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同期以上恋人未満
第3話
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一度着替えに戻りたいという私に、涼真はしぶしぶ納得して、私は一度家に戻ってきた。
約束の時間はお昼の12時。
1時間と少しの時間で準備をしなければならないのに、私は一人ソファーに座り込んだ。
これ以上踏み込むのは怖い。
今までと自分の気持ちが何かが違う気がする。
涼真はだれも好きにならないし、かわいそうな同期の私に同情してくれただけなのに、そして、私自身、涼真と話せなくなったり、一緒にいられなくなるのなら、同期の関係でいたい。
そう思っていたはずなのに。
一緒にいられることに、嫌でも嬉しくなる自分がいた。
ニセ彼をさせる上に、休日にデートのようなお出かけなんて……。
止められなくなりそうな自分の気持ちが怖くなり、今からでも断ろうかとスマホを手にした。
そこへ、そんな私の気持ちを見透かしたような涼真からのメッセージに私はため息をついて立ち上がった。
「車で行こう?迎えに行く。住所教えて」
車持ってたんだ……。
いつも電車通勤をしている涼真が運転できることすら知らなかった。
また、一つ同期以上の事を知ってしまった。
上場企業の営業のエースなら、車ぐらい帰るお給料は頂いているのだろう。
営業事務の私とはきっと違うのだろうな。
そんな事を思いながら、諦めてクローゼットから服を選ぶ。
淡い色のワンピースを取り出して、鏡で合わせてみたが、いかにも張り切っているような自分に、慌てて首を振った。
「危ない危ない……」
いつもパンツスーツが多い私が、急にスカートなんて履くなんて……。
当たり障りのなり、黒のパンツに、白のニットに黒のコートを羽織る。
本当にかわいげのないモノトーンコーデに自分でも笑えてきた。
でも、ただの同期と思い込むための、私の戦闘服だ。
カバンだけは指し色を入れて涼真に住所を送った。
今まで通りでいればいい。
そう自分で言い聞かす。
「どこまで行くの?」
高速に乗った涼真に私は驚いて、窓の外を見た。
「んー?適当に」
「適当って……」
あきれたように言って、私は初めて見る涼真の運転姿を見た。
「なんだよ?」
見られていることに気づいたようで、少しぶっきらぼうにいった涼真にクスリと笑いが漏れる。
「いや、運転できたんだなって」
「できるよ。惚れ直す?」
「何言ってるのよ。バカ」
何の会話よ……。
やり取りが練習にでもなっているようで、私は顔がカッ熱くなって涼真から視線を外した。
「ちな、ちな、ほら見えてきた。寒いけどあそこの水族館のイルカショーのイルミネーションめっちゃきれいらしい」
「うそー、行きたかった」
行きたかったが、一度もいったことのないその場所に私は素直に声を上げた。
冬だというのに、土曜日の水族館はカップルや親子連れでにぎわっていた。
私が着替えに行ったこともあり、お昼も過ぎていた私たちは、とりあえず何かを食べようという事になった。
約束の時間はお昼の12時。
1時間と少しの時間で準備をしなければならないのに、私は一人ソファーに座り込んだ。
これ以上踏み込むのは怖い。
今までと自分の気持ちが何かが違う気がする。
涼真はだれも好きにならないし、かわいそうな同期の私に同情してくれただけなのに、そして、私自身、涼真と話せなくなったり、一緒にいられなくなるのなら、同期の関係でいたい。
そう思っていたはずなのに。
一緒にいられることに、嫌でも嬉しくなる自分がいた。
ニセ彼をさせる上に、休日にデートのようなお出かけなんて……。
止められなくなりそうな自分の気持ちが怖くなり、今からでも断ろうかとスマホを手にした。
そこへ、そんな私の気持ちを見透かしたような涼真からのメッセージに私はため息をついて立ち上がった。
「車で行こう?迎えに行く。住所教えて」
車持ってたんだ……。
いつも電車通勤をしている涼真が運転できることすら知らなかった。
また、一つ同期以上の事を知ってしまった。
上場企業の営業のエースなら、車ぐらい帰るお給料は頂いているのだろう。
営業事務の私とはきっと違うのだろうな。
そんな事を思いながら、諦めてクローゼットから服を選ぶ。
淡い色のワンピースを取り出して、鏡で合わせてみたが、いかにも張り切っているような自分に、慌てて首を振った。
「危ない危ない……」
いつもパンツスーツが多い私が、急にスカートなんて履くなんて……。
当たり障りのなり、黒のパンツに、白のニットに黒のコートを羽織る。
本当にかわいげのないモノトーンコーデに自分でも笑えてきた。
でも、ただの同期と思い込むための、私の戦闘服だ。
カバンだけは指し色を入れて涼真に住所を送った。
今まで通りでいればいい。
そう自分で言い聞かす。
「どこまで行くの?」
高速に乗った涼真に私は驚いて、窓の外を見た。
「んー?適当に」
「適当って……」
あきれたように言って、私は初めて見る涼真の運転姿を見た。
「なんだよ?」
見られていることに気づいたようで、少しぶっきらぼうにいった涼真にクスリと笑いが漏れる。
「いや、運転できたんだなって」
「できるよ。惚れ直す?」
「何言ってるのよ。バカ」
何の会話よ……。
やり取りが練習にでもなっているようで、私は顔がカッ熱くなって涼真から視線を外した。
「ちな、ちな、ほら見えてきた。寒いけどあそこの水族館のイルカショーのイルミネーションめっちゃきれいらしい」
「うそー、行きたかった」
行きたかったが、一度もいったことのないその場所に私は素直に声を上げた。
冬だというのに、土曜日の水族館はカップルや親子連れでにぎわっていた。
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