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第3章 立ち上がれ! 絶望に汚されても
8.心の咆哮
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抜け殻のように地べたに腰を下ろし続けて、もうどのぐらい経ったのだろう。
よろめきながらティルスが向かった先は、テンプルの部屋だった。在りし日に──いや、今朝まで共に語らい、互いの生還を願った場所。
「……………………」
看守に鉄扉を開けてもらうなり、ティルスは崩れ落ちるように石床に座り込んだ。太ももの傷は、まったく気にならなかった。気を失っている間に、傷口は丁寧に縫合されていたようだが、己の負った傷など、もはやどうでもよかった。
(傷なんかより……)
心が、痛くて、悲しくて。
どうしてだろう、ロシャナクやアルクの前で泣くより。とにかく今は独り、になりたかった。
(……………………)
あふれる涙を拭うことなく、ティルスはただ茫然と石床に視線を落とし続けていた。
喚き散らしたい、怒り狂って叫びたい、というような激情が湧きあがってこないのは、意識を失っていた時間が長く、頭がぼんやりとしているためだろうか。それとももう、心がぽっきりと折れてしまったからだろうか。
(……………………)
虚しさが胸を締め付けてやまない。
茫然自失のまま、心に浮かび上がってくるのは、悔悟の念だった。
(──テンプルは、自分が殺したようなものだ)
テンプルは、自分が思い描いた作戦通りに動いてくれた。混乱しながらも、即席の提案に応じてくれた。
おそらく──自分のことを信頼して。
(でも)
ティルスの脳裏に、悪夢の如き瞬間が蘇る。
『やっぱりキミは、どこに行っても“弱き者”を庇おうとしちゃうんだねぇ』
あの状況、そして吐き捨てられた言葉は、まるで。
自分達の思惑は初めからすべて、見透かされていたのではないか?対戦相手の変更でさえ、意図的な何かが働いていたのだとしたら──
「…………ッ!」
ティルスは固く拳を握った。
どうして、どうして、その可能性を事前に予測できなかったんだろう!
ロシャナクと考えた作戦が、そのまま通用すると、どうして。どうして思ったんだ。
上手くいくと、どうして。どうして。どうして単純に思ってしまったんだ。
自分が、もっとしっかり。何かを、考えていれば。
(何か、もっと別の……)
そう、別の道を辿っていれば。テンプルはあんな痛い思いをして絶命することはなかったのかもしれない。そう思うと、喉がギュッと締め付けられて、大粒の涙が止まることはなかった。ティルスは両手で顔を覆うと、声を押し殺して咽び泣いた。
(テンプル、テンプル……)
悔悟の念をより一層強くするのは、テンプルの悲しそうな顔だった。
『闘技場では、“友人”なんて関係ねぇ!』
自分の言い放った心無い言葉に、彼はどれほど深く傷ついたことか。感謝してもしきれない大切な友人に、自分はなんてことを言ってしまったのだろう。たとえ偽りの言葉だったとしても。
(いや……)
「そんなこと思ってねぇよ」と伝えることすら、もうテンプルにはできないのだ。テンプルは傷ついたまま逝ってしまった。心を傷つけたまま、死なせてしまった。仮面の男の鉄槌から、彼を救い出すこともできなかった。「助けて」と差し出された右手に応えることも。自分は、自分は。無力で無知で、何もできなかったのだ。
ティルスは膝を抱えてうずくまった。
(こんな結末になるって分かっていたなら、いっそ)
“お前は大切な友人だよ”
“アレリアのこと頼むな”
そう伝えた上で。ああ、そうだ。
きっと自分があの場で、自決した方がマシだったのかもしれない──。
◆◆◆◆◆◆
沈みゆく心の闇の中で。唐突にカラン、と乾いた音がして、ティルスは泣き腫らした顔を上げた。薄暗い部屋で目を凝らすと、テンプルの使用していた寝床の下に何かが転がっている。
「……………………」
ほとんど無意識の状態で、ティルスは立ち上がり石床を確かめに行った。近づくと、小さな玉のようなものが、二つ落ちていた。それぞれ拾い上げると、手のひらに木材の温もりが広がる。
(なんだ、これ……?)
鉄格子から漏れ出る松明の灯りに、丸みを帯びた二つの物体を、そっと照らし出してみる。
「──!」
それは、優しい顔をした木彫りの人形だった。一つは女性を模したもの。もう一つは男性だが、顔つきが幼いように見える。背面にはそれぞれ、かすれた文字が刻まれていた。『Stella』と『Io』──テンプルの故国、エルシャニア風に読むなら、『ステラ』と『イオ』だろうか。
「──ッ……!!」
ティルスは木彫りの人形を抱えながら、泣き崩れた。
彫り込まれた文字は、人名だ。
ああ、そうだ。
この二人は、きっと、テンプルの──妻と子供、もしくは妹弟だ。
“集団戦から戻ったら話すよ”
(―テンプル、お前の会いたい人達だったんだな)
テンプルの身の上話の中で、不自然に家族の話題だけが出てこなかったのを思い出す。自分と同じように何か事情を抱えているのかもしれない、と詮索しなかったことを、今になってティルスは強く悔やんだ。死んでしまった人とはもう、何も話せない。この人達が、エルシャニア王国で生きてテンプルの帰りを待つ人達なのか、それともすでに、あの世でテンプルが来るのを待っていた人達なのかさえ、何も、もう何も分からないのだ。
(テンプル、ああ、ごめん……)
剣奴が寝床の下に隠すものは、大切なものだ。自分が隊長のペンダントを心のよりどころにして何度も夜を乗り越えたように、テンプルもこの木彫りの人形達を大切に抱えていたのだと思うと、どうしようもない悲しみが込み上げてくる。
「ッ……ッ……!!」
やはり自分は、取り返しのつかないことをしてしまった。
友達をこの手で殺したも同然の結果を招いて。
これから、これから、どう生きていけばいい。
剣奴として。この檻の中で。
深い悲しみに暮れていた、その時である。
『クソが! 今日は腑抜けた試合をしやがって!』
『っ……あっ……!』
「!?」
ドン、という打音と共に、ラケルドの怒鳴り散らす声が石壁を伝って響き渡る。そして、この小さな悲鳴は──。
(アレリア!?)
瞬時に、壁の向こうでラケルドがアレリアを突き飛ばしたのだと推測する。まずい。止めなければ!
ふらつきながらもなんとか立ち上がると、ティルスは力を振りしぼり、負傷していない左足で石壁を蹴った。と同時に、あらん限りの鬱憤と怒りを込めて、声をぶつける。
「クソはお前達だ!! ラケルド!! ふざけんな!!」
『あッ?』
叫ぶや否や、すぐさま自室の鉄扉がガチャガチャと音を立てて開錠される。バン! と乱暴に重い扉が開け放たれると、激昂したラケルドが姿を現わした。ラケルドは息も切れ切れにへたり込むティルスを見るなり、薄気味の悪い笑みを浮かべながら、その歩みを部屋の中へと進めた。
「そうだよなぁ、──お前にも、お仕置きが必要だよなぁ!!」
「ッ……!」
右頬に一発、ラケルドの拳を受け、ティルスは薄汚い床に倒れ込んだ。手負いの体では起き上がることができず、そのまま力なく地べたに伏す格好となる。
「……フンッ!」
ティルスが弱っていると見るや、反撃される心配はないと踏んだのだろう。ラケルドはニタニタと笑いながら、今度は横たわるティルスの腹部を蹴り飛ばした。
「…………ッ……!」
ティルスはうずくまったまま、鈍い痛みに耐えた。拳も蹴りも、衰弱した状態でなければ、取るに足らない程度の攻撃だった。両の手に自由さえあれば、すかさず殴り返していただろう。だが、今は、今だけはこれで良い。
(よかっ、た……)
ぼんやりとする意識の中で、ティルスは安堵した。
奴の気が、アレリアから逸れてくれた。矛先が無事、自分に向いてくれた。
(アレリアが痛い目に遭わないなら)
それで、いい……。
「お前さあ」
倒れ込むティルスを足先で小さく蹴りつけながら、ラケルドは嘲笑し言い放った。
「そういえば今回は、お友達の奴隷と戦うハメになってしまったんだって?」
「ッ……!! てめぇ……ッ!」
痛む腹部を抑えながら、ティルスはキッ、と頭上のラケルドを睨みつけた。興行師は所有物の視線に怯むことなく、わざと抑揚をつけて嘲りの言葉を続ける。
「戦いにくかったよな~、やりにくいよなぁ~、ごめんな~?」
「ッ……クソがッ……! ッ……!?」
「おい、誰に向かって口利いてんだよ」
房の中に、ドスの効いた低い声が響く。と同時に、勢いよく頭部を踏みつけられ、ティルスは呻きながら顔を歪めた。石床に押し付けられた頬が痛い。頭がくらくらする。
「いい加減わきまえろよ、ティエーラ人」
履物の底でギリギリ、とより一層の力でこめかみを圧迫され、ティルスは息が詰まった。
「──いいか? 次はあんまり親しくない奴か、他の養成所の剣奴に充ててやるから、今度は演技じゃなくて、もう少しマシな試合をしてくれよ。なんて言ったって、お前はアドアステル様のお気に入りらしいからな」
