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7 出来ちゃった?

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集中するために、目を閉じ、体の中を這っているアルファさんの魔力を感じて、それをおへその辺りに集めるように意識する。
おへその辺りに集まったかなと思ったら、次はそれを右側から腕、指先、脇を通って足、足先、股を通って左側の足、足先、脇を通って腕、指先から頭の天辺を通り、また右側へ。
おへその辺りを中心に、ゆっくりと動いているように思い描きながら、魔力を循環させていく。
それでも、思ったよりも上手くいかなく、無意識にアルファ様の手を離し、その手をお腹に持っていった。ちぃ兄様の方の手も離そうとしたが、ちぃ兄様が離さなかった。
手をお腹に当ててることで、かなり意識しやすくなり、さっきより魔力が上手く流れるようになった。
繋いでる手で、僕の魔力の動きを確認していたちぃ兄様と、ちぃ兄様と手を繋いぎ、間接的に僕の魔力の動きと、ちぃ兄様の魔法の補助をしていたアルファ様が揃って物凄く驚いていた。
魔力を動かすだけでもかなり疲れて、アルファさんが休憩を促した。
休憩中に言われたのだが、僕の魔力循環の方法は、普通のやり方とは違っていたし、本来は、一週間かけて魔力を体に慣れさせてから、動かせるようになるとの事。
だから、僕がいきなり魔力循環を成功させて、物凄く驚いたらしい。
でもアルファさん?動かしてって言ったよね?
ちぃ兄様も、出来るって言ってたよね?
ジト目で二人を見ると、逸らされた。
つまり、本来は出来ないことをやれと言ったのだ。
ジーと二人を見ていると、

「あー、まー、なんと言うか、その、ごめん」

「私もすみませんでした。言い訳させてもらえるのなら、出来なくても動かそうとする事で、魔力が体に馴染みやすくなるため、そう言ったのです」

二人揃ってシュンとしながら謝ってくれ、アルファさんに至っては、説明もしてくれた。
合理的な理由があり、なおかつ謝られては、いつまでも拗ねてるわけにはいかず、二人の謝罪を受け入れた。
しかし、ここでチャチャを入れる人物がいた。

「さすが、やる時はやる坊っちゃまです。普段のお姿からは、その優秀さは感じられませんね」

僕達より少し後に、姉様達も休憩しに、訓練場に設置されてるスペースに訪れ、僕が魔力循環を早々に習得した話をして、アルファ様とちぃ兄様の謝罪の理由を話しているときに、ニコニコと、なんなら拍手までして、キャロさんがそれぞれの侍従や侍女達と一緒に飲み物を運びなから、言ってきた。
思うんだけど、僕的には別にいいんだよ?
でも、侍従のとして主人にこの態度って正しいの?兄様やちぃ兄様の侍従のアーケルさんとミロさんの兄様達に対する態度とかなり違うような気が・・
キャロさんの態度にモヤモヤしたが、別に実害が有るわけじゃないし、余り畏まれるのも好きじゃないので、まぁいいっかと、納得した。
納得はしたが、さずかにこれはいただけない!
その証拠に、ちぃ兄様も姉様も、アルファさん達やアーケルさん達も眉をひそめ、キャロさんを見ていた。
しかし、そんな皆の視線にも構わず、飲み物を準備して渡してきた。

「キャロさん、僕はかまわないのですが、さすがに人目のある所では、その態度はいけないと思いますよ?キャロさんは、僕の教育係でもあるんですから、気を付けないと」

キャロさんチェックにちなんで、アルチェックとでも言おう。
キャロさんに、めっ!と注意すると、すかさず

「失礼しました、アルジャーノン様。皆様も不快な思いをさせて、申し訳ありませんでした」


「キャロ、いくらアルが許してるからと言っても、さすがに目に余る態度だ。今回は、アルに免じて見逃すが、次回は無いからな」

「はい。ありがとうございます。肝に命じます」

僕としては、軽い感じで注意したけど、ちぃ兄様達は思ったよりもオコだったらしい。
その後、もう少し魔力循環を練習して、今日の授業は終わった。
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