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24 神の背中

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それぞれの後継とふれあっている四神聖獣に

「あの、そろそろ戻してもらっていいですか?魅了にかけられた人たちを解放したいので」

俺の言葉にこちらを見た神聖獣達は

「おお、そうであったな。それはこちらでしよう」

「あの者が広めた道具の消滅とそれらに関しての記憶も消さなければいけんしな」

「この際、あの者が存在した記憶ごと消そうかの」

「ああ、その方が手っ取り早いな」

と、神聖獣達だけで話を進めていった。俺は慌てて

「あの!彼女の存在を記憶から消すのはいいのですが、そうすると廃教会に集まった人達の説明が、、」

彼女の存在を記憶から消すことで、魅了された男の妻子や恋人、特に子供にとってのトラウマがなくなると思うのでいいのだが、何の意味もなく廃教会に集まった男達と、妻子や恋人の説明が出来なくなる。

俺の言葉に神聖獣達がまた相談をして、

「その者達はそれぞれの家に送って、眠らせておこう」

悪い夢を見たと思ってもらえればいいね。記憶としては覚えてないだろうけど、心は覚えているだろうな。

妻子や恋人は、相手の男性に不信感を覚えるだろうけど、そこを持ち直せるか、別れるかは男性の今後の行動次第だね。

「我らはいつでも見ている。困ったことがあればいつでもここへ来い」

「ありがとうございます」

そう言うと、俺は廃教会の居住区にいた。

そっと外に出て、周りを確認した。

あれ程、人で溢れていた教会内はガランとしていた。

「イムシの王都もだったけど。廃教会だからか、なんかもの悲しい雰囲気だよね」

廃教会のわりにあまり崩れていないけど、形がしっかりと残っている分、何の気配もない空間は寂しかった。

そんななか、唯一崩れているのは創造神の像だけ。それがより一層、教会内の寂しさを強くしていた。

バッグのポケットにいたジェムが、ラグ達を捕まえ下に降ろすと

「神無き場所はこんなものよ」

「教会は神に一番近い場所だから」

「それでも人の信心があれば、神無き場所でもここまで寂しくはならないはずなの」

瓦礫となっている像の前に、レティ、ジェム、ルルが並び、ラグがレティ達の前に出ると

「人は忘れてるだよ。創造神無き後でも世界が存在しているから。神が居なくても生きていけるって錯覚してる。神聖獣達が頑張っているから、仮主神として別の神が立っているからこの世界は辛うじて存在しているだけなのにね」

俺はこの時初めて、ラグ達が本物の神だと認識した。

今までは神候補と言っていても、やはり見た目に引きずられ、可愛い動物として見ていたのだと。

でも、今のラグ達は確かに神だ。小さい体からは想像も出来ないくらい大きなモノを持っているし、その言葉は重い。

俺は小さなラグ達の背中を、なにも言えずにただ見ていた。

厳かな空気が漂っている中、くぅーとかわいい音がした。

俺は誰からなったのかわからなく、前を向いたまま首をかしげたが、レティ達の視線がラグに集中した。ラグは後ろを振り向き

「ヨミ、お腹空いたぁ」

と、先ほどまでの神々しい姿は幻かと思うほど、気の抜けた言葉が出てきた。俺も知らずに肩に力が入っていたのか、ラグの言葉で力が抜けた。

「ラグ、、はあ。じゃギルドへ戻るか」

といい、俺はラグ達の前まで行きそれぞれをポケットへ入れた。
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