「………………………………」
(ああ……)
やっぱり、見透かされていたんだ──。
踏みつけられているという屈辱的な状況にも関わらず、不思議と自尊心は傷つかなかった。怒りや悔しさも、込みあがってこなかった。代わりにティルスの胸を押し潰したのは、諦観にも似た、なんとも名状しがたい空虚感だった。
(次…………か……)
「………………………………」
「──フンッ、まぁ次回もせいぜい頑張れよ」
奴隷の反応が、芳しくないからだろうか。そう、つまらなそうに吐き捨てるや、ラケルドは踵を返し、去っていった。
「…………っ」
ティルスはやっとの思いで立ち上がり、床に転がってしまった木彫りの人形達を静かに拾い上げると、寝床へと足を向けた。そしてそのまま、ぼろ布の上にどっさりと倒れ込む。
念のため隣の部屋に耳を傾け、中の状況を探った。ラケルドがアレリアの部屋へ戻った様子はなさそうだった。代わりに石壁を伝って聞こえてきたのは、アレリアが泣きながら語りかける声だった。
「ごめんなさい、あ、あたしの代わりにっ貴方が、貴方がっ」
「大丈夫だ、たいしたことねぇ……よ」
(アレリア……)
ぼんやりとした頭の片隅で、ティルスは思案し心を痛めた。アレリアがこの部屋に戻ってきたということは、彼女も闘技場で対戦相手を殺して──生き残ったということだが。
(ごめん、アレリア…………)
正直なところ、今の自分の心身ではアレリアの気持ちを慮るところまで、気をまわすことができなかった。彼女もきっと、自分と同じような悲壮感や罪悪感に明け暮れているだろうに。寄り添うことも、手を差し伸べることもできない自分が、申し訳ない。
『今日は、も、う、おたがい、やす、もう……』
その言葉は、上手く口に出せていただろうか。
ティルスは崩れ落ちるように、──まぶたを閉じた。
◆◆◆◆◆◆
その夜。夢の中か、はたまた現実か。
定かではない暗闇の中で。
(……………………)
ティルスは強い虚無感に溺れ続けていた。
(……………………)
思えばここに来てから、少なくとも二度ハッキリと“生”を手放したいと思った。
一度目は闘技場で、棘姫ことアレリアと対峙した時。
──自分は帝国民の前で、笑いながら殺されるために、わざわざ帝都へと連行されたのだと悟ったから。
二度目は、そう、ロシャナクとの殺し合いが避けられないと思った時だ。
──辛くて、苦しくて、生きているからこそこんな目に遭うのだと、夜な夜な一人嘆いた。
でも。アレリアとの邂逅と、仲間達の心遣いで。
負けてはいけない、まだあきらめない、と思い直すことができた。
『生きている限り、状況は変えられる』という隊長の言葉を、挫けるたびに心に刻んで。
(だけど……)
──ここは、絶望の檻の中だ。
結局、自分達は帝国人の掌の上で踊らされ続けている。
剣奴に身をやつしている限り、何の努力も報われない。剣奴同士の絆だって、“いつか殺し合うかもしれない”と思えば、とたんに脆く、悲しい繋がりとしか感じられなくなってしまった。
互いに心を削り合って、心身を摩耗して、殺し合って。
(そんなことをして……)
行き着く先は結局のところ、帝国人という形での生きながらえでしかない。
「はは……」
乾いた笑いと共に、涙がこめかみをつたっていく。
ああ、虚しいなぁ。
ティルスは無意識に、仰向けの状態のまま胸元をさぐった。
(!! そうだ……)
隊長のペンダントは、ロシャナクとアルクの部屋に置いてきたままだった。本当は、今日の試合にも身に着けていきたかったのだが、没収されることを恐れて寝床の下に隠しておいたのだ。
(……………………)
ふと、ティルスは思い出した。
そういえば、養成所に連行されたその日。ロシャナクが言っていた。
『ここだと“自殺防止のため”に没収されちゃうと思う』
ペンダントに限らず、首を吊るのに使えそうな道具は、ここでは軒並み没収されてしまう、と。あの時は、特になんとも思わずに聞いていたが。
「はは、そうだよなぁ……」
今なら痛いほど、その気持ちが分かる。
(首を吊ってしまおうか…………)
「──ッ!!」
なんてことを思ったんだ、とすぐさま強烈な自己嫌悪に襲われた。そんなことのために、隊長はこのペンダントを自分に託したんじゃないだろうが!
ティルスは頭を激しくかきむしった。
(最低だ……!)
ごめんなさい、ごめんなさい、と心の中で繰り返し隊長に謝った。声を上げずにひっそりと泣くつもりが、こらえきれず嗚咽が漏れる。ティルスは腕で顔を覆った。
(苦しい……)
もう自分は、本当は頑張れそうにないんだ。
でも、ダメなんだ。そんなことを思っては。
『ティルス』
(──!? ゲルハルト隊長?)
