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37 事態はいつも急展開

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皆が落ち着いた後、シュシュが恐る恐る声をかけてきて、身辺調査の報告をした。
結果、突然不可だった。

俺が番だとわかる前から、我儘で、大臣の娘という事を笠に着て傲慢に周りを振り回してたらしい。

それに加え、番がドラグ国の王子の俺だとわかり、学園で迷惑をかけているみたいだ。

「邪神のせいで性格が歪んでいるのか、元の性質なのか。折角俺の悪い噂が払拭されたのに、振り出しに戻ったな、これ」

「ルイス。一人で抱え込まないでね」

未だに、セレナ姉様に抱きつかれている状態の俺の頭を撫でた。

「セレナ姉様、さすがに恥ずかしいよ。そろそろ離して」

セレナ姉様の腕の中で抵抗して、離れることに成功した。

「あらあら、いつの間にかルイも力が強くなったのね。逃げられちゃったわ」

クスクスと笑いながら元の位置に座りなおした。

〔ルイス。もしもの時は一度連絡をくれ。ルナと共にそちらへ行くから〕

〔ええ、側に居るわ〕

「うん、ありがとう。心強いよ。あっ、父上。カイル達に頼みたいことがあるんだけど、伝言お願いできる?」

そして、その後少し話して通信を切った。

入学式から俺は二週間休んだ。
その間も学園では番が好き勝手し、番だからとアポもなく、王族のフロアへ来て、警備兵に追い返されていた。

そして、ようやくカイル達に頼んだ魔道具が届き、二週間ぶりに学園へいったら、予想通り皆から遠巻きに見られ、避けらている。

(こういう時、アッシュ兄上達がうらやましい。双子だから、ひとりぼっちになることないもん)

俺が教室に入ると、賑やかだった声がピタリと止まり、ヒソヒソ声になった。
番とは教室が違うのか、教室内にはいなかった。

教師からも、腫れ物扱いを受けつつお昼休みになった。
どうしたものかと悩んでいたら、アッシュ兄上達が俺の教室まで迎えに来てくれた。アッシュ兄上とレーナ姉上の番も一緒に

「ルイ!飯食いに行くぞ!」

「リード、言葉遣い。ここには大勢の人が居るのよ?気をつけて」

ひとたび外に出れば、ドラグ国の王族として、国を背負うことになる。
行動も、言葉遣いも気を付けなければ、ドラグ国を貶める事になる。

「おう、わりぃ」

「だから、、はぁー」

セレナ姉様が注意するのを諦めてしまった。

「ハハハ、俺はリード兄上らしくてほっとするけどね。王族らしく振る舞ってるリード兄上を見ると“誰?”って必ずなるもん」

「ほら、ルイまで言葉が崩れてしまったわ。兄としてルイの手本にならないと」

「まぁまぁセレナ、そのくらいで。お昼の時間がなくなるよ。行こうか」

そうして、兄上達と食堂へ向かっている途中、あのにおいがしたので、すぐに魔道具を起動した。

そう、カイル達に頼んだのは、においを遮断する結界みたいなもの。

ただし、急がしたので、特定のにおいだけではなく、全てのにおいを遮断してしまうので、常時発動が出来ないのが難点だ。

「あっ、いた!よかったぁ。いきなり匂いが消えたから、どっかに転移しゃったのかと思った。貴方、ルイスっていうんでしょう?私はエミルって言うの。一緒にお昼しましょう!番だもの」

そう言って、俺に近づいてきた。

「エミル嬢、それ以上は近づかないでくれ。そして、勝手に俺の番だと言い触らすのも止めてもらえないだろうか。迷惑だ」

すかさず俺は近づくことを禁止し、心を鬼にして、番だという事を拒否した。

「え?だって私達、番でしょう?今はなんでか匂いがしないけど、私達が唯一無二の番なのは事実でしょう」

「エミル ラット。控えなさい。貴女には再三注意をしたはずです。貴女の行動は、ルイス殿下の評価を下げる行為だと。引いては、ドラグ国を侮辱する行為になると言ったはずです。そして、我がラビー国をも貶める事になると」

アッシュ兄上の番でラビー国のお姫様が、アッシュ兄上を伴って俺の前に出てきて、苦言を呈した。それに続き、アッシュ兄上が

「ドラグ国の国王陛下より、言付けを預かっている。今から言う私の言葉は、ドラグ国の国王陛下の言葉と心得よ。“我が国の第三王子ルイス ドラグの番である、エミル ラットをドラグ国の王族の番とは認めない。よって今後一切、第三王子ルイスの番だと吹聴することを禁ずる”。これからはこの者がなんと言おうと、ルイスとは関係ない。皆もそのつもりで接してほしい」

行くよと、アッシュ兄上に背中を押され、俺も歩きだした。

「待って!認めないって何?認めるもないも、私はルイスの番よ!番なのよ!ねぇ、ルイス。あなたからも言ってよ!私が番だって!ねぇ!」

俺は足を止め、振り返った。その事に、何を思ったのかエミルは笑顔になった。

「俺は、、ドラグ国の王族です。国の決定に従う。しかし、個人的にも俺は、貴女が番だとは認めなくない」

感情を出さないように、あえて無表情を意識した。
エミルは笑顔から一転、感情が抜け落ちような無の表情になり

「“ふざけるな。唯一無二の番を否定する愚か者にして、異なる世界の女神にも愛されし者よ。お前の魂を必ず貶めてやる。恨むならあの女を恨むことだ。私は決してあの女を許さない!”」

声が二重に聞こえた。たぶん、邪神が喋っていたのだろう。
エミルは喋り終わると、気を失うように倒れた。

(ねぇ、神様?もしかして、この邪神、あの姉妹神様の世界の邪神なの?)

『・・・・』

(沈黙は肯定ととらえるよ?そして、やらかしたのは姉神様かな?)

『・・ユーリに悪気はないのだが、なぜか悪い方に流れてしまうのだ。しかも、邪神がこの世界に逃げ込んだのは偶然で、俺がお前に交信している時に、お前にユーリの加護があることに気づいたのかもしれんな』

(神様?妹神様によろしくと言っといてもらえます?)

『・・わかった。その、色々とすまん。そして、言いにくいんだが、邪神が表に出てきたと言うことは、それだけ邪神が魂を侵略しているということ。すぐに行動しないと、手遅れになるぞ』

(・・・はぁ、心の準備もさせてもらえないとはね)

「アッシュ兄上。そして、ラビー国第一王女 ビビアン ラビー殿下。決断の時のようです。至急父上に連絡し、ラビー国へも報告しなければなりません。この学園に、エミル嬢のご兄弟はいますか?」

こうして、緊急で父上に連絡をし、学園にいるエミル嬢の兄弟にも説明し、ラビー国へも父上から伝えてもらい、数日後。事情を知るもの以外、人の居ない丘にエミル嬢を呼び出した。
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