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同期以上になれましたか?
第3話
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「ちょっと!涼真!」
クリスマスのイルミネーションが、少しずつ夕闇とともに灯りだした街を、なぜか手をつないで歩くことになってしまた私は、耐え切れず少し前を歩く涼真に声をかけた。
とくに返事をすることなく、涼真は真っすぐに歩いていた。
「ねえ、涼真!!待って!」
私は無理やり足を止めると、涼真の手を振り切った。
そんな私に、涼真はため息をつくと、くるりと私を見た。
「なんで?」
低い声とともに、確実に怒っている涼真の瞳に、私は泣きたくなった。
「なにが?」
それでも何とか言葉を返すと、涼真はきれいに整えられていた髪をクシャっとして、少し悲し気な表情をした。
「どうして今日の事、連絡しなかった?それにずっと無視してただろ?」
涼真の言葉に、私は悪いことをしたことは解っていたが、どうしても気持ちがついていかなくて黙り込んだ。
そしてさらに悪いことには、ここは海沿いの道で、クリスマスという事もあり幸せなカップルばかりだ。
ただでさえ目立つ涼真と、結婚式帰りの着飾った女のにらみ合いに、私たちをどうぞ見てくださいと言っている様なものだった。
何かを言わなければと思うものの、何を話したいのかもわからない。
こんなことになるまでは、私の気持ちはただシンプルだった。
ずっと一緒にいたい
それだけだった。
一緒にいる為に気持ちを封印して、同期の関係を続けてきた。
しかし、その関係が上手く行かなくなったからといって、いきなり甘えたり、「好きなの」とか言えるわけない。
今のこの気持ちを、どうやって涼真に伝えられるというのだろう。
私はもうこの場から逃げたくなって、とりあえず今日のお礼だけを伝えると、くるりと踵を返した。
「ちな!待て!」
涼真は全く納得がいかないだろう、私の腕をグイット後ろから引き寄せた。
結婚式の薄いドレスにコートを着ただけだった私は、この寒空の下長く外にいることで、冷え切っていたが、急に温かさに包まれ私は呆然とその場に立ち尽くした。
ようやく抱きしめられたことが分かり、ドサッとカバンが下に落ちたが拾う事もできない。
「ちな、ごめん。もう無理」
静かに聞こえてきた、耳元で聞こえる低い声に、ビクッと体が震える。
「俺はもう、ちなと一緒にいて何もしないとか無理だから」
周りがざわざわとしているはずだか、涼真の声しか聞こえなくなる。
「な……に?それ……」
なんとかそれだけを言葉にすると、涼真は静かに言葉を続けた。
「もう、ちなと同期じゃない関係になりたい」
じゃあどうしたいというのだろう?
訳が分からず、私は涙が溢れそうになるのを必死で堪える。
「訳がわかんないよ……」
そう呟いた私に、涼真は大きく息を吐いた。
「だよな。本当に俺ってちなの前だとどうにもならないんだよな……」
独り言のように涼真は言うと、そっと抱きしめていた腕を緩め私を見た。
「ちな、ずっとちなが好きだよ。きちんと俺と付き合って」
「え?」
何を言われたかわからず、私はぼんやりときれいな涼真の顔を見つめた。
きちんとって?
ニセ彼はおしまいって事?
「ちなにとって、俺は同期以上にはなれない?」
「そんなことない!」
とっさに無意識に口からでた言葉に、自分でも驚いて口を押えた。
「じゃあ俺の事好き?」
少し不安そうな涼真の瞳に私がうつっていた。
涼真が私の事をすき?
そんな事がある?
「ちな?」
信じられず何も答えられない私に、涼真がもう一度私の名前を呼ぶ。
ここでまた素直にならないと、一生後悔しそうな気がして、私は小さく頷いた。
でも、それと同時に変わってしまう関係に不安がよぎる。
他の女の子達と同様に、軽い気持ちで私にもいっているかもしれない。
「あー、よかった」
そう言ってもう一度涼真が私を抱きしめると、まわりから「おめでとう」「やるじゃん」などの声が聞こえてきた。
ここが往来の場所だと思い出して、私は慌てて涼真から離れようと涼真の胸を押した。
「ちな?」
そんな私に、少し怪訝な表情で涼真は声をかける。
「涼真、ここ人が多いよ……」
そう言った私に涼真は小さく頷くと、手をとって歩き出した。
「ちなとさ、会えるかわからなかったから飯を食べるにも今日はクリスマスでいっぱいだろうし……うちでもいい?」
その言葉に、私はピタっと足を止めた。
私なんかの体を目当てにするわけないけど、やっぱり遊ばれるの?