懐かしく優しい声が、己の名を呼んだ気がした。いや、そんなはずはない。あるわけがないだろう、とティルスは一人かぶりを振った。ついに自分は、幻覚や幻聴の類にすがるまでに達してしまったのか。
『ティルス』
極限状態の頭の中で、尚も温かい声が、己の名を呼んだ。
「…………ッ」
ティルスはぐちゃぐちゃの意識の中で、懐かしい声に導かれて、在りし日の日常を思い返し始めた。
レグノヴァ帝国の侵攻を受ける前のことだ。湖に抱かれた王都で、碧湖守備隊の仲間と共に、平穏に暮らしていた日々を。
(ああ……)
どうして、こんなことになってしまったんだろう。
兵士という職業を選んだ以上、“戦争”に携わることは覚悟していた。覚悟していたつもりだった。でも、あんな形で故国が蹂躙されたのは想定外だった。帝国の脅威を感じつつも、訓練や警備に明け暮れる日常──そしてその延長線上に、仲間との楽しい時間や、自分も“家族”を持って平穏な暮らしをする未来が、続いていくのだろうと思っていた。
──今となっては、どうしてそんな盲信ができたんだろう、と不思議だが。
(あの頃に戻りたい。戻りたいな……)
戻れたらどんなに、幸せなことだろう。
そういえば。あれは約二年半前──一六歳になった年の冬だったか。
万が一のレグノヴァ帝国侵攻に備え、エルシャニア王国とティエーラ王国の国境を成す天然の要塞【ツァガーン渓谷】の古城に、数人の兵士とゲルハルト隊長だけで立てこもり、国境警備の任を担当した年のことだ。
大雪の夜。パチパチと炎が踊る炉を囲んで。
ティルスは膝を突き合わせて、ゲルハルト隊長と心の対話をした。城の外で荒れ狂う吹雪さながらの、吹きすさぶ己の心の内を。
──初めて大人に、打ち明けたのだ。
『ティルス』
静かに揺れる炎を眺めながら、語らった言葉を思い出す。薪火の温かさと共に。
『心の中で思っちゃいけないこと、なんてものはない』
隊長は薪をくべながら、落ち着いた声でティルスに語りかけた。
『心はありのままでいい。お前がそう感じたなら、そうなんだ』
「──!」
『どんなに暗い感情も、後ろ向きな感情も、思っていい。考えていい。だが、その気持ちの影には、必ず、心の底から望む本当の願いがある。
──その、願いに、向き合うんだ』
(本当の、願い……?)
とたん、ハッとこれまでの虚無感が晴れはじめた気がした。
ティルスはゆっくりと上体を起こすと、まずは乱れた呼吸を整えた。そして胸に手を当てて、心の奥底と──向き合ってみた。
「……………………」
(そもそも……)
こんな暗くて薄汚い場所に居たくないな、という素直な気持ちを、ため息と共に吐きだした。ああ、それならこの手枷だって邪魔だ。どうしてこんな場所で囚われ、一日中監視されていなければならないんだ!
そしてティルスは、この場所で出会った仲間達の顔と出来事を、一つ一つ心に思い浮かべていった。
(ロシャナク……)
自分によくしてくれた相手に『なんで』って問い詰めたり。こんなことになるなら知り合いたくなかった、って思ったり。
(アルク……)
どうせ殺し合うなら、と仲間なのに心を閉ざしたり。
(テンプル……)
友達だと思っている奴に、『闘技場では、“友人”なんて関係ねぇ』なんて言ったり。
ああ、全部嫌だった! そんなこと思ったり、言ったりしたくなかった!
思いは、堰を切ったようにあふれ出した。
(……アレリア)
お前を守るために、“関わらないようにする”なんてイヤだ。もっとアレリアと話したい。落ち込んでいたら励ましてあげたい。その手を取って、きちんと彼女に向き合いたい!
(ああ、そうだ……!)
そもそも、殺すのがこの人だったらマシだ、とか、自分の方が死ねばいいんだ、とか、この人は目的があるから生きていてもいい、なんて仄暗い葛藤や選別を、もう二度としたくない。
(オレ達は!!)
心がある。ラケルドの所有物なんかじゃない。人間だ。人間なんだ。この場所はおかしい!!
自分は剣闘士養成所で繰り広げられるすべてが、大っ嫌いだ!!!!
そう自覚した瞬間。ティルスは己の成すべきことが、はっきりと見えた。
それはほとんど天啓に近い感覚でティルスの体を駆け巡った。
これは絶対に、果たすべき使命だ、と。
──逃げよう! 逃げるんだ、この絶望の檻から!!
よろめきながらティルスが向かった先は、テンプルの部屋だった。在りし日に──いや、今朝まで共に語らい、互いの生還を願った場所。
「……………………」
看守に鉄扉を開けてもらうなり、ティルスは崩れ落ちるように石床に座り込んだ。太ももの傷は、まったく気にならなかった。気を失っている間に、傷口は丁寧に縫合されていたようだが、己の負った傷など、もはやどうでもよかった。
(傷なんかより……)
心が、痛くて、悲しくて。
どうしてだろう、ロシャナクやアルクの前で泣くより。とにかく今は独り、になりたかった。
(……………………)
あふれる涙を拭うことなく、ティルスはただ茫然と石床に視線を落とし続けていた。
喚き散らしたい、怒り狂って叫びたい、というような激情が湧きあがってこないのは、意識を失っていた時間が長く、頭がぼんやりとしているためだろうか。それとももう、心がぽっきりと折れてしまったからだろうか。
(……………………)
虚しさが胸を締め付けてやまない。
茫然自失のまま、心に浮かび上がってくるのは、悔悟の念だった。
(──テンプルは、自分が殺したようなものだ)
テンプルは、自分が思い描いた作戦通りに動いてくれた。混乱しながらも、即席の提案に応じてくれた。
おそらく──自分のことを信頼して。
(でも)
ティルスの脳裏に、悪夢の如き瞬間が蘇る。
『やっぱりキミは、どこに行っても“弱き者”を庇おうとしちゃうんだねぇ』
あの状況、そして吐き捨てられた言葉は、まるで。
自分達の思惑は初めからすべて、見透かされていたのではないか?対戦相手の変更でさえ、意図的な何かが働いていたのだとしたら──
「…………ッ!」
ティルスは固く拳を握った。
どうして、どうして、その可能性を事前に予測できなかったんだろう!
ロシャナクと考えた作戦が、そのまま通用すると、どうして。どうして思ったんだ。
上手くいくと、どうして。どうして。どうして単純に思ってしまったんだ。
自分が、もっとしっかり。何かを、考えていれば。
(何か、もっと別の……)
そう、別の道を辿っていれば。テンプルはあんな痛い思いをして絶命することはなかったのかもしれない。そう思うと、喉がギュッと締め付けられて、大粒の涙が止まることはなかった。ティルスは両手で顔を覆うと、声を押し殺して咽び泣いた。
(テンプル、テンプル……)
悔悟の念をより一層強くするのは、テンプルの悲しそうな顔だった。
『闘技場では、“友人”なんて関係ねぇ!』
自分の言い放った心無い言葉に、彼はどれほど深く傷ついたことか。感謝してもしきれない大切な友人に、自分はなんてことを言ってしまったのだろう。たとえ偽りの言葉だったとしても。
(いや……)
「そんなこと思ってねぇよ」と伝えることすら、もうテンプルにはできないのだ。テンプルは傷ついたまま逝ってしまった。心を傷つけたまま、死なせてしまった。仮面の男の鉄槌から、彼を救い出すこともできなかった。「助けて」と差し出された右手に応えることも。自分は、自分は。無力で無知で、何もできなかったのだ。
ティルスは膝を抱えてうずくまった。
(こんな結末になるって分かっていたなら、いっそ)
“お前は大切な友人だよ”
“アレリアのこと頼むな”
そう伝えた上で。ああ、そうだ。
きっと自分があの場で、自決した方がマシだったのかもしれない──。
◆◆◆◆◆◆
沈みゆく心の闇の中で。唐突にカラン、と乾いた音がして、ティルスは泣き腫らした顔を上げた。薄暗い部屋で目を凝らすと、テンプルの使用していた寝床の下に何かが転がっている。
「……………………」
ほとんど無意識の状態で、ティルスは立ち上がり石床を確かめに行った。近づくと、小さな玉のようなものが、二つ落ちていた。それぞれ拾い上げると、手のひらに木材の温もりが広がる。
(なんだ、これ……?)
