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小話 初日の夜/ラグの初めての×××

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この世界に来て初めての夜。落とされた時がだいたい昼過ぎくらいだったので、真っ直ぐ水があるところに向かって歩き、夕暮れ間近に川辺についた。

まだ明るい内にテントを張り、歩きながら集めた枝に火をつける。

初回特典で色々なものが収納に入っていた。
その中から弁当を取り出し、温冷の二種ある無限ポットから温かい方のお茶を選び、コップに注ぐ。食べる準備が整うと

「いただきます」

と手を合わせてから弁当を食べ始めた。

お腹も満たされ、周りはすっかり夜の闇に包まれている。灯りは収納に入っていたランプの小さな光と焚き火だけ。

空には満点の星と、淡く光っている紅い月。
刷り込まれた知識によれば、この世界の月は虹月と呼ばれている。

字の如く虹、7色の色を持っている。(紅、橙、黄、緑、青、藍、紫)

春は緑 夏は紅 秋は橙 冬は青。

雨は藍 雪は紫 雷(嵐)は黄で、この日の月は半分が季節の色で、半分が天気の色に分かれる。この天気月は雲があっても見ることのできるので、綺麗な半月が見える。そして天気雨の場合は、夜の空に二色の月を見ることができる。

「綺麗だな、、、」

しばらく夜空を見上げていた。どのくらい見ていたのか、遠くの方で何かの遠吠えが聞こえたことで現実に戻り、周りを片付けてからテントへ入り休むことにした。

こうして、俺の最初の1日は終わった。
 

*****

ラグが生まれてすぐ、ラグのお腹がなった。

「ヨミィ~、お腹すいた~」

俺は周りを見て、近くの木の実を取り、それをラグに渡した。

ラグは匂いを嗅いでから口にした。

「うーん。あまり美味しくない。でも、クセになりそう?もう一個ちょうだい」

そう言って、結局5個食べた。ラグが木の実を食べている間にテントをたたみ収納して、周りを片付けていると、突然ラグが苦しみだした。

「痛い、お腹が痛いよ~、ヨミ、たすけて~」

俺は慌ててラグの側に行き、回復魔法をかけた。
しかし、相手は神候補。眷属でも人間の使う魔法は弾いてしまう。

だったらと、回復ポーションをかけるも効果がなかった。

「くそっ!ラグ、大丈夫か?どうすれば良いんだ!」

「いたい、いたいよ~ヨミ~」

俺はラグをそっと手に乗せ、優しくラグのお腹を撫でた。

「ラグ、ラグ。ごめんな、ごめんな」

なんとなしに謝りながらも、ふと目についた食べかけの木の実をなんとなく鑑定してみた。

ーーーー
オーリブの実(完熟)

 ・絞ることで食用油になる
 
 ・生で一つ食べることで微量の毒なら解毒できる。但し、食べすぎには注意!食べすぎれば逆に腹痛をおこす

 ・未熟のものは毒なので食べないでください。
(症状としては、腹痛、嘔吐、痺れ、呼吸困難など)

ーーーー
「・・・・・ラグ、本当ごめん。今までは鑑定しながら食用になりそうな物や薬草なんかを取っていたのに、これだけは鑑定せずに渡してしまった」

俺は反省も込めて、少しでもラグが楽になれるよう、収納から聖水を取り出し飲ませた。

聖水は唯一神にも効く特効薬。パニックになっていたことですっかりその存在を忘れていた。

聖水を飲んだことでラグはすぐに元気になった。

「ふぅ。痛いのなくなったぁ。もう、ヨミ気を付けてよ。でも痛いおもいしたからか、状態異常耐性を習得したよ」

ラグが元気になったのは喜ばしいことだけど、怪我の功名?で耐性ができたのもよかったけど、、あまりのラグの楽天的な性格に俺はなんだか気が抜けてしまった。

「そっか、よかったな。それとごめんな、痛いおもいさせて。これからは気を付けるよ」

そう言って、手の中のラグを撫でた。ラグは擽ったそうに笑いながら、

「じゃ、出発しようー!あっ、」

多分ラグは、今自分がどこにいるのかを失念していたのだろう。突然勢いよく前進しようとして、俺の手から落ちた。

俺もあまりの事にとっさの対応ができなく、ラグは地に落ちた。

そして、なぜか完全防御を習得した。
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