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出会い編
南へ 5※
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「言っておくが、貴族社会でもそんなことは滅多にないからな。口にしたら多分王太子妃に殺されるぞ」
「満面の笑みでいうなよ!そんなこと!!」
押し殺した声で抗議すると、アルフレートはくっくっと笑い、それから目を細めてカイルのズボンをみた。
「お前には刺激が強かったか?」
「……っ」
「ーーずいぶん元気だが、そのまま出立するか」
「言い方がおっさんなんだよ……」
下半身にいやおうなく集まってしまった熱を認識してカイルは耳まで赤くなった。
別に美女二人の濡れ場を見たからだけではない、アルフレートが妙な触り方をしてくるから悪い。
「出来るわけないだろうっ!何とかしてくる!」
「もう時間がないぞ」
「じゃ、どうしろって……」
言うんだ、といいかけていると、アルフレートにくいと顎を持ち上げられた。
え、と思う間もなくそっと唇が重ねられる。
「口、あけろ」
命じられてカイルは反射的に口を開いてしまう。
舌が遊ぶようにカイルの口内に侵入して、喘ぐように上向くと背中を壁に押し付けられた。
逃げないようにだと気付いたのはアルフレートの手がカイルのベルトをなんなく外して、下着の中に入ろうとしてきたからだった。
「……んっ、アルフ」
「手伝ってやる。力を抜け」
揶揄う声に、嫌だとか言う前に傲慢な口調で命じられる……。
抵抗しようと思うけれど、脳裏に先日会った黒髪の令嬢の顔が浮かんで動きが止まる。
アルフレートが。
彼女のものになって団からいなくなるのなら。
この手はもうカイルに二度と触れなくなるだろう……。
アルフレートの指はいつだって、あたたかくて、心地いい。
だけど、もう、――髪も頬にも触れてくれなくなる。
指が揶揄うようにやわやわとカイルのものを握り込む。
おずおずとアルフレートの胸元を掴んで力を抜くと、アルフレートは「逃げないのか?」と少し意外そうに聞いた。
カイルは視線を逸らした。
声を振り絞る。
「……時間が、ないから」
「ああ」
「てつだ、って」
沈黙があった。
馬鹿な事を言っただろうかといたたまれなさに目を閉じると、アルフレートが再び、無言で口づけてきた。
揶揄うような動きではなく息ができないほどに深くて、強い。
「ーーっ!」
ぎゅ、とカイルの物をつよく握られて、肩が震えた。
カイル、と熱っぽく吐息が落とされ、カイルはアルフレートの肩に顎を乗せる。
緋色の綺麗な髪が視界に広がって――チカチカする。
知れず、気分が高揚する。
アルフレートの声が耳元でカイル、と優しく呼んでくれた。
「声は我慢できるか?」
「我慢、する」
「いい子だな」
アルフの長い指が、直にカイルのものに触れながら上下にしごく。
「―あ、は」
「カイル」
「あ、あう……そこ、強い、やだ……力ぬける」
「安心しろ、倒れないように支えてやる」
アルフレートは巧みだった。
熱い手に導かれて簡単に硬さを増す自身を長い指で緩急をつけて上下にしごかれ、おしつぶされる。
爪で、かすかに先端をひっかかれて、カイルの背中はびくりとはねた。
「――っ」
「……痛いか?」
「いたくないけど、なんか、へん……あっ」
自身で扱うよりもずっと早く高められていく。腹の奥から波がせりあがって来て、アルフレートの肩に顔をうずめながら呻く。
「くっ――あ」
ぐちゅぐちゅと音がするのをどこか遠くでカイルは聞いた。
アルフレートの手が、好きだ。
彼に触れられるのは気持ちいい。いつだって――。
いまも、自分の拙い自慰なんて比べ物にならないほどに気持ちいい。
カイルは荒く息をしながら、アルフレートの肩を押し退けようと掴んだ。
「どうした?嫌か」
「ちが、もう、イくから、いい。――も、出る」
「いい、出せ」
後は自分ですると言おうとしたのに、アルフレートが口づけてきて言葉を奪われる。
「ん――っ、んっ!」
布のようなもので射精をすべて受け止められ、くぐもった喘ぎはアルフレートに食いつかれる。カイルはその場で脱力し、膝から崩れ落ちた。
「はっ……」
「立てるか?」
「だい、じょうぶ」
立ち上がるとアルフレートが青い目でじっと様子を伺っているのがわかった。
しかし、その顔を直視できずに黙ってしまう。
熱が収まって冷静になるととんでもない事をさせてしまった、と青くなるしかない。
「ごめん」
「何を謝る?」
「いや、だってーーこれじゃアルフを」
ーー上司に性欲処理を手伝ってもらう部下がどこにいるんだ、とカイルは言いかけてあまりの内容に口ごもった。あんまりにあんまりすぎる!
上司は綺麗な顔であははと笑い、「おれは親切な上司だな」と笑った。
アルフレートは自らとカイルの着衣の乱れを素早くただす。
それから、なおも赤いままの顔でなされるがままのカイルの顎を上向けて、軽く音がするようなキスをした。
「もう大丈夫か?」
「ーーはい」
「行くぞ」
促されて頷き、彼に従う。
隊に戻るとアルフレートは王太子に呼ばれて何事もなかったかのように談笑をしはじめた。
カイルは、ぼおっとした思考をただすようにかぶりを振る。
気づいたテオドールに呼ばれた。
「カイルはこちらへ」
「……あ、はい」
「どうしました?」
「いいえ、何もありません、テオドール。王太子殿下を間近に拝見するのは初めてなので緊張して」
そうですか、と。
テオドールは微笑んで襟元が歪んでいますよ、と整えてくれる。
「気をつけるように」
「あ、はい――」
テオドールは仕方ない人たちですね、とため息をついてドラゴンに騎乗しカイルもそれに倣う。
一行は南の別荘地へと向かった。
「満面の笑みでいうなよ!そんなこと!!」
押し殺した声で抗議すると、アルフレートはくっくっと笑い、それから目を細めてカイルのズボンをみた。
「お前には刺激が強かったか?」
「……っ」
「ーーずいぶん元気だが、そのまま出立するか」
「言い方がおっさんなんだよ……」
下半身にいやおうなく集まってしまった熱を認識してカイルは耳まで赤くなった。
別に美女二人の濡れ場を見たからだけではない、アルフレートが妙な触り方をしてくるから悪い。
「出来るわけないだろうっ!何とかしてくる!」
「もう時間がないぞ」
「じゃ、どうしろって……」
言うんだ、といいかけていると、アルフレートにくいと顎を持ち上げられた。
え、と思う間もなくそっと唇が重ねられる。
「口、あけろ」
命じられてカイルは反射的に口を開いてしまう。
舌が遊ぶようにカイルの口内に侵入して、喘ぐように上向くと背中を壁に押し付けられた。
逃げないようにだと気付いたのはアルフレートの手がカイルのベルトをなんなく外して、下着の中に入ろうとしてきたからだった。
「……んっ、アルフ」
「手伝ってやる。力を抜け」
揶揄う声に、嫌だとか言う前に傲慢な口調で命じられる……。
抵抗しようと思うけれど、脳裏に先日会った黒髪の令嬢の顔が浮かんで動きが止まる。
アルフレートが。
彼女のものになって団からいなくなるのなら。
この手はもうカイルに二度と触れなくなるだろう……。
アルフレートの指はいつだって、あたたかくて、心地いい。
だけど、もう、――髪も頬にも触れてくれなくなる。
指が揶揄うようにやわやわとカイルのものを握り込む。
おずおずとアルフレートの胸元を掴んで力を抜くと、アルフレートは「逃げないのか?」と少し意外そうに聞いた。
カイルは視線を逸らした。
声を振り絞る。
「……時間が、ないから」
「ああ」
「てつだ、って」
沈黙があった。
馬鹿な事を言っただろうかといたたまれなさに目を閉じると、アルフレートが再び、無言で口づけてきた。
揶揄うような動きではなく息ができないほどに深くて、強い。
「ーーっ!」
ぎゅ、とカイルの物をつよく握られて、肩が震えた。
カイル、と熱っぽく吐息が落とされ、カイルはアルフレートの肩に顎を乗せる。
