神よ、勝手すぎないか?

チョッキリ

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19 子犬と子猫?

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毛を逆立て、唸り声をあげ威嚇している。しかし、見た目が完全に子犬と子猫。可愛いしかない。今すぐ撫で回したい衝動に駆られたけど、可愛くても相手は魔物。慎重にしなければならない。まずは鑑定して、何の魔物か調べた。

〈サンドウルフの子、亜種。フォレストキャットの子、亜種。状態、かなりひどい怪我をしてる〉

え?なんでこんな所にこの二匹が?サンドウルフは文字通り、砂漠地帯の魔物だし、フォレストキャットも南の森林地帯の魔物だ。しかも二匹とも子供で、亜種。

「皆さん、あの子達はサンドウルフと、フォレストキャットの子供で、しかも亜種です」

亜種。子供と言えどその能力は、普通の成獣と変わらない。緊張が増した。しかし、傷が深いのか二匹共その場に倒れてしまった。それでも、僕達への警戒は解いてない。

「ねぇ、アル君。助けることは出来ない?俺達の回復魔法なら治せるよね」

カスミさんの言うことはわかる。僕だって助けられるなら助けたい。しかし、意志疎通が出来る魔物は知能が高いので会話ができる。しかし、意志疎通の出来ない魔物は、弱らせてテイム状態にしてから、従魔にすれば意志疎通が、会話が出来るようになる。

「あの種族は知能が高いけど、まだ子供。意志疎通が出来るかどうか。でもあの怪我は、ほっとけない」

「ああ。どうにか出来ないかな」

僕達は今、スライムとリスの魔物スロワを従魔にしている。どっちも戦闘向きじゃないから今は影に控えてる。だけど影に入ってても、僕達の状況は見えて、会話も自由にできるので、

「ねえ、ルジャ。ぼくたちが説得するから、出して?」

「あの怪我じゃ動けないから、ある程度距離を取ればルジャも心配ないでしょう?私たちに任せて!」

僕が従魔にしているスライムのイムと、スロワのロワが、話しかけてきた。え?名前のセンスがないって?家族皆にもキャロさんや、カスミさんまでもが残念な子を見る目で見てきましたが何か?
自分でもセンスないなと、思ったけどイム達が気に入ってるからこれで良いのだ!
どうやらカスミさんの従魔も、同じことを言ったらしく、出してもらっていた。イム達も「早く、早く」と急かすので、出してやった。

「イム、ロワ。無茶はするなよ?」

「テイル(スライム)、バズ(スロワ)。お前達もだよ。でも信じてるからな」

皆が見守る中、従魔達が二匹に近づき、ある程度の距離で止まった。そこからイム達が説得を始めた。最初は二匹とも警戒して、まともにイム達の話しを聞いていないかった。
しかし、イム達が一生懸命にはなすことで、イム達に対しては警戒しなくなったが、話を聞かないのは変わらなかった。諦めて、イム達を呼び戻そうとした時、

「そこのにんげんたち。ほんとうにこのけが、なおせる?なおせればおそわない」

「おい!なにかっていってんだ。にんげんなんてしんようできるか!」

僕とカスミさんは互いに頷き、従魔たちの後ろまで歩きだした。キャロさんや騎士たちは慌てて僕達の後に続いた。

「初めまして、僕はアルジャーノン。君たちがこんな所に居るのは悪い人間に捕まったから?だから人間が信用でない?」

「初めまして、俺はカスミ。確かに悪い人間も多いけど、良い人間もいる。俺達が良い人間とは断言出来ないけど、でも怪我をしていて、会話もできる魔物を一方的にどうこうしようとはしないよ。だから、怪我を治させてくれ」

二匹は顔を付き合わせて何か話した後

「けががなおってももうかえるところはない。一度にんげんにつかまったから、むれにはもどれない」

「わたし、もどりたい。でももう、もどれない」

二匹は悲しそうに鳴いた。僕もカスミさんも掛ける言葉が見つからなかった。しかし
「だったら、ルジャとカスミの従魔になれば良いよ。二人だけじゃなくて、二人の回りの人も優しい人もばかりだよ」

「それは良い考えね。私もね、人間に怪我をさせられたけど、ルジャに助けられて、怪我を治してもらったの」

イムの提案にロワが乗っかり

「ぼくも、ぼくの場合はじぶんのドジで怪我したけど、カスミが治してくれたんだ!回りの人も色々ぼくに美味しいものくれるし」

「ボクも、カスミやルジャ。みんなすき。」

ロワよりバズが一回り大きくなったかなと思ったけど、雄と雌だから体格に違いが出たのかと思ったけど、ただバズは太っただけのようだ。カスミさんがダイエットをさせようと小さい声で言っていたため、バズには聞こえていなかったようだ。がんばれ、バズ!負けるな、バズ!

二匹は困惑していたけど、イム達が本当に楽しそうに話すので、怪我を治してくれたら従魔になると言ってくれた。僕もカスミさんもすぐさま二匹のそばに行き、回復魔法をかけた。
その間、キャロさんが騎士の一人に指示を出し、指示された騎士はどこかに駆け出していった。

「えーと、僕か彼。君達はどっちの従魔になる?」

二匹は、僕達を見比べてそして

「けがをなおしてくれたきみにする」

「わたしもあなたにする」

サンドウルフはカスミさんを、フォレストキャットはボクを選んでくれた。

「じゃ、契約するね」

そう言って、僕とカスミさんは互いに距離を開け、それぞれの子前に立ち、

「君の名は、オルグ。俺はカスミだ。よろしくな」

なんで、そう言うカッコいい名前、考え付くのかぁ?うー、単調だけど大丈夫かなぁ?

「君の名は、フォレ。僕はアルジャーノンです、よろしくね」

フォレの目が残念な目になってる。

「そんな目しないでよ。紐付けて付けないと、折角の名前、ボク自身が忘れちゃいそうなんだ。ごめんね?」

しかなかいわねと、言うようにため息をつかれた。
まじ、ごめんよ。

「ボクは、オルグ。ありがとう、カスミ」

「わたしは、フォレ。わたしもルジャとよんでも?」

「もちろん。ルジャは従魔になった子達限定の呼び名だからね」

僕もカスミさんも念願のもふもふに撫でる手が止まらない。ロワやバズは小さすぎて思いっきりは撫でやれないからね。

「さぁ、お二方。そろそろ戻りますよ。フォレやオルグだけが捕まってた訳じゃないでしょうから、旦那様やもしかしたら、大旦那方にも協力してもらっての大捕物になるでしょう」

僕達は急いで邸に戻り、先に戻ってきていた騎士に報告を聞いていた父様は、別件で丁度来ていたお祖父様と一緒に準備をして待っていた。

フォレ達が覚えている情報を元に、僕の探索蝶を使って違法商人のアジトを見つけ一網打尽にして、捕まっていた魔物も、僕達の従魔の説得で誰も襲うことなく大人しく父様達に従い、転移陣でそれぞれの場所に帰って行った。
フォレ達みたいにもう群れに戻れなくなった子達は僕とカスミさんとで契約した。
なんか一気に従魔、増えたな。でも、もふもふは正義です。
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