永遠というもの

風音

文字の大きさ
上 下
24 / 57

救出

しおりを挟む
「そろそろ君の身体を楽しませてもらおうか」
足元で蹲り咳込むクリスの鎖を引き、無理矢理立たせる。鎖に引きずられるように寝台まで歩かされ、アーサーに背中を突き飛ばされた。寝台の上に転がったクリスを見下ろすようにその上に跨がる。
ここにきてクリスがアーサーを拒むように、身体を捩らせ足をバタつかせる。
「嫌だ!離せ、やめろっ!」
急に反抗的になったクリスか気に食わないアーサーは、鎖を後に強く引いた。
「っぐっ!」
首輪が気管を締める。
「往生際が悪いなぁ。ここまできてそれはないでしょ。それともまだあいつに未練があるの?」
そう言うと仰向いたクリスの唇を塞ぐ。
「つっ!」
顔を離したアーサーの口端から血が流れる。
口内に入り込もうとしたアーサーの舌を噛んだのだ。
パンッと乾いた音がして、クリスの頬が叩かれた。
「随分ふざけた真似してくれるね。ここまで抵抗されたの初めてだよ」
流れる血を手の甲で拭うと、懐から小さな瓶を取り出す。透明な少し粘土のある液体が入っている。
似たような物に酷い記憶があるクリスが、怯えて息を呑む。
「全部飲んじゃうと壊れちゃうからね。ほんの少しだけだよ」
そう言って、中の液体を指先に取りクリスの口の中にそれを突っ込む。
甘みのあるものが一瞬舌に触れた。
指を引き出すと手にした鎖を緩める。
寝台の上に倒れ込んだクリスを観察するようにアーサーが見ている。
しばらくすると、身体に変化が起こり始めた。
妙に暑くなってきて息が上がり始めた。むずむずするような感覚が、胎内を這回っている。
いつの間にか腕の拘束は解かれ、身体のざわつきを鎮めるように、クリスは自分の腕を抱き締める。
アーサーの指が頬を撫でると、そこから小波のようにぞわりとしたものが広がる。
下肢に熱が集まり始め、膝を固く閉じてそれを忘れようとするクリスに囁く。
「触ったら気持ちいいよ」
熱に侵されていくクリスの身体が、それに従おうとするが、まだ残る冷静な部分がそれを抑える。
首を横に振ってさらに強く腕を抱き締める。
「本当に強情だよね。ここは触ってほしそうなのに」
そう言うと、既に起き上がり蜜を零す先端を爪先で引っ掻く。
「ぁぅっ!」
痺れるような刺激にクリスが跳ね、さらに蜜が溢れる。
後孔は、溢れた蜜で濡れ妖しくひくついて男を誘っている。
「どろどろで気持ち良さそうだね」
うっとりと呟いて、熱に戦慄くクリスの腰を抱え上げた。

その時、突然部屋の外に人の声がした。
なにやら言い争うような叫び声が聞こえる。
「なに、せっかくいいところなのに」
忌々しそうに呟いたとき、鍵を下ろしたはずの扉が強引に押し破られた。
ここにいるはずのない人の姿にアーサーが驚いた声を上げる。
「どうしてここに?」
その人は、一瞥で室内の様子を見て取ると、アーサーとの距離を一瞬で詰めアーサーをクリスから引き剥がす。
「クリス」
声をかけるが、熱に浮かされたクリスには届いていない。
「なにをした」
「んー、素直になれるお薬をちょっとね。
それより、どうしてここにいるのさ」
怒りを隠さないアディエイルの声に怯みながらも、飄々とした口調はそのままにアーサーが問う。
「あの女を返しに来た」
そう言って、着ていた外套をクリスにかける。
「なぜ貴様がクリスと一緒にいる」
「君はアリシアと一緒だったろう?そこにこの子が一人で歩いてたんだ。いらなさそうだったから拾ったんだよ」
乱れた衣服を整えながらアーサーが悪びれもせずに言う。
「元々君が邪魔しなかったらこうなってたんだし。いいところでまた邪魔されたけどさ」
この言葉に、最悪なところにはかろうじて間に合ったのだと知る。
「色々仕込まれてたのには驚いたけどね。なんでも知ってるのに、反応が初心なのもいいよね」
ピシリと空気が凍りつく。
「上の口はなかなか良かった。後ろはこれからだったんだよね」
アーサーの耳元で何かが風を切る音がした。
「……酷いな」
耳の下辺りから一筋の血が滴る。
「もう少し下を狙おうか?」
アディエイルの無機質な声に、顔色をなくしながらも肩を竦める。
「死んじゃったらどうするの」
「ふん」
「その子には、君に捨てられたと教えといたから。そしたらいい子になったよ」
なおも減らず口をたたき続けるアーサーを一瞥する。
「私が貴様をここで殺らないのは色々面倒だからだ。だがいつでもできる」
今度こそ黙り込んだアーサーを尻目に、クリスを外套に包んで抱き上げ、屋敷を後にした。

帰りの馬車の中、アディエイルの膝に抱かれたクリスが、譫言のようになにか呟きだした。
薬を含まされたまま、触られもせず放置されていた身体は限界だった。
「いかせて…くださ、い。お願いします……」
何度も懇願するクリスの様子に、アディエイルは眉を顰める。これは自分が教えたものではない。
だが薬に侵されたクリスには、目の前の相手が誰かなどわかっていない。アーサーに教えられた通りに口にしているだけだ。
苦々しく思いながらも、クリスの懇願を無視することもできず、クリスにかけた外套を外す。
クリスの口を掌で覆い、蜜を零して震える陰茎を咥えた。
クリスがあげる嬌声はアディエイルの掌で塞がれ、息苦しさとようやく与えられた快感に身悶えする。
やがて呆気なくクリスの腰が震え、アディエイルの口の中に放つと、がくりと力を失いそのまま深い眠りについた。
その寝顔は、ここ数日ですっかり窶れて見えた。
赤味のなくなった青白く冷たい頬に掌をあてて呟く。
「すまなかった。許してくれ」
アディエイルの詫びる言葉は、馬車の車輪の音にかけ消されていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

処理中です...