同期に恋して

美希みなみ

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ただの同期です

第1話

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「近藤!申し訳ないんだが、この件急ぎで頼めるかな?」
隣の部署の営業企画部の課長のその言葉に、私は課長の手元を見た。

「もちろんです。珍しいですね。課長が急ぎの案件なんて」
微笑みながらその書類を受け取ると、課長をみた。

「ああ、休み前にどうしても部下の初めての案件を週明けの合同会議にだしてやりたくて……。近藤にはいつも真ん中に入ってもらって悪いな」
部下のための物だと分かり、私はニコリと笑顔を向けた。

企画で上がってきたものを、私のところで具体的なコストや類似のデーターなどを収集してから会議にあげる。

一応、営業部の所属だが、企画営業の仕事も兼任と言ってもいいかもしれない。

本当は、今日は仕事も山積みだが、課長の想いもわかり今はやるしかない。

「それが私の仕事ですから。なるべく急ぎますね」
そう言うと、課長はホッとした表情をみせて、お礼を言うと自分の席へと戻っていった。

「ねえ、千夏。私は水田課長の方がおすすめだな」
美耶子の言葉に私は、苦笑した。

「誠実だし、仕事もできるし、優しいし……あいつにはないものがいっぱいじゃない?」

「あいつって誰?」

最後は小声で言った千夏の言葉に、かぶせるように声が聞こえて私はビクッと肩を震わせた。

「高遠!」
驚いたように声を上げた美耶子に、私は二人の方を見ることができず、必死に言い訳を考えていた。

「女同士の話にいきなり入ってこないでよ」
美耶子のきつい言い方に、涼真は少し顔をゆがめると、私を見た。

「じゃあ、こんなところで話してるなよ。課長にだって聞こえるかもしれないぞ」
確かにそうだ。
課長にも誤解や、迷惑をかける訳にはいかない。

「そうだよね!仕事しよ。仕事」
私は早口で言うと、課長に頼まれた書類を見つめた。

ばれてないよ……ね?
自分の事だって……。

内心ドキドキだったが、私は必死に仕事に意識を向けた。

「ちな、それ今日中なの?」
涼真はチラリと私の手元を見ると、声をかけてくる。

「うん、そうなの。何か大変みたいだし」
私もさっきの課長を思い出し、こんなことをしている場合ではないと急いでファイルを開いた。

「そっか。何か手伝えることあれば言えよ」
涼真の優しさに、チラリと見上げると「ありがとう」と言葉を発した。

そう涼真は誰にでもかもしれないが、優しいしよく気づく。
だからまあ、モテるのだろうが……。

涼真がたった一人の人を大切にすることはあるのかな?
その人はきっと幸せだろうな……。

私は小さくため息をつくと、仕事に集中した。
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