17 / 57
降星祭
しおりを挟む
秋も深まってきたこの時期、学園で話題になるのは降星祭だ。
毎年この時期に現れる流星群を見る祭、なのだが、未婚のものたちには違う意味も持つ。
街では市民たちが観星会なるものを催して、未婚の男女の出会いの場となっている。
貴族たちもまた同じように降星祭をあちこちで催して、将来の伴侶を求めるのだ。
特に貴族たちは、これから年明けまで様々な催しが行われるので、この祭りで伴侶の候補を見つけ、その後の様々な催しでその仲を深めていくことになる。見合いで結婚する貴族も多いが、恋愛結婚する貴族も多いのだ。
しかし、ここは男子のみがいる学園。
そこでこの日ばかりは、誰でもここの降星祭に参加することができることになっている。
誰もがこの祭りに気を取られ、話題と言えばこのこと、という感じになっている。
そんな学園中の話題から、なぜか一歩離れたような位置にいるのがこの三人だ。
アディエイルは言わずもがな、だが、クロウドもあまり興味がないようだ。
元々、降星祭に興味がなかったクリスは、純粋にその日の天気などを心配している。
この日ばかりは、この学園もさぞかし華やかになることだろう。
秋の収穫も終わり、いよいよ降星祭の日がやってきた。
この日ばかりは授業は免除され、あちこちが華やかに飾り付けられ、舞踏場は楽団が予行演習を行っている。
本番は陽が落ちてから。
この時期は日が傾くと、あっという間に暗くなる。
暗くなり始めると、正門前の広場は、あちこちから集まった馬車でごった返しはじめた。
着飾った紳士淑女が次々と正門をくぐり、普段は入ることのできない学園に感嘆し、時には油断なく辺りを見回しそれとなく見定めを行っているようだ。
そんな人々の様子を二階の踊り場から眺めているのは、クリスとアディエイル、クロウドの三人だった。
「そういえば、お兄さんの結婚式の時も、たくさんのご令嬢に囲まれていたよね」
と、隣のクロウドを見上げてクリスが言う。
「見てたのか」
「うん。カイルさんと、人気者だねー、って話してたんだ」
そう言うと、なぜかばつの悪そうな顔になる。
「今回はアディエイルが一番人気じゃないか?」
クロウドがニヤッと笑って言うと、アディエイルが嫌そうな顔になる。
独身の王族なのだから、人気の順位で行けば確実に上位だろう。
「それにしても、次々来るよねー」
と感心したようにクリスが言う。
すると、階下から上を見上げた女性たちが、クリス達三人を見つけこちらに向かってくるのが見えた。
クロウドの家の結婚式で肉食獣のような淑女たちに囲まれたことが、まだ恐怖として残るクリスが思わず後ずさりする。
「どうした?」
「う、ちょっと嫌なこと思い出した」
すると、アディエイルがクリスの腕を取り、奥へと進む。
「どこ行くんだよ」
クロウドが慌てて追いかける。
二階の外回廊に出ようと、扉に手をかけたところで、近くから女性の声がした。
「まあ、アディエイル様。ご機嫌よう」
そう言って、亜麻色の髪の綺麗な女性がアディエイルに膝を折って挨拶する。
「・・・アリシア嬢」
差し出された手の甲に唇を落とすアディエイル。
「殿下、お時間少々よろしくて?」
断られるとは思っていない口調で、アリシアが首を傾げる。
彼女の視界には、クリスやクロウドは映っていないらしい。
まるで周りを気にしていない。
「アディエイル、俺たちはいいから」
クロウドがアディエイルに声をかけると、アリシアが手を差し出す。
一瞬クリスを見るが、差し出された手を取って、向こうへ歩き出した。
ぽかんとそれを見送っていたクリスを、クロウドが促す。
「クリス、向こうが静かだぞ。行こう」
「あ、うん。そうだね」
我に返ったクリスは、アディエイルが歩いていく後ろ姿をちらりと振り返ると、クロウドについて行った。
毎年この時期に現れる流星群を見る祭、なのだが、未婚のものたちには違う意味も持つ。
街では市民たちが観星会なるものを催して、未婚の男女の出会いの場となっている。
貴族たちもまた同じように降星祭をあちこちで催して、将来の伴侶を求めるのだ。
特に貴族たちは、これから年明けまで様々な催しが行われるので、この祭りで伴侶の候補を見つけ、その後の様々な催しでその仲を深めていくことになる。見合いで結婚する貴族も多いが、恋愛結婚する貴族も多いのだ。
しかし、ここは男子のみがいる学園。
そこでこの日ばかりは、誰でもここの降星祭に参加することができることになっている。
誰もがこの祭りに気を取られ、話題と言えばこのこと、という感じになっている。
そんな学園中の話題から、なぜか一歩離れたような位置にいるのがこの三人だ。
アディエイルは言わずもがな、だが、クロウドもあまり興味がないようだ。
元々、降星祭に興味がなかったクリスは、純粋にその日の天気などを心配している。