鉄格子から漏れ出る松明の灯りに、丸みを帯びた二つの物体を、そっと照らし出してみる。
「──!」
それは、優しい顔をした木彫りの人形だった。一つは女性を模したもの。もう一つは男性だが、顔つきが幼いように見える。背面にはそれぞれ、かすれた文字が刻まれていた。『Stella』と『Io』──テンプルの故国、エルシャニア風に読むなら、『ステラ』と『イオ』だろうか。
「──ッ……!!」
ティルスは木彫りの人形を抱えながら、泣き崩れた。
彫り込まれた文字は、人名だ。
ああ、そうだ。
この二人は、きっと、テンプルの──妻と子供、もしくは妹弟だ。
“集団戦から戻ったら話すよ”
(―テンプル、お前の会いたい人達だったんだな)
テンプルの身の上話の中で、不自然に家族の話題だけが出てこなかったのを思い出す。自分と同じように何か事情を抱えているのかもしれない、と詮索しなかったことを、今になってティルスは強く悔やんだ。死んでしまった人とはもう、何も話せない。この人達が、エルシャニア王国で生きてテンプルの帰りを待つ人達なのか、それともすでに、あの世でテンプルが来るのを待っていた人達なのかさえ、何も、もう何も分からないのだ。
(テンプル、ああ、ごめん……)
剣奴が寝床の下に隠すものは、大切なものだ。自分が隊長のペンダントを心のよりどころにして何度も夜を乗り越えたように、テンプルもこの木彫りの人形達を大切に抱えていたのだと思うと、どうしようもない悲しみが込み上げてくる。
「ッ……ッ……!!」
やはり自分は、取り返しのつかないことをしてしまった。
友達をこの手で殺したも同然の結果を招いて。
これから、これから、どう生きていけばいい。
剣奴として。この檻の中で。
深い悲しみに暮れていた、その時である。
『クソが! 今日は腑抜けた試合をしやがって!』
『っ……あっ……!』
「!?」
ドン、という打音と共に、ラケルドの怒鳴り散らす声が石壁を伝って響き渡る。そして、この小さな悲鳴は──。
(アレリア!?)
瞬時に、壁の向こうでラケルドがアレリアを突き飛ばしたのだと推測する。まずい。止めなければ!
ふらつきながらもなんとか立ち上がると、ティルスは力を振りしぼり、負傷していない左足で石壁を蹴った。と同時に、あらん限りの鬱憤と怒りを込めて、声をぶつける。
「クソはお前達だ!! ラケルド!! ふざけんな!!」
『あッ?』
叫ぶや否や、すぐさま自室の鉄扉がガチャガチャと音を立てて開錠される。バン! と乱暴に重い扉が開け放たれると、激昂したラケルドが姿を現わした。ラケルドは息も切れ切れにへたり込むティルスを見るなり、薄気味の悪い笑みを浮かべながら、その歩みを部屋の中へと進めた。
「そうだよなぁ、──お前にも、お仕置きが必要だよなぁ!!」
「ッ……!」
右頬に一発、ラケルドの拳を受け、ティルスは薄汚い床に倒れ込んだ。手負いの体では起き上がることができず、そのまま力なく地べたに伏す格好となる。
「……フンッ!」
ティルスが弱っていると見るや、反撃される心配はないと踏んだのだろう。ラケルドはニタニタと笑いながら、今度は横たわるティルスの腹部を蹴り飛ばした。
「…………ッ……!」
ティルスはうずくまったまま、鈍い痛みに耐えた。拳も蹴りも、衰弱した状態でなければ、取るに足らない程度の攻撃だった。両の手に自由さえあれば、すかさず殴り返していただろう。だが、今は、今だけはこれで良い。
(よかっ、た……)
ぼんやりとする意識の中で、ティルスは安堵した。
奴の気が、アレリアから逸れてくれた。矛先が無事、自分に向いてくれた。
(アレリアが痛い目に遭わないなら)
それで、いい……。
「お前さあ」
倒れ込むティルスを足先で小さく蹴りつけながら、ラケルドは嘲笑し言い放った。
「そういえば今回は、お友達の奴隷と戦うハメになってしまったんだって?」
「ッ……!! てめぇ……ッ!」
痛む腹部を抑えながら、ティルスはキッ、と頭上のラケルドを睨みつけた。興行師は所有物の視線に怯むことなく、わざと抑揚をつけて嘲りの言葉を続ける。
「戦いにくかったよな~、やりにくいよなぁ~、ごめんな~?」
「ッ……クソがッ……! ッ……!?」
「おい、誰に向かって口利いてんだよ」
房の中に、ドスの効いた低い声が響く。と同時に、勢いよく頭部を踏みつけられ、ティルスは呻きながら顔を歪めた。石床に押し付けられた頬が痛い。頭がくらくらする。
「いい加減わきまえろよ、ティエーラ人」
履物の底でギリギリ、とより一層の力でこめかみを圧迫され、ティルスは息が詰まった。
「──いいか? 次はあんまり親しくない奴か、他の養成所の剣奴に充ててやるから、今度は演技じゃなくて、もう少しマシな試合をしてくれよ。なんて言ったって、お前はアドアステル様のお気に入りらしいからな」
