末っ子神様の世界に転生した何の取り柄のない平凡な俺がちょっとだけ神様の手伝いをする

チョッキリ

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12 施設の子供達

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 まだ日も上がりきらないうちから森にきた。狩りや採取をしながら子供達を待った。日が登り始めた時、ガラガラと馬車を引く音が聞こえた。

 俺達は音がする方へ慎重に行くと、荷馬車に10人前後の3~4歳位幼い子供が乗っていた。しかも俺には見覚えがあった。そう、孤児院の子供達だ。つまり今から売りに行くのだ。

「トーダ、レジー。あの子達は俺がいた孤児院の子達だ。見覚えがある。今助けないとあの子達は売られる」

 俺の言葉にラインが木に登り弓で馬の前に矢を放った。驚いた馬は暴れ、馬車をおいて走り去っていった。鑑定で誰も怪我をしていないのが分かりほっとした。トーダ達が即座に動き、子供達を荷台から降ろしていた。

 馬から投げ出された御者と荷台に居た人が気が付きトーダ達に襲いかかってきたが、俺がトーダ達との間に壁を出し遮った。子供達は全員降ろし終えてたので荷台が壊れても慌てることはない。

 トーダ達は身体強化し一人で二人の子供を抱えて走り出した。子供達は抵抗せずに抱えられていた。しかもなぜか俺を凝視してる。俺も時間が経てば崩れる壁で荷台だった木屑の回りに壁を出し追いかけられないように閉じ込めた。上は開いてるので窒息することはない。

 鑑定くんで壁の中に全員居る事分かったので、俺も遅れて走り出した。トーダ達は手が塞がってるからね、魔物が出ても戦えない、俺が守らないと。しかしそんなのは杞憂だった。身体強化していたのでとっくに秘密の裏口まで行っていた。

 危険なのは俺だった。身体強化のスキルもない俺は相変わらず遅い。襲ってくる魔物を結界で弾きながら一生懸命走った。そろそろ森の出口って所で弓矢が飛んできて、魔物を倒した。

 膝で息をしながら、倒れた魔物を見た。後ろからトーダとラインが来てくれた。

「相変わらず足が遅いな。一緒に訓練もしてるのに何でミクリだけスキル覚えないんだ?」

 そんなの俺が知りたいよ。ラインが差し出してくれたポーションを飲んで、ようやく落ち着いた。

「トーダ、そう言ってやるな。人には向き不向きがある。ミクリは守りに特化しているんだろう」

 ラインが優しい。そうだ、俺は守りに特化しているからいいんだ。

「ライン、ミクリを甘やかしちゃダメだよ。守りに特化していても、ミクリより小さい子はちゃんとスキル習得している。ミクリ、試練まで僕がみっちりシゴいてあげるね」

 語尾にハートが見えるようだ。アレンって見た目儚げな美少年なのに軽く脳筋が入ってるよね。しかもスパルタだし。現代日本では虐待で訴えられるよ。ここは異世界だけど

「えーと、今のままでいいかなぁって」

「ダメ。トーダ、いいよね?」

「あまりいじめてやるなよ」

「はーい」

 くっ、俺の意見は無視ですか。

「話がまとまったなら行くぞ。いつまでもここにいると他の奴らに見つかる」

 今までは子供達を守っていたレジーがしびれを切らして声をかけてきた。確かにここの事がバレるとマズイ。俺達は秘密の裏口から中に入り、協会へ向かった。

 今回は幼い子達だったので二階部分の今は使われていない左側の部屋が全て繋がり一部屋になって、トイレは3つに、お風呂は大浴場になっていた。階数も4階に増えていたので、なくなった部屋の代わりだろう。

 子供達を留守番組に預け、お風呂と着替えを頼み、俺達も汚れを落としに部屋に戻った。お風呂や着替えをすませ、部屋を出るとチェルが部屋の前に居た。

「うおっ、ビックリした。どうした?」

「子供達、寝た」

「そっか、じゃトーダ達に食堂に行くように言って」

 ちょうどレジー達も出てきたので、先に食堂に行くように言って、俺は左側の部屋をノックした。
 返事がかえってきたので部屋に入ると、可愛い寝顔をして保護した子供達以外のおチビ達も一緒に寝ていた。皆早起きしてお見送りしてくたからな。

「パミルとセルディ以外はここでおチビ達見てて。パミル、セルディ着いてきて」

 おチビ達を起こさないよう小声で伝えて、パミル達を連れて食堂に行った。
 食堂にはすでにトーダ達がいて、果物を摘まんでた。

「あっ、ずりー。俺も腹減ってんのに」

 文句を言いつつトーダ達のいるテーブルに座った。ラインが取り皿に別けてあった果物を俺に差し出した。

「ちゃんと別に取ってある。パミル達もどうだ?」

 オカンだ、オカンがいる。ラインはオカン属性だったのか。
 しばらく無言で果物を食べ、お腹が落ち着いたら

「さっき子供達の様子を見てきた。俺もそうだったように、やっぱりあの子達にも名前がなかった」

「名前が無かったって、だってミクリって」

「自分のステータスを確認して名前が無かったから、自分で付けた。あの子達の名前、皆に付けて欲しい」

 トーダ達は顔を見合わせて、頷きあった。

「もちろんだ。ミクリも考えるだろう?」

 俺は首を振った。

「俺はあいつらを一度見捨てたんだ。俺に名付けられたくないだろう」

「そんなこと無いだろう?神様が認めた子供達だ」

「ああ、だからミクリも考えよう」

 ジニーとランカが俺の言葉を即座に否定した。
 周りのやつらもそうだと言うように頷いてた。
 ただレジーは何か腑に落ちない顔をして

「ミクリ、施設の子供達はあんなに小さい子達だけなのか?」

 俺も保護して驚いた。神様が厳選した子供達と言っていたからある程度幼い子達がいるのは分かっていたからあの人数で森に行った。
 でも、ふたを開ければ幼い子達だけだった。

「いや、でも10歳以上は居なかった。多分、俺が気づいたように上の子供達も気づいてたんじゃないかな?でも、施設を出る勇気はなかった。売られるって分かっていて心が荒まない訳がないんだ」

最後は誰に言うでもなく呟いた。

「でも、ミクリは逃げた。外に出れば何も無いと分かっていても。だから神様はミクリにここを呼んだんじゃないかな?」

良いことを言っているトーダには悪いけど、それはない。俺が転生者だからだ。

「きっとそうだよ。そしてミクリになら俺達を助けられるって思って頼んだんだよ」

「ああ、きっとそうだ」

セルディ、パミル。それも違う。以下同文。
皆してそうだ、そうだと言って俺を元気づけようとしてくれているけど、トーダの発言で俺の中のシリアスは消し飛んでいた。

そして、子守りをしていた子達にも話して、おチビ達以外の全員で名前を考えた。
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