この日ばかりは、この学園もさぞかし華やかになることだろう。
秋の収穫も終わり、いよいよ降星祭の日がやってきた。
この日ばかりは授業は免除され、あちこちが華やかに飾り付けられ、舞踏場は楽団が予行演習を行っている。
本番は陽が落ちてから。
この時期は日が傾くと、あっという間に暗くなる。
暗くなり始めると、正門前の広場は、あちこちから集まった馬車でごった返しはじめた。
着飾った紳士淑女が次々と正門をくぐり、普段は入ることのできない学園に感嘆し、時には油断なく辺りを見回しそれとなく見定めを行っているようだ。
そんな人々の様子を二階の踊り場から眺めているのは、クリスとアディエイル、クロウドの三人だった。
「そういえば、お兄さんの結婚式の時も、たくさんのご令嬢に囲まれていたよね」
と、隣のクロウドを見上げてクリスが言う。
「見てたのか」
「うん。カイルさんと、人気者だねー、って話してたんだ」
そう言うと、なぜかばつの悪そうな顔になる。
「今回はアディエイルが一番人気じゃないか?」
クロウドがニヤッと笑って言うと、アディエイルが嫌そうな顔になる。
独身の王族なのだから、人気の順位で行けば確実に上位だろう。
「それにしても、次々来るよねー」
と感心したようにクリスが言う。
すると、階下から上を見上げた女性たちが、クリス達三人を見つけこちらに向かってくるのが見えた。
クロウドの家の結婚式で肉食獣のような淑女たちに囲まれたことが、まだ恐怖として残るクリスが思わず後ずさりする。
「どうした?」
「う、ちょっと嫌なこと思い出した」
すると、アディエイルがクリスの腕を取り、奥へと進む。
「どこ行くんだよ」
クロウドが慌てて追いかける。
二階の外回廊に出ようと、扉に手をかけたところで、近くから女性の声がした。
「まあ、アディエイル様。ご機嫌よう」
そう言って、亜麻色の髪の綺麗な女性がアディエイルに膝を折って挨拶する。
「・・・アリシア嬢」
差し出された手の甲に唇を落とすアディエイル。
「殿下、お時間少々よろしくて?」
断られるとは思っていない口調で、アリシアが首を傾げる。
彼女の視界には、クリスやクロウドは映っていないらしい。
まるで周りを気にしていない。
「アディエイル、俺たちはいいから」
クロウドがアディエイルに声をかけると、アリシアが手を差し出す。
一瞬クリスを見るが、差し出された手を取って、向こうへ歩き出した。
ぽかんとそれを見送っていたクリスを、クロウドが促す。
「クリス、向こうが静かだぞ。行こう」
「あ、うん。そうだね」
我に返ったクリスは、アディエイルが歩いていく後ろ姿をちらりと振り返ると、クロウドについて行った。
0
お気に入りに追加
79
あなたにおすすめの小説
壁穴奴隷No.19 麻袋の男
猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。
麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は?
シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。
前編・後編+後日談の全3話
SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。
※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。
※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。
淫愛家族
箕田 悠
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――
溺愛お義兄様を卒業しようと思ったら、、、
ShoTaro
BL
僕・テオドールは、6歳の時にロックス公爵家に引き取られた。
そこから始まった兄・レオナルドの溺愛。
元々貴族ではなく、ただの庶子であるテオドールは、15歳となり、成人まで残すところ一年。独り立ちする計画を立てていた。
兄からの卒業。
レオナルドはそんなことを許すはずもなく、、
全4話で1日1話更新します。
R-18も多少入りますが、最後の1話のみです。
[R18]エリート一家の長兄が落ちこぼれ弟を(性的に)再教育する話
空き缶太郎
BL
(※R18・完結済)エリート一家・皇家に生まれた兄と弟。
兄は歴代の当主達を遥かに上回る才能の持ち主であったが、弟は対象的に優れた才能を持たない凡人であった。
徹底的に兄と比較され続けた結果グレてしまった弟。
そんな愚弟に現当主となった兄は…
(今回試験的にタイトルを長文系というか内容そのまま系のやつにしてみました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる