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KOINOHAJIMARI -恋の始まりー
第3話
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どういう関係?そう聞けばよかったのに、始まりが始まりだけに私は何度となくその言葉を飲み込んでしまう。
それでも誠真は一緒にいるときはとても優しくて、蕩けるような微笑みをくれる。
でも、決して私を美術学部の人たちや友人に紹介をすることも、自分の家族の話をすることもなった。
「やっぱり遊びかな……」
ランチをしながらつぶやくように言った私の言葉に、親友の紗耶は大きなため息を付いた。
「まさか咲良がそんなことになるとはね」
「だって……」
いい訳をしようとした私に、追い打ちを掛けるように沙耶は言葉を重ねた。
「だってじゃない。どうしてそこでキスの理由聞かないのよ。あんなにモテる先輩よ?きちんと遊びは嫌って言わないと」
沙耶の言葉はもっともすぎて、私はぐうの音もでない。私だって何度となく聞こうと思った。でも、なぜか誠真の纏う雰囲気が私にそれをさせないでいた。
いつの間にか、木枯らしが吹きすさぶ季節になっていた。
ぼんやりと温かい私の部屋で、二人で並んで座っていると肩に重みを感じた。
「眠い?」
「ああ、ちょっと疲れてる」
ほとんど瞳が閉じている誠真は、めずらしくガードが緩んでいるように見えた。
「ねえ? 誠真って就職活動している感じしなかったけど、院に残るの?」
平静を装って、聞きたかったことを口にする。
そんなことも知らないなんて友人以下だよね。自虐的なことを思いながら、私はドキドキしながら誠真の言葉を待った。
「……知らなくてもいい」
サラリと言われ心をナイフでえぐられたような気持ちになる。
「どうして知らなくていいの?」
声が震えなかっただろうか?今のショックを受けている自分を知られたくなくて、私はなんとか言葉を発した。
「咲良、今日はどうしたんだよ?」
そっと私に微笑みごまかすようにキスをされて、私はドンと誠真の胸を押した。
「私だったらなんでも許されるとでも思ってるの?」
今のキスで何かが壊れたような気がした。私は誠真が好きだったから、好きだからこそ一緒にいられるだけでいいと思っていたが限界だった。
誠真は卒業したらこの大学からいなくなる。
「帰って」
「咲良?」
誠真は意味が解らないと言った様子で、まだ私の機嫌をとるように触れてくる。
「さわらないで!」
ポロポロと涙が零れ落ちる。とうとう我慢していた雫がとめどなく溢れた。
「咲良……」
初めて見る、驚いたような、悲しみのよう、複雑な誠真の表情が目に映る。
どうしてそっちがそんな顔をするのよ。
そうは思うも、これ以上一緒にいても辛くなるだけだ。
その日から、卒業まで私は誠真と話すことは一度もなかった。
誠真が卒業してから、風の噂でアメリカへいったことを知った。
大企業の跡取りとか、私をやっかみから守りたかったんだよ、とかそんな慰めの言葉などを聞いても何も変わらない。
誠真はもういない。
私の淡い淡い恋心はこうして、終わりを迎えた。
それでも誠真は一緒にいるときはとても優しくて、蕩けるような微笑みをくれる。
でも、決して私を美術学部の人たちや友人に紹介をすることも、自分の家族の話をすることもなった。
「やっぱり遊びかな……」
ランチをしながらつぶやくように言った私の言葉に、親友の紗耶は大きなため息を付いた。
「まさか咲良がそんなことになるとはね」
「だって……」
いい訳をしようとした私に、追い打ちを掛けるように沙耶は言葉を重ねた。
「だってじゃない。どうしてそこでキスの理由聞かないのよ。あんなにモテる先輩よ?きちんと遊びは嫌って言わないと」
沙耶の言葉はもっともすぎて、私はぐうの音もでない。私だって何度となく聞こうと思った。でも、なぜか誠真の纏う雰囲気が私にそれをさせないでいた。
いつの間にか、木枯らしが吹きすさぶ季節になっていた。
ぼんやりと温かい私の部屋で、二人で並んで座っていると肩に重みを感じた。
「眠い?」
「ああ、ちょっと疲れてる」
ほとんど瞳が閉じている誠真は、めずらしくガードが緩んでいるように見えた。
「ねえ? 誠真って就職活動している感じしなかったけど、院に残るの?」
平静を装って、聞きたかったことを口にする。
そんなことも知らないなんて友人以下だよね。自虐的なことを思いながら、私はドキドキしながら誠真の言葉を待った。
「……知らなくてもいい」
サラリと言われ心をナイフでえぐられたような気持ちになる。
「どうして知らなくていいの?」
声が震えなかっただろうか?今のショックを受けている自分を知られたくなくて、私はなんとか言葉を発した。
「咲良、今日はどうしたんだよ?」
そっと私に微笑みごまかすようにキスをされて、私はドンと誠真の胸を押した。
「私だったらなんでも許されるとでも思ってるの?」
今のキスで何かが壊れたような気がした。私は誠真が好きだったから、好きだからこそ一緒にいられるだけでいいと思っていたが限界だった。
誠真は卒業したらこの大学からいなくなる。
「帰って」
「咲良?」
誠真は意味が解らないと言った様子で、まだ私の機嫌をとるように触れてくる。
「さわらないで!」
ポロポロと涙が零れ落ちる。とうとう我慢していた雫がとめどなく溢れた。
「咲良……」
初めて見る、驚いたような、悲しみのよう、複雑な誠真の表情が目に映る。
どうしてそっちがそんな顔をするのよ。
そうは思うも、これ以上一緒にいても辛くなるだけだ。
その日から、卒業まで私は誠真と話すことは一度もなかった。
誠真が卒業してから、風の噂でアメリカへいったことを知った。
大企業の跡取りとか、私をやっかみから守りたかったんだよ、とかそんな慰めの言葉などを聞いても何も変わらない。
誠真はもういない。
私の淡い淡い恋心はこうして、終わりを迎えた。
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