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28 流行り病

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アケルに戻り、久しぶりの街を堪能する前にギルドへ寄り、ジェムとルルの登録をした。

そして、ジェムは緑と紺の足輪を選んだ。本当は赤にしたかったみたいだけど、赤はレティが選んでいるので止めたみたいだ。

俺は色が被ってもいいと言ったけど、頑なに首を縦に振ることはなかった。

ルルは緑と白の首輪を選んだ。

「こっちの二人は地味なんだな」

地味と言うか無難と言うか、まぁラグとレティが派手好き言うことなのかな?

ジェムとルルの分の首輪も合わせてもらった。
その後引き留めるギルド職員を振り切り、セドリックさんの邸へ向かった。
セドリックさんの邸の門が見えた辺りでふと

「そういえば、貴族の家に訪れる時は先触れを出すんだったような」

貴族に限らず、突然家に訪ねるのは失礼だし、お伺いを立てて了承を得ないと出掛けていて家に居ない事もある。

まぁ、貴族は使用人が常にいるから家の主が居なくても、完全に留守と言うことはないと思うけど。

俺がその場で足を止め悩んでいると、前から執事長さんがこちらに向かって早足で歩いてきていた。

俺からも近づき、合流すると

「お帰りなさいませ、ヨミさん。お疲れのところ大変申し訳ないのですが少しお付き合いくださいませんか?」

とても焦った様子の執事長さんにいちにもなく頷いた。

「何かあったんですね?俺に出来ることでしたらお手伝いしますよ」

「ありがとうございます。ではご案内させてもらいます」

ほっとした顔をする執事長さん。遠くで門番もほっとした顔をしていた。

邸に入ると慌ただしく走り回る使用人が居たけど、だいぶ少なく感じた。

「あの、使用人の数が少ないような気がするのですが」

俺の疑問に執事長さんは眉を下げ

「ヨミさんにお願いしたいこととはこの事なのです。詳しくはお部屋についてからお話しします」

そう言って案内されたのはセドリックさん達の寝室だった。

そこにはリアさんが苦しそうに寝ていた。
セドリックさんはリアさんの手を握り、今にも泣きそうな顔をしていた。

「リア、必ず治すからな。アリアやアルフレッド、使用人達も誰一人死なせはしない」

俺たちが入ったことにも気づかずにリアさんの手を握り、祈るように言っていた。

俺は執事長さんを見た。執事長さんは頷いた。俺はセドリックさんのそばに行き

「セドリックさん、俺にリアさんの容態を見せてもらえませんか?」

俺の声に弾かれるように振り返った。俺はセドリックさんを安心させるために、あえて笑顔を見せた。

「ただいま戻りました。次の国に行く前にこちらに寄ったのですが、どうやら正解だったみたいですね。ギルドもバタバタしていて引き留められたけど、こういうことだったんですね」

セドリックさんはせきを切ったように涙を流し

「ヨミ、ヨミ!君にこんなことを頼むのは間違っているかもしれない。でも、どうかリアを、皆を助けてくれ!」

俺は頷き、セドリックさんの横に行きリアさんの容態を見た。

鑑定した結果、この世界でのインフルエンザのようなものだった。

『ポーションは怪我に効くけど、病には効かない。治癒魔法はどうなんだ?』

俺のこの疑問に答えたのはルルだ。

『この世界の主神が居なくなって500年なの。世界を構築しているのは創造神であり主神。神無き世界は崩壊するのみなの。神が居たときはあった技術も魔法も、神が居なくなれば衰退し消えるのみなの。治癒の魔法は今の人間には使えないの。だから聖女としてあの女がもてはやされてたの』

俺は廃教会に集まった人達を思い出した。
確かに大怪我をおった人よりも、病を抱えていた人達の方が多かった気がした。

『ラグ達が今この世界で出来ることはあるか?』

この疑問に答えたのはラグだ。

『ある程度なら。なんたってヨミは下級神使だからね。少しなら僕たちでもこの世界に干渉できるよ』

ラグの言葉を聞いて俺は

「クリスさん、この病はどこまで広がっているのですか?」

「大陸全土です。北の国から広がり、一気にこの国まで。この国ではまだ死者は出ていないですが、北ではすでに」

他国ではすでに死者が出ているからこの焦りなのか。

「少し出てきます。俺が戻り次第あるものを作ってもらいたいので医師の手配と、作業場の準備。それと人手をお願いします。大丈夫です。すぐ戻っていきます」

俺に何を期待していたのか、出掛けると言うと絶望と不安の顔をしたセドリックさん達に笑顔でお願いすると、急いで近くの森に向かった。
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