6 / 9
置き去り 5
しおりを挟む散々犬っころに群がられ満足した私は彼女ら――みんなメスらしい――から情報聞き出します。
得た情報からどうやら、アレは無事この辺りから抜け出せたようです。
で、彼女たちが喰っていたのアレが雇った輩でようで、馬車を止めたまではいいんですが、その後すぐに彼女たちのエサになった模様。
「ありがとうございます。大変いい情報でしたよ」と他と比べて一回り大きな個体の頭をなでなで。
「あと、ヴィスタ君」
「は、はいっ!」
「あなた。私に嘘をつきましたね? それも現在進行形で」
「えっと……それは」
「あなた……誰ですか?」と言う彼の方を向き、本来抑えている力を開放します。
「ひっ!」
「なに情けない声出してるのですか? あなた。私が邪神だというのを信じていませんでしたね。その蛇も後で解呪しようと考えていませんか? それ、私の蛇(ウシュムガル)の一部ですから無理ですよ?」
どうにも、わかってないようなので、下から盛り上がる様に寄生させた蛇を動かします。
ついでに、骨を直接締め上げますか。
「――っ! あぁああっ!!」
「痛くてどうにかなりそうですか? どうです? 骨を直接締め上げられる痛さは?」
「ァぃぃ――ッ」
ウシュムガルを全て出して、それ彼に近づけます。
七匹目の一際大きな蛇は色は同じだが、他の蛇と違って頚部の皮膚を横に大きく広がっている。
それもぐいっと近づけ、鼻先で下をチロチロさせる。
「さて。ヴィスタ君。これも魔法、ないしは咒術に見えますか?」
と聞けば先程よりは聞き取りやすい声量で「いいえ」と返ってくる。
「あと、あなたが先程から何やらコソコソしてるのも、あえて見逃してるんですがねぇ」
細くした六匹の蛇を彼の上半身に巻く様に絡め首筋まで登らせる。
また、漏らされても嫌ですかね。あと七匹目の口を少し開けてシャーっと威嚇音を出す。
「そ、そ、のですね。ティア様。どうかか、おお話を、聞いていた……だけたらと」
「ふぅん? お話ですか? なんだか面倒になってきたので、あなたの頭から直接お伺いしようかと思っているんですが――ねぇ?」
自分の髪を一房掴み、指に絡めながら微笑むと、ヴィスタ君は顔を引き攣らせる。
顔色は真っ青というか真っ白になっていくのが、なんだか笑えます。
「うっ、嘘は絶対に言いません!! 全てお話いたします!! だからどうか!」
「そうだ。いい事思いつきましたよ」
一旦彼を無視して、早速思いつた事を実行する。
先ず、七匹目の口を大きく広げ、上顎と下顎に折り畳まれていた牙を立たせます。
上顎の牙は頭の上に。下顎の牙は彼の顎下に。
彼の視界は、七匹目の口の中しか見えていないでしょうが、声は聞こえるので問題ないですね。
「別に嘘をついても構いませんよ? 私が嘘っぽなぁ、と感じたらバクンッとしますから。その後にあなたの頭の中身にいろいろと聞きます。さぁ――……遠慮なくどうぞ」
と彼の顔をペロッと舐めてから話の主導権を渡しました。
それから彼の語られた内容によると、
ヴィスタ君の本名はヴィレスタ・フォード。フォード侯爵家の次男だそうです。
なんでそんな家柄の人がチンピラをやっていたかと言うと、フォード家は代々貴族の内偵や監査をする家柄らしく、今回、私の父親の依頼で我が家の調査をしていたとか。
その過程で、きな臭い動きがありヴィレスタ君が潜入捜査をしていたと。であの時に至る。
「太公閣下はずいぶんとティア様をご心配されていました」という言葉が締めとなり、ヴィレスタ君の事情説明は終了しました。
とりあえず、拘束を解いて自由にしてあげ、ちょっと気になる事を聞いてみます。
「なぜ最初に言わなかったので? 下手したら最初に喰われてかも、ですよ?」
「隙をついてあの二人を無力化しようと思っていたんです。実は剣の腕はからっきしなんで」
「あー人間の使う魔法って発動まで長ったらしいですかね。なるほどねぇ」
「いやはや。いろいろ覚悟しちゃいましたよ。はは……」
「さてと、事情もわかりました。ごめんなさい。ヴィレスタ君」
と謝る。なんというかいろいろやり過ぎた感がありますからね。
「いえ! 頭を上げてください! 紛らわしい真似をした自分が悪いので!」と慌てるヴィスタ君。
「そう言うのであれば、ここまでにしときます」
こういうのはさっと済ませるのがいいでしょう。押し問答になってもしょうがないので。
「んじゃ。私はあの物置小屋に戻りますかね。早く帰ると怪しまれそうですので。適度に時間をかけて戻りますが……ヴィレスタ君は?」
「僕もご一緒しますよ。いくら邪神とはいえ、女性を置いて、というのはちょっと。ですが……物置小屋というのはどういった意味ですか?」
と聞かれたので私の三年前からの日常を話します。黙々と歩くよりはマシでしょうからね。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
ちんこと女神さま
halsan
ファンタジー
「嫌われ隊長が綴る呪われ姫の冒険譚」から派生した、ちんこと女神さまのほのぼのとしたヒューマンドラマです。
ホモレズトランスは2016年当時は受け入れられませんでしたが2020年なら大丈夫かなと期待しながら掲載します。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる