上 下
44 / 45

41 俺のつがい

しおりを挟む
いきなり俺が入ってきたのに驚いた二人は、お腹の子を守るために無意識にお腹に手を当てていた。

すでに産み月なので、大きいお腹をしている。
俺は二人に近づくと、そっと二人のお腹に手を当てた。

訳がわからず、それぞれのパートナーに顔を向けるけど、シュシュ達もわからないので首を振った。

神様の采配か、ベージュのお腹に当てた手から、こっちが番だと分かった。
俺はルージュに添えていた手を離し、両手でベージュのお腹に手を当てた。

そして、知らず知らずの内に涙を流していた。

「お帰り、俺の番」

俺の言葉にベージュは一瞬息を止めた。でも次の瞬間、周りから喜びの叫びが響いた。驚いて周りを見ると、大勢の使用人がいた。

中には「今すぐ陛下達にお知らせしろ!」という声もあった。

それからすぐに、父上達が転移してきて、本当に番なのかと聞いてきた。

ここでは詳しく言えないので、俺が頷くだけで父上達は悟ってくれた。

「そうか、そうか!これはめでたい!良かったな、ルイス」

「はい、父上」

それから少しして、ルージュとベージュは同時に産気づき、元気を双子の赤ちゃんを産んだ。
ルージュが双子の男の子を、ベージュが双子の女の子を

俺は迷わず、ベージュの双子の片割れをそっとだっこした。

ベージュとシュシュから、番の名前は俺が付けていいといわれていた。
多分皆は、俺が“エミル”と付ける思っているのだろう。

そんな、この子を否定するような名前を付ける訳がない。魂は同じでも、同じ番でも、この子とエミルは別人なんだ。

俺がだっこしている番につける名前は

「お帰り、俺の番。そして初めまして、ウィステリア」

俺が前世で好きだった花だ。

予想とは違う名前に、皆は戸惑ったけど

「ウィステリア。かわいい名前ね。ルイは名付けのセンスもあるのね」

母様が俺の隣に来て、ウィステリアを覗き込みながら言った。

後は想像出来るように、俺はウィステリアを構いに構いまくった。父上からは「竜人以上の執着だ」と言われたけど、気にしない。

ウィステリアも嫌がることなく、俺に構われてくれている。

それから時が経って、ウィステリアも18歳になったけど、番式は俺の都合で引き延ばしてもらっている。

今では完全に見た目が逆転している。なので、男としてそして、年上として、見た目が釣り合うまで、約100年ウィステリアには、番式を待ってもらっている。

シュシュとベージュは何かいいたそうだけど、本人が納得していることで、口をつぐんでいる。

それからの100年は、色々と尽くした。女性に結婚を、こちらの都合で待ってもらっているんだ、当たり前だ。

その間に、アッシュ兄上の戴冠式も行われた。ドラグ国の世代交代は早い。獣人よりも長く生きるのに、どの国よりも早いのは、余生を夫婦で楽しむためだ。

もちろん、困ったことがあれば手を貸してくれる。
だから、ビビアン義姉様の王妃業も、母様が手伝いながらやっている。

各国への挨拶周りや、慣れない業務があるため、父上もアッシュ兄上も、子供が出来るのが皆よりも遅くなる。

ようやく仕事にも慣れ馴染めた115歳で、アッシュ兄上に子供が産まれた。

俺はアッシュ兄上の子供が産まれたのを確認すると、ウィステリアと二人で婚前旅行に出掛けた。
シュシュもめでたく(ようやく?)釈放だ。

思い付いたときは、一人で世界を回ろうとした。番探しと銘打って。そのときは、まさか12歳で老化が止まるとは思ってもみなかったが

今は、過保護な誰かさん達のお節介で、じゃらじゃらと身を守る魔道具を身につけて、二人での旅を楽しんでいる。

最初に目指したのは、ラビー国。

何も知らないウィステリアは、どうしてラット大臣家族が、涙して自分を抱きしめているのかわからず、困惑していたけど、俺が好きにさせて上げてと言ったら、戸惑いながらもされるがままにさせていた。

俺は“エミル”の事を、ウィステリアに話すつもりはない。その事を大臣家族にも伝えている。

でも、生まれ変わった“エミル”に会わせてほしいと言われたので、“エミル”の事を言わないのであればという、条件のもと了承した。

時間をかけて、ゆっくりと色々な所を見て回った。
そして、俺の二次成長があり、ウィステリアと釣り合う姿になった時、あの丘で俺はウィステリアにプロポーズをした。

「ウィステリア、長いこと待たせた。どうか俺と終生を共にしてくれ」

この世界にはなかった習慣だけど、前世の知識のある俺は、ウィステリアの前に跪き、指輪を差し出した。

ウィステリアは戸惑いながらも、指輪を受け取り

「喜んで」

と微笑んだ。その微笑みの中に、一瞬エミルの笑顔が重なって見えた。

俺はウィステリアとエミルの笑顔に、自然と涙が溢れたけど、すぐに拭き取り立ち上がった。
そして、ウィステリアから指輪を受け取り、その左薬指にはめた。







          完

△△△▼▼▼△△△▼▼▼

ここまでお読みいただきありがとうございます。m(__)m

途中、ご迷惑をおかけしたにもかかわらず、たくさんのいいねとエールをありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ

まだまだ拙い文章(誤字脱字も多い)ですが、これからもお付き合いいただけたら幸いです。

最後にオマケが一話あります。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

異世界に転生した俺は農業指導員だった知識と魔法を使い弱小貴族から気が付けば大陸1の農業王国を興していた。

黒ハット
ファンタジー
 前世では日本で農業指導員として暮らしていたが国際協力員として後進国で農業の指導をしている時に、反政府の武装組織に拳銃で撃たれて35歳で殺されたが、魔法のある異世界に転生し、15歳の時に記憶がよみがえり、前世の農業指導員の知識と魔法を使い弱小貴族から成りあがり、乱世の世を戦い抜き大陸1の農業王国を興す。

貴族に転生してユニークスキル【迷宮】を獲得した俺は、次の人生こそ誰よりも幸せになることを目指す

名無し
ファンタジー
両親に愛されなかったことの不満を抱えながら交通事故で亡くなった主人公。気が付いたとき、彼は貴族の長男ルーフ・ベルシュタインとして転生しており、家族から愛されて育っていた。ルーフはこの幸せを手放したくなくて、前世で両親を憎んで自堕落な生き方をしてきたことを悔い改め、この異世界では後悔しないように高みを目指して生きようと誓うのだった。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

処理中です...