そんな不安がよぎる。
「ちな、初めに思ってること言って?なんでも答えるから」
私の手を取って、駅の隅にいくと涼真は真剣な瞳を私に向けた。
「私の事も、やっぱりすこしの間の彼女なのかな……って」
小さく言った私の言葉に、涼真は「はあ?」と声を上げた。
「だって、だって涼真いつも女の子いっぱいいたじゃない!私なんてただの同期だし、いつも他の女の子ともこうやって出かけてたし……すぐに家に連れて行くのって……」
泣きそうになりながら言った私に、涼真はなぜか悲しそうな表情をすると、何も言わず私の手を引いて改札をくぐった。
「涼真?」
問いかけにも答えてくれそうにもない涼真を、私はチラリと見上げた。
真顔で外だけを見つめる涼真は、少し怖いような気がして私はキュッと唇を結んだ。
そんな私に、ハッとしたように涼真はキュッと私の手を握りしめた。
クリスマスのイルミネーションが、少しずつ夕闇とともに灯りだした街を、なぜか手をつないで歩くことになってしまた私は、耐え切れず少し前を歩く涼真に声をかけた。
とくに返事をすることなく、涼真は真っすぐに歩いていた。
「ねえ、涼真!!待って!」
私は無理やり足を止めると、涼真の手を振り切った。
そんな私に、涼真はため息をつくと、くるりと私を見た。
「なんで?」
低い声とともに、確実に怒っている涼真の瞳に、私は泣きたくなった。
「なにが?」
それでも何とか言葉を返すと、涼真はきれいに整えられていた髪をクシャっとして、少し悲し気な表情をした。
「どうして今日の事、連絡しなかった?それにずっと無視してただろ?」
涼真の言葉に、私は悪いことをしたことは解っていたが、どうしても気持ちがついていかなくて黙り込んだ。
そしてさらに悪いことには、ここは海沿いの道で、クリスマスという事もあり幸せなカップルばかりだ。
ただでさえ目立つ涼真と、結婚式帰りの着飾った女のにらみ合いに、私たちをどうぞ見てくださいと言っている様なものだった。
何かを言わなければと思うものの、何を話したいのかもわからない。
こんなことになるまでは、私の気持ちはただシンプルだった。
ずっと一緒にいたい
それだけだった。
一緒にいる為に気持ちを封印して、同期の関係を続けてきた。
しかし、その関係が上手く行かなくなったからといって、いきなり甘えたり、「好きなの」とか言えるわけない。
今のこの気持ちを、どうやって涼真に伝えられるというのだろう。
私はもうこの場から逃げたくなって、とりあえず今日のお礼だけを伝えると、くるりと踵を返した。
「ちな!待て!」
涼真は全く納得がいかないだろう、私の腕をグイット後ろから引き寄せた。
結婚式の薄いドレスにコートを着ただけだった私は、この寒空の下長く外にいることで、冷え切っていたが、急に温かさに包まれ私は呆然とその場に立ち尽くした。
ようやく抱きしめられたことが分かり、ドサッとカバンが下に落ちたが拾う事もできない。
「ちな、ごめん。もう無理」
静かに聞こえてきた、耳元で聞こえる低い声に、ビクッと体が震える。
「俺はもう、ちなと一緒にいて何もしないとか無理だから」
周りがざわざわとしているはずだか、涼真の声しか聞こえなくなる。
「な……に?それ……」
なんとかそれだけを言葉にすると、涼真は静かに言葉を続けた。
「もう、ちなと同期じゃない関係になりたい」
じゃあどうしたいというのだろう?
訳が分からず、私は涙が溢れそうになるのを必死で堪える。
「訳がわかんないよ……」
そう呟いた私に、涼真は大きく息を吐いた。
「だよな。本当に俺ってちなの前だとどうにもならないんだよな……」
独り言のように涼真は言うと、そっと抱きしめていた腕を緩め私を見た。
「ちな、ずっとちなが好きだよ。きちんと俺と付き合って」
「え?」
何を言われたかわからず、私はぼんやりときれいな涼真の顔を見つめた。
きちんとって?
ニセ彼はおしまいって事?
「ちなにとって、俺は同期以上にはなれない?」
「そんなことない!」
とっさに無意識に口からでた言葉に、自分でも驚いて口を押えた。
「じゃあ俺の事好き?」
少し不安そうな涼真の瞳に私がうつっていた。
涼真が私の事をすき?
そんな事がある?
「ちな?」
信じられず何も答えられない私に、涼真がもう一度私の名前を呼ぶ。
ここでまた素直にならないと、一生後悔しそうな気がして、私は小さく頷いた。
でも、それと同時に変わってしまう関係に不安がよぎる。
他の女の子達と同様に、軽い気持ちで私にもいっているかもしれない。
「あー、よかった」
そう言ってもう一度涼真が私を抱きしめると、まわりから「おめでとう」「やるじゃん」などの声が聞こえてきた。
ここが往来の場所だと思い出して、私は慌てて涼真から離れようと涼真の胸を押した。
「ちな?」
そんな私に、少し怪訝な表情で涼真は声をかける。
「涼真、ここ人が多いよ……」
そう言った私に涼真は小さく頷くと、手をとって歩き出した。
「ちなとさ、会えるかわからなかったから飯を食べるにも今日はクリスマスでいっぱいだろうし……うちでもいい?」
その言葉に、私はピタっと足を止めた。
私なんかの体を目当てにするわけないけど、やっぱり遊ばれるの?
そんな不安がよぎる。
「ちな、初めに思ってること言って?なんでも答えるから」
私の手を取って、駅の隅にいくと涼真は真剣な瞳を私に向けた。
「私の事も、やっぱりすこしの間の彼女なのかな……って」
小さく言った私の言葉に、涼真は「はあ?」と声を上げた。
「だって、だって涼真いつも女の子いっぱいいたじゃない!私なんてただの同期だし、いつも他の女の子ともこうやって出かけてたし……すぐに家に連れて行くのって……」
泣きそうになりながら言った私に、涼真はなぜか悲しそうな表情をすると、何も言わず私の手を引いて改札をくぐった。
「涼真?」
問いかけにも答えてくれそうにもない涼真を、私はチラリと見上げた。
真顔で外だけを見つめる涼真は、少し怖いような気がして私はキュッと唇を結んだ。
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