末っ子神様の世界に転生した何の取り柄のない平凡な俺がちょっとだけ神様の手伝いをする

チョッキリ

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17 クレームと帰還

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光りが収まると目の前にはニコニコ顔の神様がいた。神様を認識したと同時に

「神様正座。あっ、正座分かる?」

「え、正座?分かりますけど」

「だったら正座して。今、すぐ」

戸惑いながらも正座した。

「俺が何で怒ってるか分かってなさそうだね?」

頷く神様。

「あんな試練が在ってたまるか!俺の付与とトーダ達の能力の高さがあってもギリギリだったぞ!あんなの普通の人には無理だ!数百年前の人はよくクリア出来たな」

「え~とですね。聖魔法は元々は転生者特典だったんです。だけど、一部の転生者が聖魔法でお金儲けをしたり、自分は聖女だからと貢がせたり、見目のいい男性を侍らせたりする人がいたんです。人々からの救いを求める声が多く、そういった転生者から聖魔法を外したんです。だから最後に聖魔法を持っていたのは、転生者達です」

「は?転生者ってここ数百年居なかったって事?でも転生を望む魂っていっぱい居るでしょう?」

「はい。しかし兄君達の所で全ての魂が転生してしまって、私の所まで来ないんです。来ても性格に難がある人が多くて」

項垂れる神様。この世界があまり発展してないのって、前の転生者がちゃんとやっていなかったのと、元々転生者が少ないからか。神様が最初に取り柄や能力で選んでないって言ってたけど、めっちゃ選んでるじゃん!

「はぁ、とにかく。聖魔法の使い手を増やしたいんなら、改良をお薦めするよ」

「どうすればいいんですか?」

「トーダ達の時、俺には自分考えろって丸投げしたよなぁ」

俺がジト目で見ると神様は俺から目を反らした。

「・・・まぁいいや。まず、試練限定でマジックバックを用意して、ポーション類も今の二倍にしてバックに入れとく。試練後は、ポーションの残りとマジックバックは回収してね。アンデッドも半分くらいでいいと思う。そして、、ゾンビドラゴンはいらない。あんなデタラメなの普通の人では勝てない!俺達が勝てたのは奇跡だ!」

「しかし、強敵と対峙することで自分でも驚くくらいの力を発揮するものでしょう?」

「限度があるわ!それよりこれが一番の問題だ。この世界の人達の魔法の威力の弱さ。これを克服しないとこれから先も聖魔法の習得者は出てこないと思う」

トーダやレジー達が俺が使った魔法を知らなかった事に俺は驚いた。しかし一緒に狩りをするようになって分かった。

トーダ達が使える魔法は言わば、初級の攻撃魔法だ。魔法の使い方は本能に刷り込まれているけど、実際に使うにはイメージが重要になる。

日本人だった俺には簡単な事だけど、未発展のこの世界の人達には少し難しいかもしれない。
日本にはゲームやアニメなどで色々な魔法が描かれているし、科学で色々な現象を知っている。だからイメージしやすい。

でも、この世界の人達は自然に発生するものしか知らない。だから、イメージが固定されてしまって、魔法の種類も少ないし、威力が弱い。

「トーダ達の事は俺がどうにかする。でも他の人はそうはいかない。そこの所は神様の領分でしょう?頑張って。あー、そうだ。試練の事だけど、アンデッドにあんな一斉に襲いかかられたら即脱出ってなるぞ。部屋割りでもして、数を制限した方がいい。素質があればそれでも習得できるだろう。たぶん」

「はい。ご意見ありがとうございます。ミクリさんが提示してくれたことを与して改良してみます。長々と足止めしましたが、あちらでは時間は経ってません。皆さんと一緒に試練の場から戻った所で目覚めるはずです」

神様は笑顔から真面目な顔になり、

「ミクリさんに負担をかけるようなことをお願いしてすみません。どうかお気をつけて。あの者は人を殺す事を楽しんでます。あの者の闇に囚われる事のないよう、心を強く持ってください」

「はい。善処はします。その時にならないと分からないけど」

神様は一瞬、虚をつかれた顔をしていたけど、すぐに苦笑を浮かべた。
神様の姿が見えなくなると、目の前には神像があり、周りにはトーダ達がいた。帰ってきた、そう思うと体の力が抜けその場に座り込んだ。
トーダ達も座り込んでいる。

「ハハ、帰ってきた。自然とそう思えた。ここが家なんだと、、」

「そうだね。前の所は家だなんて思えなかったからね」

「Zzz」

トーダとアレンはしみじみと自分の感情を噛み締めていたけど、ラインは座りなから寝ていた。

「そう言えば俺達どのくらいあっちにいたんだろう」

疲れすぎて動けないので、首だけを回して辺りを見渡した。どうも静かすぎる。トーダとアレンも不思議に思ったのか

「全く声がしないな。庭からの声もここまで聞こえるのに」

アレンがラインを起こし、全員立ち上がった。

「人の気配はするから、居ないって事は無いはずなんだが」

俺以外は気配察知のスキル持ってるからね。気配察知、俺も欲しいなぁ。トーダ達の真似して気配を探してる振りでもして、手持ち無沙汰を紛らわそう。

「トーダ、アレン、ミクリ、こっち。人の気配が濃い」

そう言って指差した先は正面右側の扉だ。

「神様の加護があるから怪しい人物の侵入はないだろうけど、気をつけて行こう」

ラインが人の気配がすると言ったのは食堂だった。トーダとアレンも扉を潜ったら鮮明に分かったらしい。どうやら気配察知の能力はラインの方が上みたいだ。

トーダが食堂のドアに手を掛け、アレンとラインは俺を守るように立った。トーダがそっとドアを開けると

パンパンパン
『トーダ、ミクリ、アレン、ラインお帰りなさい!』

皆がドアの前に並んでクラッカーを鳴らた。そのクラッカーどうした?
ビックリはしたが俺はクラッカーを知っているで、トーダ達より早く我に返った。

「ただいま」

俺の声でトーダ達も我に返り

「「「ただいま」」」

と言った。その途端皆が俺達に駆け寄ってきた。

トーダ達は戻ってきてすぐに、“帰ってきた”と実感したらしいが、俺は今“ああ、帰ってきたんだ”と実感できた。一人暮らしが長く、あまり実家にも帰ってなかったら、誰かに“おかえり”と言われることがこんなにも安心するなんて思ってもみなかった。
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