「………………………………」
(ああ……)
やっぱり、見透かされていたんだ──。
踏みつけられているという屈辱的な状況にも関わらず、不思議と自尊心は傷つかなかった。怒りや悔しさも、込みあがってこなかった。代わりにティルスの胸を押し潰したのは、諦観にも似た、なんとも名状しがたい空虚感だった。
(次…………か……)
「………………………………」
「──フンッ、まぁ次回もせいぜい頑張れよ」
奴隷の反応が、芳しくないからだろうか。そう、つまらなそうに吐き捨てるや、ラケルドは踵を返し、去っていった。
「…………っ」
ティルスはやっとの思いで立ち上がり、床に転がってしまった木彫りの人形達を静かに拾い上げると、寝床へと足を向けた。そしてそのまま、ぼろ布の上にどっさりと倒れ込む。
念のため隣の部屋に耳を傾け、中の状況を探った。ラケルドがアレリアの部屋へ戻った様子はなさそうだった。代わりに石壁を伝って聞こえてきたのは、アレリアが泣きながら語りかける声だった。
「ごめんなさい、あ、あたしの代わりにっ貴方が、貴方がっ」
「大丈夫だ、たいしたことねぇ……よ」
(アレリア……)
ぼんやりとした頭の片隅で、ティルスは思案し心を痛めた。アレリアがこの部屋に戻ってきたということは、彼女も闘技場で対戦相手を殺して──生き残ったということだが。
(ごめん、アレリア…………)
正直なところ、今の自分の心身ではアレリアの気持ちを慮るところまで、気をまわすことができなかった。彼女もきっと、自分と同じような悲壮感や罪悪感に明け暮れているだろうに。寄り添うことも、手を差し伸べることもできない自分が、申し訳ない。
『今日は、も、う、おたがい、やす、もう……』
その言葉は、上手く口に出せていただろうか。
ティルスは崩れ落ちるように、──まぶたを閉じた。
◆◆◆◆◆◆
その夜。夢の中か、はたまた現実か。
定かではない暗闇の中で。
(……………………)
ティルスは強い虚無感に溺れ続けていた。
(……………………)
思えばここに来てから、少なくとも二度ハッキリと“生”を手放したいと思った。
一度目は闘技場で、棘姫ことアレリアと対峙した時。
──自分は帝国民の前で、笑いながら殺されるために、わざわざ帝都へと連行されたのだと悟ったから。
二度目は、そう、ロシャナクとの殺し合いが避けられないと思った時だ。
──辛くて、苦しくて、生きているからこそこんな目に遭うのだと、夜な夜な一人嘆いた。
でも。アレリアとの邂逅と、仲間達の心遣いで。
負けてはいけない、まだあきらめない、と思い直すことができた。
『生きている限り、状況は変えられる』という隊長の言葉を、挫けるたびに心に刻んで。
(だけど……)
──ここは、絶望の檻の中だ。
結局、自分達は帝国人の掌の上で踊らされ続けている。
剣奴に身をやつしている限り、何の努力も報われない。剣奴同士の絆だって、“いつか殺し合うかもしれない”と思えば、とたんに脆く、悲しい繋がりとしか感じられなくなってしまった。
互いに心を削り合って、心身を摩耗して、殺し合って。
(そんなことをして……)
行き着く先は結局のところ、帝国人という形での生きながらえでしかない。
「はは……」
乾いた笑いと共に、涙がこめかみをつたっていく。
ああ、虚しいなぁ。
ティルスは無意識に、仰向けの状態のまま胸元をさぐった。
(!! そうだ……)
隊長のペンダントは、ロシャナクとアルクの部屋に置いてきたままだった。本当は、今日の試合にも身に着けていきたかったのだが、没収されることを恐れて寝床の下に隠しておいたのだ。
(……………………)
ふと、ティルスは思い出した。
そういえば、養成所に連行されたその日。ロシャナクが言っていた。
『ここだと“自殺防止のため”に没収されちゃうと思う』
ペンダントに限らず、首を吊るのに使えそうな道具は、ここでは軒並み没収されてしまう、と。あの時は、特になんとも思わずに聞いていたが。
「はは、そうだよなぁ……」
今なら痛いほど、その気持ちが分かる。
(首を吊ってしまおうか…………)
「──ッ!!」
なんてことを思ったんだ、とすぐさま強烈な自己嫌悪に襲われた。そんなことのために、隊長はこのペンダントを自分に託したんじゃないだろうが!
ティルスは頭を激しくかきむしった。
(最低だ……!)
ごめんなさい、ごめんなさい、と心の中で繰り返し隊長に謝った。声を上げずにひっそりと泣くつもりが、こらえきれず嗚咽が漏れる。ティルスは腕で顔を覆った。
(苦しい……)
もう自分は、本当は頑張れそうにないんだ。
でも、ダメなんだ。そんなことを思っては。
『ティルス』
(──!? ゲルハルト隊長?)
