知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ

文字の大きさ
上 下
11 / 45

11 危機一髪

しおりを挟む
一先ず、この狼の魔獣の事を調べよう。

ーーーー
狼の魔獣 コヨーテ

とても足の速い魔獣。
速いだけでなく、俊敏性にも優れている。

約10~15匹の群れで動く。
偵察隊の2~3匹で、相手を群れの中心まで追い詰める。

希に風魔法を使うコヨーテもいる。

ーーーー

つまりこの3匹は偵察隊。群れの中心まで追い詰めるってことは、今攻撃されても、殺される事はないと言うことかな?死なない程度にはなぶられそうだけど

コヨーテが姿勢を低くして、ゆっくりと近づいてくる。

(ダメ元で、コヨーテの下に土魔法で穴を空けるか?でも、俊敏性もあるから確率は半々かな)

こちらは動けないのに、コヨーテはその距離を縮めてくる。あまり迷っている時間はない。

俺は、コヨーテに気づかれないように尻尾を地面につけ、尻尾を通して魔法を使った。

すると、コヨーテの下に穴が空いた。俊敏性で躱されるのを見越して、少し大きめの穴を空けた。

本能で躱そうとしたコヨーテだけど、穴が大きかったため、そのままキャインと情けない鳴き声をあげて落ちた。

そこまで深さはないので、俺は急いでその場を離れた。
しかし、どうやらすでに囲まれていたらしく、木陰に隠れていたコヨーテが一斉に襲いかかってきた。

森で火魔法は厳禁。手っ取り早く使おうとして、慌てて風魔法に変えた。手を翳し目標を定め、ウインドカッターを進行方向に放った。2匹に当たった。

全てを相手に出来るほど、今の俺は強くない。
いくら、竜人のチートを引き継いでいても、いきなり実戦ではそんなものだ。

進行方向以外からの攻撃を受けても、走る事をやめなかった。

尻尾も使って、後ろを穴だらけしながらも、走った。
ふと、お城の位置を確認するために顔をあげたとき、何かにつまずいて転んでしまった。

その隙をコヨーテが見逃すはずはなく、穴に落ちることのなかった残りのコヨーテが一斉に飛びかかってきた。

ここまでかと、飛びかかってくるコヨーテを見ていると、一陣の風が俺の上を通りすぎた。
すると、飛びかかってきていたコヨーテが全て吹き飛び、絶命した。

呆然とそれを見ていたら、突然陰りだした。
そのまま上を見ると、真っ赤な竜がいた。
その竜を見て「ああ、父上だ」とわかった。

父上はそのまま降りてきて、降りてくる途中で人型に戻り、俺の前に降り立った。

場違いにも俺は、すごい身体能力だなと感心していた。

「ルイ、大丈夫か!ああ、ひどい怪我だ。すぐに医術長に視てもらおう!恐かっただろう?助けに来るのが遅くなってすまなかった」

俺は呆然と父上が来るのを見ていたが、父上の温もりを感じた途端、涙が溢れた。

「ち、父上。こわ、こわかった。恐かった」

身体の精神年齢に引っ張られてか、俺は父上にすがり付いて泣きじゃくった。
父上は俺をそっと抱き締め、大丈夫、もう大丈夫だ。と背中を擦ってくれた。
そのまま泣き疲れて俺は眠った。

目を覚ましたのは、太陽が傾き始めた頃だった。
体を起こそうとして、痛みでまたベッドに倒れこんだ。

自分の体を見ると、包帯だらけだった。
俺は痛みを我慢して体を起こし、ベッドの横に設置してある台から水を取り、飲んだ。
喉の乾きを潤したあと、

「誰かいないの?」

と声をかけると、隣の侍従部屋からドタバタと音がしたと思ったら、ルージュがでてきた。

「あれ?ルージュ、お休みだったんじゃ」

ないの?と続けようとしたら、ルージュが消えた。たぶん父上達に知らせに言ったんだろう。

ものくすごく泣きそうな顔をしていたな、ルージュ。
しかし、問題はジュジュとシュシュか。父上、俺のお願い、聞いてくれるかな?

ルージュが消えて、すぐに父上達が部屋に現れた。医術長も一緒だ。

「ルイス殿下、こちらをお飲みください。怪我を治すポーションです。殿下が眠っておられたので、手当てだけしか出来ませんでしたからね。頑張りましたね」

俺はポーションを受け取り、飲んだ。

「うっ、苦い」

「良薬口に苦しです。ほら、全て飲まないと治りませんよ」

俺はポーションをしばらく睨み付けてから、鼻をつまみ、飲み干した。

「う〰️、苦味があとを引く」

しかし体の痛みは引いたので、怪我は治ったのだろう。医術長が俺に巻かれている包帯を取った。

「もう大丈夫そうですね」

かなり深そうだった傷も無くなっていた。

「医術長、ありがとう」

「いえ、これがお仕事ですから。でもご無事で良かったです」

医術長は少し驚いたあと、ふっと笑った。
そして、医術長は部屋を出た。

そのあとは、家族に揉みくちゃくにされた。
母様とセレナ姉様には泣かれ、レーナ姉上も涙を流しなら俺の無事を喜んだ。アッシュ兄上とリード兄上には頭をくしゃくしゃに撫でられた。

父上も俺の無事と怪我が治ったことを喜びながら、家族が俺を揉みくちゃにするのを見ていた。

家族が落ち着いたあと、俺はジュジュ達の事を父上に聞いた。

「あの父上。ジュジュ達はどうしてますか」

家族は俺の部屋で寛いでいた。俺がジュジュ達の事を聞くと、途端に表情を固くした。
ルージュも動揺して、カートの上に食器を落とした。割れた音はしなかったから割れてはいないだろう。

「今は牢にいれている。ジュジュに関しては、眠らされていただけだから、すぐに出てこれるだろうが。ルイはどうしたい?ジュジュを外すか」

俺は、ルージュを見た。顔色が悪し、手も若干震えている。

二人の事は自分の侍従なのでよく見ている。ジュジュに関しても、俺は苦手意識があったけど、ルージュの次がジュジュなのでよく目にする。

だから、なんとなくだけどジュジュが俺の侍従になった訳がわかる。俺は父上に目線を戻した。

そして、父上が俺にどうしたいか意見を聞いたことを利用しようと思った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

処理中です...