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2 獣化はおおごとでした

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俺は父上に促されベッドへ戻った。
そして、いつの間にか呼んでいた医術長に診てもらい、もう大丈夫との診断をもらった。

その言葉に家族と控えていた使用人がほっとしたのがわかった。
医術長が下がり、家族と使用人だけになると、

「遅くなったが、大丈夫ならルイの誕生日をやり直そう」

と、父上が言えば

「ええ、それは良いわね。ジルミア、マーノ。準備をしましょう」

「「はい。妃殿下!」」

母様が俺の髪を撫でてから、お付きの侍女を引き連れてウキウキと部屋を出ていった。

そんな母様を父上は愛しそうに見送った。
そして、セレナ姉様とレーナ姉上も母様を手伝うと言って、俺を撫でてから部屋を出た。

なぜ俺を撫でてから出ていく?

俺の部屋には、空気になっている女性使用人を除けば男だけが残った。

まぁ、見目もいいし、細身だからむさ苦しくはないけど、どっちか一人くらいは残っててもらいたかった。

そんな思いが顔に出ていたのか

「なんだアル、母上が恋しいのか?もう7歳なんだから、乳離れしろよ」

と、リード兄上がからかってきた。しかも、やや乱暴に俺の頭を撫でながら。

「ちょっ、リード兄上、痛い。それに、別に恋しい訳じゃないよ。レーナ姉上までが行ったことが意外だっただけだよ」

これも嘘ではない。女性でいて男らしいレーナ姉上は、いつまでも少女のような母様を避けていたからだ。

別に嫌いだからではない。レーナ姉上は華美なドレスが苦手なのだ。今だって、ドレス風のズボンを着ている。

しかし、母様はレーナ姉上やセレナ姉様を着飾りたくて仕方ない。だからレーナ姉上は、必要以上に母様に接するのを避けている。

「リード、一応ルイは病み上がりなんだから、手加減してあげな」

リード兄上が乱した髪を整えるように、俺の頭を撫でるアッシュ兄上。

「なんで皆して俺の頭を撫でるのさ」

気恥ずかしくて、少しぶっきらぼうに言うと

「皆心配していたからな。元気になって嬉しいんだ。大人しく撫でられてやれ」

と言いつつ、父上も参戦した。
ただオーバーヒートしただけで心配かけたのは申し訳なかったけど、やっぱり恥ずかしくて俺は獣化をして、ベッドに潜り込んだ。

しかし、自分で思ったも小さく感じて、毛布の中でもモゾモゾしながら全身を確認すると、子猫サイズだった。

「なんで、子猫サイズなんだよ。成猫とまではいかなくても、もう少し大きいと思ってたのに」

俺が打ちひしがれていると、毛布を剥ぎ取られ、驚いた俺は、しっぽの先まで毛が逆立った。

俺は今日だけで何度、驚かされているのだろう?

しかし、俺以上に父上達も驚いていて、目と口が開いていた。

父上達は固まっていて中々動かない。俺は驚きから立ち直り、所在なくベットの上をウロウロしていた。

そんな俺の動きを目で追ってはいるが、未だに目も口も開いたままだ。

目と口乾くよ?ってか、まばたきもしてなくない?父上達を正気に戻すためにも、ここは猫の鳴き真似でもしてみるべきか?

ベットの中央に座り、父上達を見上げ、首を傾げて考えていると、母様達が戻ってきた。

「ライド、お父様達がルイに会いたいと来ているのだけど、お通ししていいかしら?ライド?」

父上がなんの反応もしないことを訝しがり、部屋に入ってきた母様は、父上達の視線の先を見た。

母様と目が合った。その途端

「きゃーー!かわいい!その色と瞳はルイね?まさか獣化出来るの?かわいいわ!」

きゃっきゃっと母様が俺を抱っこしたり、くるくる回ったりしていた。
そんな声にようやく正気に戻った父上達は、母様を落ち着かせ、母様から俺を救出した。

父上は別に救出したつもりではなかっただろうけど、ベッドに戻された俺は、目が回ってフラフラしていた。

「だ、大丈夫か、ルイ?しかし、いくら俺の子でも、竜人ではないのに獣化するなんて聞いたことないな。誰か父上を呼んで、、」

「もう、来とる。孫の様子を見に、トルズ達も来とるぞ」

おお、お祖父様´ズも来た。そういえば、母様が来てるって言ってたね。

一人で使うには広すぎる部屋だけど、ここまで人が集まると、狭く感じるな。

皆が俺を見ている。子猫サイズで見下ろされているとなんか圧がすごい。俺は獣化を解いた。

「ふむ。すでに獣化を使いこなすか。ルイスよ、熱はもう大丈夫なのか?」

「はい、大丈夫です。ご心配おかけしました」

「それでは、場所を移動しよう。第6サロンは空いているか?」

お祖父様が控えている使用人に確認すると

「はい、大丈夫でございます。すぐに準備いたします」

そう言って消えた。、、え?消えた?
そして少ししてからまた現れて、

「準備が整いました」

と言った。

この世界に産まれて早7年。記憶も整理されて、今までの事もちゃんと覚えているし、分かる。

でも、父上達が来たときもそうだけど、俺の知らない事が今起きている。

俺は、消えて現れた使用人から目を離さずに、

「父上?今、あの人いきなり消えて、また急に現れましたよ?」

父上は一瞬、何を言われたのか分かってなかったけど、俺の視線が固定されているのを見て

「ああ、今までルイは認識出来ていなかったのか。俺達竜人は転移魔法が使えるんだよ。この城は無駄に大きくて広いからな。あらかじめ許可されている場所なら転移での移動が基本だ。だから城で働いてる獣人は、竜人とペアを組んでいる。その事も含めて、改めて説明しよう。今は部屋を移動しよう」

そう言って、俺をベッドから降ろした。しかし俺は寝巻きのまま。

「父上、ルイは俺が連れていくので先に行っていてください」

「分かった。では、皆行くぞ」

お祖父様がそう言うと、音もなく消えた。何度見ても不思議だ。

俺は、俺付きの侍従に衣装部屋に連れていかれ、着替えた。そして、父上の所へいくと

「では行こうか」

と言ってなんのモーションもなく、いきなり部屋の景色が変わり、母様達やお祖父様達が目の前にいた。しかし、俺の意識は部屋の内装に持っていかれた。

「なんか、派手な場所ですね?」

そう、広い部屋全体にキラキラと飾りつけがされていたるのだ。まるで、ここでパーティーでもするような、母様好みの華美な飾りつけが

「うん?ここは第6サロンではないな。ルナが俺をここに呼んだのか?」

「ええそうよ。ここはルイの誕生日パーティーをしようと準備していた場所なの。難しい話の後にすぐに祝えるように、お義父様にここに変更してもらったのよ」

何でも竜人と番になれば、番の事を強く念じれば自分の所へ転移させられるらしい。まぁ、相手が必ず転移魔法を使うと分からなければ、意味ないみたいだけど

「ならばさっさと話を終わらせ、ルイの誕生日を祝おう」

父上の優先順位は常に母様だもんね。周りも当たり前のように受け入れているし。

たぶん俺の天啓や獣化の話がメインなのだろうけど。父上、本当にさっさと話を終わらせられるのかな?
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