知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ

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20 山へ下見に行こう

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宰相補佐の人達が書類を整えてから執務室の隣の仮眠室へ移動した。

「父上、彼らは同席しないの?」

「彼らも強制的に徹夜になるので、今から休んでもらうのです」

父上じゃなく、宰相が答えた。これ以上は聞いてはいけない!

ぎこちない空気の中、数分後。ミヤが魔術長を連れて来た。

「陛下、お連れしました」

そう言っているミヤの手は、魔術長の襟首を持っていた。

「あ、ああ。ありがとう」

父上も予想外の登場に動揺した。

「ミヤ、なんか僕の扱い雑じゃないか?」

「ご自分の胸に手を当ててみればいいのです。ほら、陛下がお待ちですよ」

ミヤは掴んでいた襟首を離し、魔術長は姿勢を正した。

「陛下、お呼びと伺いました。どうされましたか?」

おお、変わり身早いな。俺は、コソッとミヤを呼んで、

「ミヤらしくないね?魔術長にでも意地悪されたの?」

と聞くと、ミヤは苦笑して

「お恥ずかしい所をお見せしました。そうですね、私がされたのではなく、私の双子の妹ですね。あれと妹は番なのですが、あれはここ2か月家に帰ってないんですよ。その事で妹が参ってしまっているんです」

俺は小声で聞いたのに、ミヤは皆に聞こえるくらいの声で答えた。しかも、魔術長を睨みながら

今日はあっちもこっちも地雷だらけだ。必要なこと以外はお口チャックしとこう。

「ミヤ、今はそこまで。後で魔術長と話す時間をもうける。魔術長、ここからが本題なのだが」

そうして、魔術長に街に換気扇を付けるむねを伝え、そういった魔道具を作れないかと聞いた。その際、俺が付けた方がいい機能を伝えた。

「魔術長。もし可能なら空気の循環だけではなく、消臭やクリーンのような機能も付けられませんか?何十万年もの臭いがこびりついているので、ちょっとやそっとじゃ臭いはなくならないと思うので」

そして、父上達には

「ねぇ、父上。下水の整備も同時にやりませんか?おそらく、下水がちゃんと機能していないせいでもあると思いますよ、あの臭い」

父上と宰相は悩んでる。まぁ、言うだけならただだけど、魔道具作りに整備と、どれ程のお金や人材がかかるか。悩みどころだね。

魔術長も加わり、大人達はなにから取り掛かり、どこからお金を捻出するかの話し合いを始めた。

お子様な俺は手持ちぶさただ。こんな時は知識スキルで暇潰しだ。

ーーーー
下水のしくみ

地面の下に2種類の下水道管がある。
 ①汚水管 
汚水はこの管を流れて下水処理へ

 ②雨水管
雨水はこの管を通って川や海へ流れる

下水管は傾いているので自然と流れていく

ーーーー

この辺に川も海もないよね?魔道具で水を登らせて、この山のどこかに処理場を作る?

でも場所によっては魔獣が下水処理場を破壊しそうだな。

『あっ、あーあー。地球の魂よ、聞こえるか?』

?俺はキョロキョロと声の主を探した。でもどっかで聞いた声だな?

『探しても見えんよ。直接お主の頭に語りかけている。うん?もしかして忘れたか?この世界の神だ』

異世界ってほんと神様との距離近いよね。

(どうも、お久しぶりです。どうかしたんですか?)

『おう。ようやく下水の処理にたどり着いたな。前にユーリに地球での下水の処理の話を聞いて、この世界の獣人達のいる街の近くに溜め池を作ったんだが、誰も気づいてくれなくてな。そこの城の近くにも作ってあるから、そこを使ってくれ。そして、それを広めてくれ。頼んだぞ』

