永遠というもの

風音

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降星祭

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秋も深まってきたこの時期、学園で話題になるのは降星祭コウセイサイだ。
毎年この時期に現れる流星群を見る祭、なのだが、未婚のものたちには違う意味も持つ。
街では市民たちが観星会カンセイカイなるものを催して、未婚の男女の出会いの場となっている。
貴族たちもまた同じように降星祭をあちこちで催して、将来の伴侶を求めるのだ。
特に貴族たちは、これから年明けまで様々な催しが行われるので、この祭りで伴侶の候補を見つけ、その後の様々な催しでその仲を深めていくことになる。見合いで結婚する貴族も多いが、恋愛結婚する貴族も多いのだ。
しかし、ここは男子のみがいる学園。
そこでこの日ばかりは、誰でもここの降星祭に参加することができることになっている。
誰もがこの祭りに気を取られ、話題と言えばこのこと、という感じになっている。

そんな学園中の話題から、なぜか一歩離れたような位置にいるのがこの三人だ。
アディエイルは言わずもがな、だが、クロウドもあまり興味がないようだ。
元々、降星祭に興味がなかったクリスは、純粋にその日の天気などを心配している。
この日ばかりは、この学園もさぞかし華やかになることだろう。

秋の収穫も終わり、いよいよ降星祭の日がやってきた。
この日ばかりは授業は免除され、あちこちが華やかに飾り付けられ、舞踏場は楽団が予行演習を行っている。
本番は陽が落ちてから。
この時期は日が傾くと、あっという間に暗くなる。
暗くなり始めると、正門前の広場は、あちこちから集まった馬車でごった返しはじめた。
着飾った紳士淑女が次々と正門をくぐり、普段は入ることのできない学園に感嘆し、時には油断なく辺りを見回しそれとなく見定めを行っているようだ。
そんな人々の様子を二階の踊り場から眺めているのは、クリスとアディエイル、クロウドの三人だった。
「そういえば、お兄さんの結婚式の時も、たくさんのご令嬢に囲まれていたよね」
と、隣のクロウドを見上げてクリスが言う。
「見てたのか」
「うん。カイルさんと、人気者だねー、って話してたんだ」
そう言うと、なぜかばつの悪そうな顔になる。
「今回はアディエイルが一番人気じゃないか?」
クロウドがニヤッと笑って言うと、アディエイルが嫌そうな顔になる。
独身の王族なのだから、人気の順位で行けば確実に上位だろう。
「それにしても、次々来るよねー」
と感心したようにクリスが言う。
すると、階下から上を見上げた女性たちが、クリス達三人を見つけこちらに向かってくるのが見えた。
クロウドの家の結婚式で肉食獣のような淑女たちに囲まれたことが、まだ恐怖として残るクリスが思わず後ずさりする。
「どうした?」
「う、ちょっと嫌なこと思い出した」
すると、アディエイルがクリスの腕を取り、奥へと進む。
「どこ行くんだよ」
クロウドが慌てて追いかける。
二階の外回廊に出ようと、扉に手をかけたところで、近くから女性の声がした。
「まあ、アディエイル様。ご機嫌よう」
そう言って、亜麻色の髪の綺麗な女性がアディエイルに膝を折って挨拶する。
「・・・アリシア嬢」
差し出された手の甲に唇を落とすアディエイル。
「殿下、お時間少々よろしくて?」
断られるとは思っていない口調で、アリシアが首を傾げる。
彼女の視界には、クリスやクロウドは映っていないらしい。
まるで周りを気にしていない。
「アディエイル、俺たちはいいから」
クロウドがアディエイルに声をかけると、アリシアが手を差し出す。
一瞬クリスを見るが、差し出された手を取って、向こうへ歩き出した。
ぽかんとそれを見送っていたクリスを、クロウドが促す。
「クリス、向こうが静かだぞ。行こう」
「あ、うん。そうだね」
我に返ったクリスは、アディエイルが歩いていく後ろ姿をちらりと振り返ると、クロウドについて行った。
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