緋色の綺麗な髪が視界に広がって――チカチカする。
知れず、気分が高揚する。
アルフレートの声が耳元でカイル、と優しく呼んでくれた。
「声は我慢できるか?」
「我慢、する」
「いい子だな」
アルフの長い指が、直にカイルのものに触れながら上下にしごく。
「―あ、は」
「カイル」
「あ、あう……そこ、強い、やだ……力ぬける」
「安心しろ、倒れないように支えてやる」
アルフレートは巧みだった。
熱い手に導かれて簡単に硬さを増す自身を長い指で緩急をつけて上下にしごかれ、おしつぶされる。
爪で、かすかに先端をひっかかれて、カイルの背中はびくりとはねた。
「――っ」
「……痛いか?」
「いたくないけど、なんか、へん……あっ」
自身で扱うよりもずっと早く高められていく。腹の奥から波がせりあがって来て、アルフレートの肩に顔をうずめながら呻く。
「くっ――あ」
ぐちゅぐちゅと音がするのをどこか遠くでカイルは聞いた。
アルフレートの手が、好きだ。
彼に触れられるのは気持ちいい。いつだって――。
いまも、自分の拙い自慰なんて比べ物にならないほどに気持ちいい。
カイルは荒く息をしながら、アルフレートの肩を押し退けようと掴んだ。
「どうした?嫌か」
「ちが、もう、イくから、いい。――も、出る」
「いい、出せ」
後は自分ですると言おうとしたのに、アルフレートが口づけてきて言葉を奪われる。
「ん――っ、んっ!」
布のようなもので射精をすべて受け止められ、くぐもった喘ぎはアルフレートに食いつかれる。カイルはその場で脱力し、膝から崩れ落ちた。
「はっ……」
「立てるか?」
「だい、じょうぶ」
立ち上がるとアルフレートが青い目でじっと様子を伺っているのがわかった。
しかし、その顔を直視できずに黙ってしまう。
熱が収まって冷静になるととんでもない事をさせてしまった、と青くなるしかない。
「ごめん」
「何を謝る?」
「いや、だってーーこれじゃアルフを」
ーー上司に性欲処理を手伝ってもらう部下がどこにいるんだ、とカイルは言いかけてあまりの内容に口ごもった。あんまりにあんまりすぎる!
上司は綺麗な顔であははと笑い、「おれは親切な上司だな」と笑った。
アルフレートは自らとカイルの着衣の乱れを素早くただす。
それから、なおも赤いままの顔でなされるがままのカイルの顎を上向けて、軽く音がするようなキスをした。
「もう大丈夫か?」
「ーーはい」
「行くぞ」
促されて頷き、彼に従う。
隊に戻るとアルフレートは王太子に呼ばれて何事もなかったかのように談笑をしはじめた。
カイルは、ぼおっとした思考をただすようにかぶりを振る。
気づいたテオドールに呼ばれた。
「カイルはこちらへ」
「……あ、はい」
「どうしました?」
「いいえ、何もありません、テオドール。王太子殿下を間近に拝見するのは初めてなので緊張して」
そうですか、と。
テオドールは微笑んで襟元が歪んでいますよ、と整えてくれる。
「気をつけるように」
「あ、はい――」
テオドールは仕方ない人たちですね、とため息をついてドラゴンに騎乗しカイルもそれに倣う。
一行は南の別荘地へと向かった。
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