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同期ってなんですか?
第2話
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気まずくなりたくなかったから、告白をしてこなかったはずなのに、あの日以来どうしても、涼真を意識しすぎてしまっている自分がいた。
視線があえば、意地になって涼真より先に視線を外すようになってしまったし、以前のように気軽に飲みに行ったり、声を掛けれなくなっていた。
「ちな、昼?」
「うん」
社内で会えば、これぐらいの会話はするものの、自然な振る舞いができないまま日にちだけが過ぎていった。
「千夏、なにかあったの?」
さすがに美耶子がみても、私たちの空気に何かあったことがわかるようで、涼真が見えなくなったところで、私の顔を見た。
「うん……なんか……」
でもキスを意識してるとか、涼真が冷たいとか、うまく言葉がみつからなくて、言葉を濁した。
そんな私をみて、美耶子は小さくため息をつくと私をみた。
「ねえ、千夏。気まずくなりたくないから告白をしないって言ってたけど、告白してないのに、こんな風になってるなら、もう言っちゃったほうがすっきりするんじゃない?」
もちろん美耶子の言う通りかもしれない。
このままいつも通りに戻れないのなら、いっそのこと玉砕でもして次に行った方がいいのかもしれない。
そんな事を思うが、今の私にはこんな状況なのに、涼真を呼び出して告白をするなんてハードルの高い事を、できるわけもなかった。
「りょう……」
何度か声を掛けようとしたとき、いつも涼真に違う子が先に声をかけてしまう。
今も、涼真が振り返ってくれたのに、すぐ横から秘書課の人が声をかけてしまい、私は小さくため息をついた。
くるりと振り返ったところで、後ろから「ちな!」と呼ぶ声が聞こえて私は振り返った。
まだ女の子に腕を取られ、話しかけられている涼真に苛立ちがつのる。
「なんだった?ちな」
もう一度そう聞かれ、私はどんな顔をしているのか自分でもわからなかった。
「なんでもない」
それだけを何とかいうと、私はすぐにその場を離れた。
「ちな!」
後ろから聞こえる声も完全に無視をする。
いやだ。
嫉妬じゃない……。
でも……キスしたくせに……。
キスの意味も聞かずに、なかったことにしたのも自分なのに、涼真の態度にイラつく権利もないような気もしたが、それでもやっぱり涼真に腹が立つ。
自分自身で処理できない思いを、なんとか飲み込むと私は涙がにじみそうになるのをなんとか我慢した。
涼真のバカ……。
「ちな?何を怒ってるんだよ!」
「別に怒ってない」
仕事を終え、足早に会社を出たところを、後ろから聞こえた涼真の声に、チラリと視線を向けてすぐに歩き出した。
「怒ってるだろ?」
少し怖い顔の涼真にを私はなぜかチラリと睨みつけてしまい、私は小さくため息をついて足をとめた。
「別に本当に怒ってないから」
今度は冷静に言えたと思うが、涼真は納得のいかないような顔をして私を見た。
「嘘つけ!それが怒っていないっていう態度かよ」
涼真のすこし苛立ちにも似た様子に、私はキュッと唇を噛み締めた。
自分でもわからない気持ちを、涼真に言えるわけもない。
「ごめん。怒ってない」
静かに言った私に、涼真も少しだけ表情を緩めたような気がした。
涼真が何に対して怒っていると思っているのかわからないが、あのキスのことは涼真も言ってこない。
だから私も口にだすことはできなかった。
もしくは、すでに涼真の中で忘れるぐらいの事なのかもしれない。
「じゃあ、飯に行こう?」
その言葉に、私は心中穏やかではないが、怒っていないと言ってしまった手前、断ることもできず小さく頷いた。
涼真の大学の時の先輩が経営しているというbarになぜか連れてこられて、私は目の前の涼真の先輩に頭を下げた。
「こんばんわ。加瀬といいます」
目の前の加瀬さんという、この人は涼真とは違い、男っぽくいかにも夜が似合う大人の男性という感じだった。
10席ほどのカウンターと、テーブル席がいくつかある店内は、ほとんど埋まっており、みんなお酒を楽しんでいるようだった。
カウンターに並んで座ると、私は小さく息を吐いた。
「何飲む?それよりお前はメシだな」
一人で納得したようにいうと、涼真は加瀬さんをみた。
視線があえば、意地になって涼真より先に視線を外すようになってしまったし、以前のように気軽に飲みに行ったり、声を掛けれなくなっていた。
「ちな、昼?」
「うん」
社内で会えば、これぐらいの会話はするものの、自然な振る舞いができないまま日にちだけが過ぎていった。
「千夏、なにかあったの?」
さすがに美耶子がみても、私たちの空気に何かあったことがわかるようで、涼真が見えなくなったところで、私の顔を見た。
「うん……なんか……」
でもキスを意識してるとか、涼真が冷たいとか、うまく言葉がみつからなくて、言葉を濁した。
そんな私をみて、美耶子は小さくため息をつくと私をみた。
「ねえ、千夏。気まずくなりたくないから告白をしないって言ってたけど、告白してないのに、こんな風になってるなら、もう言っちゃったほうがすっきりするんじゃない?」
もちろん美耶子の言う通りかもしれない。
このままいつも通りに戻れないのなら、いっそのこと玉砕でもして次に行った方がいいのかもしれない。
そんな事を思うが、今の私にはこんな状況なのに、涼真を呼び出して告白をするなんてハードルの高い事を、できるわけもなかった。
「りょう……」
何度か声を掛けようとしたとき、いつも涼真に違う子が先に声をかけてしまう。
今も、涼真が振り返ってくれたのに、すぐ横から秘書課の人が声をかけてしまい、私は小さくため息をついた。
くるりと振り返ったところで、後ろから「ちな!」と呼ぶ声が聞こえて私は振り返った。
まだ女の子に腕を取られ、話しかけられている涼真に苛立ちがつのる。
「なんだった?ちな」
もう一度そう聞かれ、私はどんな顔をしているのか自分でもわからなかった。
「なんでもない」
それだけを何とかいうと、私はすぐにその場を離れた。
「ちな!」
後ろから聞こえる声も完全に無視をする。
いやだ。
嫉妬じゃない……。
でも……キスしたくせに……。
キスの意味も聞かずに、なかったことにしたのも自分なのに、涼真の態度にイラつく権利もないような気もしたが、それでもやっぱり涼真に腹が立つ。
自分自身で処理できない思いを、なんとか飲み込むと私は涙がにじみそうになるのをなんとか我慢した。
涼真のバカ……。
「ちな?何を怒ってるんだよ!」
「別に怒ってない」
仕事を終え、足早に会社を出たところを、後ろから聞こえた涼真の声に、チラリと視線を向けてすぐに歩き出した。
「怒ってるだろ?」
少し怖い顔の涼真にを私はなぜかチラリと睨みつけてしまい、私は小さくため息をついて足をとめた。
「別に本当に怒ってないから」
今度は冷静に言えたと思うが、涼真は納得のいかないような顔をして私を見た。
「嘘つけ!それが怒っていないっていう態度かよ」
涼真のすこし苛立ちにも似た様子に、私はキュッと唇を噛み締めた。
自分でもわからない気持ちを、涼真に言えるわけもない。
「ごめん。怒ってない」
静かに言った私に、涼真も少しだけ表情を緩めたような気がした。
涼真が何に対して怒っていると思っているのかわからないが、あのキスのことは涼真も言ってこない。
だから私も口にだすことはできなかった。
もしくは、すでに涼真の中で忘れるぐらいの事なのかもしれない。
「じゃあ、飯に行こう?」
その言葉に、私は心中穏やかではないが、怒っていないと言ってしまった手前、断ることもできず小さく頷いた。
涼真の大学の時の先輩が経営しているというbarになぜか連れてこられて、私は目の前の涼真の先輩に頭を下げた。
「こんばんわ。加瀬といいます」
目の前の加瀬さんという、この人は涼真とは違い、男っぽくいかにも夜が似合う大人の男性という感じだった。
10席ほどのカウンターと、テーブル席がいくつかある店内は、ほとんど埋まっており、みんなお酒を楽しんでいるようだった。
カウンターに並んで座ると、私は小さく息を吐いた。
「何飲む?それよりお前はメシだな」
一人で納得したようにいうと、涼真は加瀬さんをみた。
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