれたら、それに応えないのは卑怯だとカイルもわかっていた。
カイルは今まで、男相手なんて無理だと思っていたけれど。
時々アルフの手で髪をぐしゃぐしゃとかき乱されて揶揄われるのは心地よかった。
ああいうふうに髪だけじゃなくて色んな所を触られたら気持ちいいだろうと思ってきた、ずっと。
おずおずと襟元を掴んでアルフレートに体重を預ける。
カイルから拙いキスを仕掛けると、アルフレートの舌がカイルのそれを誘う。
互いに目を閉じずに角度をかえて息を貪って、カイルの口の端から漏れた唾液をアルフレートがぬぐう。
「……俺は」
「うん」
「男は、嫌だけど。アルフレートが好きだよ」
「それは知っている」
知っているのかよ、と偉そうなその返しにカイルはつい笑ってしまう。
「綺麗なアイスブルーの目も好きだし、緋色の髪も触りたいし」
「容姿だけか?」
「……仕事ぶりも尊敬しておりますよ。副団長」
「生意気な」
アルフレートがどこか拗ねたようにいうのでカイルは、くつくつと笑ってアルフレートの鼻の頭にキスを落とした。
すっかり脱がされて裸になったカイルの上半身を確かめるようにアルフレートの指がなぞり、尾骨のあたりから背骨をひとつひとつなぞるように指がひきしまった背中をゆっくりと動いて首の後ろにたどり着く。
そのまま引き寄せられてキスをして、口づける間にカイルの前にアルフレートの指が忍び込んだ。
急激に下半身に熱が集まるのを自覚しつつ、カイルは喘いだ。理性を失ってしまう前に、言わないといけない。
きちんと。
「ん……っ、ア、アルフ」
「うん?」
「あんたが好きだよ。すごい、好きだ……だから、抱いてほしい」
アルフレートはカイルをそっと毛布に押し倒した。
熱のこもった低い声を耳元に落とす。
「私もだ。カイル。愛しているよ」
「うん……俺も」
アルフレートのジャケットに手が、かかる。
鍛えた上半身が橙の灯りにぼんやりと照らされて、カイルはきまずさに視線をそらした。剣技の稽古のあとに何度も見たことがあるのに、恥ずかしいのはどうしてだろうか。
カイルはアルフレートの裸体から視線を外しながら「だけどさ」と小声で尋ねた。
「どうした?」
「アルフって……その、上手なのか?」
真剣な口調で聞かれてアルフレートがぽかんとした顔になる。
「この期に及んで、なんなんだ」
カイルは横を向いて言い訳した。
「……俺、たぶん、こういうの。上手じゃない気がする……」
自慢じゃないが、過去の少ない数の恋人にはすべて振られてきたのだ。
カイルはそれなりに楽しかったが、こういう色事が恋人にとってどうだったのか、は全く自信がない。
……なので、カイルはもごもごと、続けた。
「その……うまく出来なかったら、ごめ……って、何っ……あっ!!んっ!」
ぎゅ、と前を握り込まれてカイルは嬌声をあげた。
アルフレートは真顔でカイルを見下ろして、感情を押し殺した声で言った。
「煽るな、馬鹿。――たぶん悪くないぞ。お前は……今日はなすがままになっていろ。全部一から教えてやる」
「お前がいつか言っていただろう。男は無理だとな」
確かに遠い昔にそんなことを言ったような気もするが……。
「私はお前を好ましく思っているずっと。抱きたいが、無理強いは趣味じゃない。こうなるのは、嫌か?」
「……そんなの」
嫌かと聞く癖に、がっちりと下半身をホールドされて逃げ場がない。
迷うように差し出した手首を舐められて、カイルは、んっと呻いた。
逐一触り方が、いやらしい。
いっそこのまま何も考えられないように、なし崩しに逃げ場をなくしてほしい。無理やり奪ってほしい。
だけど、真正面から聞かれたら、それに応えないのは卑怯だとカイルもわかっていた。
カイルは今まで、男相手なんて無理だと思っていたけれど。
時々アルフの手で髪をぐしゃぐしゃとかき乱されて揶揄われるのは心地よかった。
ああいうふうに髪だけじゃなくて色んな所を触られたら気持ちいいだろうと思ってきた、ずっと。
おずおずと襟元を掴んでアルフレートに体重を預ける。
カイルから拙いキスを仕掛けると、アルフレートの舌がカイルのそれを誘う。
互いに目を閉じずに角度をかえて息を貪って、カイルの口の端から漏れた唾液をアルフレートがぬぐう。
「……俺は」
「うん」
「男は、嫌だけど。アルフレートが好きだよ」
「それは知っている」
知っているのかよ、と偉そうなその返しにカイルはつい笑ってしまう。
「綺麗なアイスブルーの目も好きだし、緋色の髪も触りたいし」
「容姿だけか?」
「……仕事ぶりも尊敬しておりますよ。副団長」
「生意気な」
アルフレートがどこか拗ねたようにいうのでカイルは、くつくつと笑ってアルフレートの鼻の頭にキスを落とした。
すっかり脱がされて裸になったカイルの上半身を確かめるようにアルフレートの指がなぞり、尾骨のあたりから背骨をひとつひとつなぞるように指がひきしまった背中をゆっくりと動いて首の後ろにたどり着く。
そのまま引き寄せられてキスをして、口づける間にカイルの前にアルフレートの指が忍び込んだ。
急激に下半身に熱が集まるのを自覚しつつ、カイルは喘いだ。理性を失ってしまう前に、言わないといけない。
きちんと。
「ん……っ、ア、アルフ」
「うん?」
「あんたが好きだよ。すごい、好きだ……だから、抱いてほしい」
アルフレートはカイルをそっと毛布に押し倒した。
熱のこもった低い声を耳元に落とす。
「私もだ。カイル。愛しているよ」
「うん……俺も」
アルフレートのジャケットに手が、かかる。
鍛えた上半身が橙の灯りにぼんやりと照らされて、カイルはきまずさに視線をそらした。剣技の稽古のあとに何度も見たことがあるのに、恥ずかしいのはどうしてだろうか。
カイルはアルフレートの裸体から視線を外しながら「だけどさ」と小声で尋ねた。
「どうした?」
「アルフって……その、上手なのか?」
真剣な口調で聞かれてアルフレートがぽかんとした顔になる。
「この期に及んで、なんなんだ」
カイルは横を向いて言い訳した。
「……俺、たぶん、こういうの。上手じゃない気がする……」
自慢じゃないが、過去の少ない数の恋人にはすべて振られてきたのだ。
カイルはそれなりに楽しかったが、こういう色事が恋人にとってどうだったのか、は全く自信がない。
……なので、カイルはもごもごと、続けた。
「その……うまく出来なかったら、ごめ……って、何っ……あっ!!んっ!」
ぎゅ、と前を握り込まれてカイルは嬌声をあげた。
アルフレートは真顔でカイルを見下ろして、感情を押し殺した声で言った。
「煽るな、馬鹿。――たぶん悪くないぞ。お前は……今日はなすがままになっていろ。全部一から教えてやる」
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