懐かしく優しい声が、己の名を呼んだ気がした。いや、そんなはずはない。あるわけがないだろう、とティルスは一人かぶりを振った。ついに自分は、幻覚や幻聴の類にすがるまでに達してしまったのか。
『ティルス』
極限状態の頭の中で、尚も温かい声が、己の名を呼んだ。
「…………ッ」
ティルスはぐちゃぐちゃの意識の中で、懐かしい声に導かれて、在りし日の日常を思い返し始めた。
レグノヴァ帝国の侵攻を受ける前のことだ。湖に抱かれた王都で、碧湖守備隊の仲間と共に、平穏に暮らしていた日々を。
(ああ……)
どうして、こんなことになってしまったんだろう。
兵士という職業を選んだ以上、“戦争”に携わることは覚悟していた。覚悟していたつもりだった。でも、あんな形で故国が蹂躙されたのは想定外だった。帝国の脅威を感じつつも、訓練や警備に明け暮れる日常──そしてその延長線上に、仲間との楽しい時間や、自分も“家族”を持って平穏な暮らしをする未来が、続いていくのだろうと思っていた。
──今となっては、どうしてそんな盲信ができたんだろう、と不思議だが。
(あの頃に戻りたい。戻りたいな……)
戻れたらどんなに、幸せなことだろう。
そういえば。あれは約二年半前──一六歳になった年の冬だったか。
万が一のレグノヴァ帝国侵攻に備え、エルシャニア王国とティエーラ王国の国境を成す天然の要塞【ツァガーン渓谷】の古城に、数人の兵士とゲルハルト隊長だけで立てこもり、国境警備の任を担当した年のことだ。
大雪の夜。パチパチと炎が踊る炉を囲んで。
ティルスは膝を突き合わせて、ゲルハルト隊長と心の対話をした。城の外で荒れ狂う吹雪さながらの、吹きすさぶ己の心の内を。
──初めて大人に、打ち明けたのだ。
『ティルス』
静かに揺れる炎を眺めながら、語らった言葉を思い出す。薪火の温かさと共に。
『心の中で思っちゃいけないこと、なんてものはない』
隊長は薪をくべながら、落ち着いた声でティルスに語りかけた。
『心はありのままでいい。お前がそう感じたなら、そうなんだ』
「──!」
『どんなに暗い感情も、後ろ向きな感情も、思っていい。考えていい。だが、その気持ちの影には、必ず、心の底から望む本当の願いがある。
──その、願いに、向き合うんだ』
(本当の、願い……?)
とたん、ハッとこれまでの虚無感が晴れはじめた気がした。
ティルスはゆっくりと上体を起こすと、まずは乱れた呼吸を整えた。そして胸に手を当てて、心の奥底と──向き合ってみた。
「……………………」
(そもそも……)
こんな暗くて薄汚い場所に居たくないな、という素直な気持ちを、ため息と共に吐きだした。ああ、それならこの手枷だって邪魔だ。どうしてこんな場所で囚われ、一日中監視されていなければならないんだ!
そしてティルスは、この場所で出会った仲間達の顔と出来事を、一つ一つ心に思い浮かべていった。
(ロシャナク……)
自分によくしてくれた相手に『なんで』って問い詰めたり。こんなことになるなら知り合いたくなかった、って思ったり。
(アルク……)
どうせ殺し合うなら、と仲間なのに心を閉ざしたり。
(テンプル……)
友達だと思っている奴に、『闘技場では、“友人”なんて関係ねぇ』なんて言ったり。
ああ、全部嫌だった! そんなこと思ったり、言ったりしたくなかった!
思いは、堰を切ったようにあふれ出した。
(……アレリア)
お前を守るために、“関わらないようにする”なんてイヤだ。もっとアレリアと話したい。落ち込んでいたら励ましてあげたい。その手を取って、きちんと彼女に向き合いたい!
(ああ、そうだ……!)
そもそも、殺すのがこの人だったらマシだ、とか、自分の方が死ねばいいんだ、とか、この人は目的があるから生きていてもいい、なんて仄暗い葛藤や選別を、もう二度としたくない。
(オレ達は!!)
心がある。ラケルドの所有物なんかじゃない。人間だ。人間なんだ。この場所はおかしい!!
自分は剣闘士養成所で繰り広げられるすべてが、大っ嫌いだ!!!!
そう自覚した瞬間。ティルスは己の成すべきことが、はっきりと見えた。
それはほとんど天啓に近い感覚でティルスの体を駆け巡った。
これは絶対に、果たすべき使命だ、と。
──逃げよう! 逃げるんだ、この絶望の檻から!!
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