いいけどさ、ちゃんと了承は確認してほしいね。

「父上、下水を整備するに当たって、処理場の場所を決めたいと思うんだけど、そのために山を回りたいんだけど、いいかな」

「今からか?」

父上は窓の外を確認して聞いていた。俺も確認すると、太陽はだいぶ頂点からズレている。

「あー、今からでは日が暮れるね?明日はいい?」

「そうだな。ルイが手伝ってくれるのなら助かるよ。明日は頼むな。ルージュ達もルイスを頼むぞ」

「「「はい」」」

「ルイのおかげで長年の問題が解決しそうだ。ありがとう。もう今日はいいから戻りなさい」

「うん。父上、お仕事頑張ってね。母様には俺から伝えとくよ」

今日は戻ってこれないことを

「ああ、頼む」

父上にもしケモ耳があるとしたら、完全に垂れ下がってるね、今。

俺は父上の執務室を後にして、母様に会いに行き、父上の事を伝えた。
その際、なんで戻れないのかを聞かれたので、換気扇や下水の処理の事を話すと、俺の手を取ってくるくると回りながら喜んだ。

この夫婦は嬉しいと回らないと気が済まないのかな?

俺はふらふらになりながら、ルージュに頼んで部屋に転移した。

翌日、アッシュ兄上とリード兄上も一緒に山の探検、、じゃなくて、溜め池探しに出た。

俺とルージュ達3人に俺付きの護衛5人。アッシュ兄上とトーチカともう一人、侍従のベリルにアッシュ兄上の護衛5人。リード兄上とリード兄上の侍従のカイドとカイトの双子に護衛5人。総勢22名、相変わらずの大所帯。

護衛の中には、第3と第4の団長と副団長がいて、それ以外の護衛には契約魔法をかけ、俺のやらかしに備えている。

俺達兄弟を真ん中に、それぞれの侍従が周りを囲み、その外側を護衛が守っている。

はっきり言って、前が見えない。長身の竜人が周りを囲んでいるために。

「前回は逃げるのに必死でよく見なかったから、今回はゆっくり見れるかなって思ったけど、見えるのは、護衛の背中。、、背に腹は代えられないか」

俺はこう心で思っていたつもりが、口に出ていたため

「その節は大変申し訳ありませんでした」

シュシュが謝ってきた。シュシュに突然謝られ驚いていると、周りの竜人の肩が震えていた。

「ふっ、ルイ?声に出てるよ。で、何が背に腹は代えられないのかな?」

「やっぱりルイは面白いな!」

アッシュ兄上とリード兄上が笑いながら言ってきた。

独り言が癖になってきてるかも、、。

「あー、シュシュ?謝らなくていいよ。シュシュは今それでちゃんと罰をうけてるし、反省してるのは見ていて分かってるから。俺もごめんね?責めるつもりで言ったわけじゃないから」

「いえ、自業自得ですので。それに、罰が罰になっていないように思うのですが」

「そんなことは」

ないと、言おうとしたけど、アッシュ兄上が被せるように

「シュシュ、父上もちゃんと分かっていて黙認している。バレてないと思っているのはルイだけだ」

どうやら、シュシュのみの時に、多めに休憩を取らせている事がバレていたらしい。
やっぱり現代人だったから、ブラックに抵抗が、、

本当はジュジュに頼むつもりだったけど、ちゃんとお仕事させてます感を出すために、シュシュに頼むか。

「おほん。シュシュ、ん」

ん、とシュシュに向けて手を伸ばした。そう、だっこしてもらって周りを見よう!作戦を考えていたのだ。

今世では7歳でも、前世はいい大人だったのだ。
かなり恥ずかしいし、情けない。しかし、この壁の向こうを見るにはこれしかない。

つまり“背に腹は代えられない”のだ!

シュシュは戸惑って、ルージュを見た。

「ルイス殿下はなぜか、貴方をご希望です。主の要望を叶えるのも侍従の努めです」

ルージュは“なぜか”に力を込めながらも、シュシュを促した。

「手が疲れるから、ほら」

この幼い仕草、かなり恥ずかしいんだよ!早く!

シュシュはためらいながらも、

「し、失礼します」

と言って、俺を抱き上げた。この間、立ち止まっていたので俺が抱き上げられたらまた歩きだした。

「おお、よく見える。ジュジュとシュシュは身長も同じくらいなんだね」

俺はキョロキョロしながら、周りの風景をみていた。
様々魔獣や獣の鳴き声が聞こえるなか、突如大きな声が響き渡った。

「ワーハハハハ、ワーハハハハ」

「ミギャー!!」

突然の人の笑い声のような大きな声にビックリした俺は、獣化してシュシュの顔に張り付いた。

はい、フラグ回収です。
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