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KOINOHAJIMARI -恋の始まりー
第2話
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「しばらくここの部屋でやるから」
そこは小さめの教室ぐらいの部屋で、映像制作部部屋なのだろう、パソコンやキーボードをはじめ機材が並んでいた。
「わかりました」
未だにこの現実が信じられない気持ちのまま、周りを見渡していた私は視線を感じた。
「改めまして、長谷川誠真。今回咲良と一緒にやることになったから」
いきなりの呼び捨てに私はポカンとしてしまう。
「音楽のお嬢さんに呼び捨てとかダメか悪い」
大して悪びれていないように聞こえて私は啞然としつつも、ムッとして言葉を返す。
「そのお嬢さんってやめてください! どうせ私は地味ですよ」
その言葉に今度は長谷川先輩が、表情を歪めたのがわかった。
「地味だなんていってないだろ?仮にも俺の相手に選ばれたんだからその言い方はやめろ」
真剣な表情で言われ、今までの少し軽薄そうな印象がなくなり私はビクリとした。
「すみません。あと咲良で大丈夫です。朝倉咲良、音楽部作曲科専攻の3年です」
ぺこりと頭を下げた私に、長谷川先輩のまた柔らかい声が響く。
「じゃあ、改めまして咲良。よろしく」
それが私と先輩との出会い。
それから作業をするにつれ、先輩は見かけによらずと言ってはいけないが、作品に関しては一切の妥協がなく、私に対して意見を投げてくる。
最初はそれに押され気味だった私だったが、本来それほどおしとやかにピアノを弾いているタイプではない。
常に弟2人の姉として、どなってばかりだった。
「だから、そこは絶対こっち!」
初めて1カ月が過ぎたころには、敬語などなくなり私と先輩は睨みあっていた。
「いや、絶対にこっちの方が映像が生きる」
何度となくそんなぶつかり合いをする。
「はあ、咲良いったん休憩」
そういう先輩に私も大きく息を吐くと、机に頭を埋めた。
「どうした?咲良」
そんな私に心配そうな声が降ってきて、私は慌てて顔を上げた。
「違うの、こんなに充実して何かに向き合えたのが初めてで、すごく楽しい」
それだけを言うと、恥ずかしくなって私は真っ赤な太陽が沈んでいく西の空を見た。
「ねえ、きれいな赤……」
その言葉は最後まで言うことなく、音もなく消えた。
それが温かく触れた長谷川先輩の唇のせいだと分かったのは、2.3秒後だった。
「咲良、誠真って呼べよ」
まだ唇が触れてしまいそうな距離で言われたその言葉に、私は目を見開く。
「咲良」
甘く、甘く、私の名前を呼ぶあなたは、何を考えているの?
西日のせいか、アーモンド色のきれいな瞳が赤く光る。
それがあまりにも幻想的で、目が離せなくて、その瞳に吸い込まれるのが怖くなり、私は瞳を閉じた。
その瞬間、そっとキスが降る。
製作は無事に完成して、かなりの評価をもらえて、この件に参加できて本当に良かったと思った。
そして、あの時だけの関係だと思っていたが、誠真は気が向くと私の家に来るようになった。いつのまにか一緒にいる時間が増えていった。
そこは小さめの教室ぐらいの部屋で、映像制作部部屋なのだろう、パソコンやキーボードをはじめ機材が並んでいた。
「わかりました」
未だにこの現実が信じられない気持ちのまま、周りを見渡していた私は視線を感じた。
「改めまして、長谷川誠真。今回咲良と一緒にやることになったから」
いきなりの呼び捨てに私はポカンとしてしまう。
「音楽のお嬢さんに呼び捨てとかダメか悪い」
大して悪びれていないように聞こえて私は啞然としつつも、ムッとして言葉を返す。
「そのお嬢さんってやめてください! どうせ私は地味ですよ」
その言葉に今度は長谷川先輩が、表情を歪めたのがわかった。
「地味だなんていってないだろ?仮にも俺の相手に選ばれたんだからその言い方はやめろ」
真剣な表情で言われ、今までの少し軽薄そうな印象がなくなり私はビクリとした。
「すみません。あと咲良で大丈夫です。朝倉咲良、音楽部作曲科専攻の3年です」
ぺこりと頭を下げた私に、長谷川先輩のまた柔らかい声が響く。
「じゃあ、改めまして咲良。よろしく」
それが私と先輩との出会い。
それから作業をするにつれ、先輩は見かけによらずと言ってはいけないが、作品に関しては一切の妥協がなく、私に対して意見を投げてくる。
最初はそれに押され気味だった私だったが、本来それほどおしとやかにピアノを弾いているタイプではない。
常に弟2人の姉として、どなってばかりだった。
「だから、そこは絶対こっち!」
初めて1カ月が過ぎたころには、敬語などなくなり私と先輩は睨みあっていた。
「いや、絶対にこっちの方が映像が生きる」
何度となくそんなぶつかり合いをする。
「はあ、咲良いったん休憩」
そういう先輩に私も大きく息を吐くと、机に頭を埋めた。
「どうした?咲良」
そんな私に心配そうな声が降ってきて、私は慌てて顔を上げた。
「違うの、こんなに充実して何かに向き合えたのが初めてで、すごく楽しい」
それだけを言うと、恥ずかしくなって私は真っ赤な太陽が沈んでいく西の空を見た。
「ねえ、きれいな赤……」
その言葉は最後まで言うことなく、音もなく消えた。
それが温かく触れた長谷川先輩の唇のせいだと分かったのは、2.3秒後だった。
「咲良、誠真って呼べよ」
まだ唇が触れてしまいそうな距離で言われたその言葉に、私は目を見開く。
「咲良」
甘く、甘く、私の名前を呼ぶあなたは、何を考えているの?
西日のせいか、アーモンド色のきれいな瞳が赤く光る。
それがあまりにも幻想的で、目が離せなくて、その瞳に吸い込まれるのが怖くなり、私は瞳を閉じた。
その瞬間、そっとキスが降る。
製作は無事に完成して、かなりの評価をもらえて、この件に参加できて本当に良かったと思った。
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