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初めてのお付き合い
第八話
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「宗次郎のことは一度も好きじゃないって本当?」
静かに問いかけられ、私はコクっと頷いた。
「じゃあ、そのほかの男が好きだった?」
訳の分からない問いかけに、私は顔を歪めて否定する。
「そんな人いない」
「じゃあ、誰が好きだった?」
直球で聞かれたその問いに、泣いて思考が回っていなかったのかもしれない。
「尋人がずっと好……」
そこまで言うと、その後の言葉は言わせてもらえなかった。言葉が出ないほどギュッと抱きしめられたのだ。
「俺のせいだな……」
少し震えた声にも聞こえたその声のあと、尋人は大きくため息をついた。
「俺が全部悪い。初めてといっていい恋にやり方がわからなくて間違えた。弥生が宗次郎を好きだと思ってたから、どうにかうまく行かせてやりたくて、宗次郎に近寄る女に声かけたりして……。俺本当にバカだな」
最後は呟くように尋人は言うと、抱きしめる腕をさらに強めた。
「尋人、苦しい……」
流石に強く抱きしめられすぎてそう漏らせば、抱きしめられていた腕の力が緩む。
「好きすぎて、可愛すぎていじめたりしてごめん。きちんと気持ちを伝えなくてごめん」
「尋人……」
まさかそんなふうに思っていたことに驚きが隠せない。
付き合うって決めてからも、モヤモヤしていた気持ちが少しずつ晴れていく。
「付き合い始めてから触れなかったのも、まだ弥生が俺を好きになってくれてないと思ってたから、触れて嫌われたくなかった」
嘘……。そんなことを思っていてくれたなんて想像もしていなかった。
そう思ったと同時にふわりと唇が温かくなる。キスされたことに気づいて、私は目がまん丸になってしまった。
そこで尋人の瞳をものすごく近くで見た。
「佐和子より弥生のことが好きな理由はいっぱいあるけど」
そういうと、チュッとリップを立ててキスをする。
「優しいところ、いつも笑顔なところ、一緒にいて穏やかな気持ちになるところ」
一つづつ言うたびに、尋人はキスをする。
自分のことを褒められている上に、キスをされて私はもうキャパオーバーだ。
「わかった! 尋人もうわかったから」
「弥生はもっと自信持てよ。あっ、でもそのままでいい。他の男の前でそんな表情になられたら困るからな」
「え? どういうこと……」
それ以上問いかけることはできず、さっきより長い口づけを落とされ、私は慌てて目を閉じた。
前のキスとは違い何度も触れるだけのキスが、温かくて気持ちが溢れるようなキスに恥ずかしいし嬉しいし、感情が忙しかったのは言うまでもない。
静かに問いかけられ、私はコクっと頷いた。
「じゃあ、そのほかの男が好きだった?」
訳の分からない問いかけに、私は顔を歪めて否定する。
「そんな人いない」
「じゃあ、誰が好きだった?」
直球で聞かれたその問いに、泣いて思考が回っていなかったのかもしれない。
「尋人がずっと好……」
そこまで言うと、その後の言葉は言わせてもらえなかった。言葉が出ないほどギュッと抱きしめられたのだ。
「俺のせいだな……」
少し震えた声にも聞こえたその声のあと、尋人は大きくため息をついた。
「俺が全部悪い。初めてといっていい恋にやり方がわからなくて間違えた。弥生が宗次郎を好きだと思ってたから、どうにかうまく行かせてやりたくて、宗次郎に近寄る女に声かけたりして……。俺本当にバカだな」
最後は呟くように尋人は言うと、抱きしめる腕をさらに強めた。
「尋人、苦しい……」
流石に強く抱きしめられすぎてそう漏らせば、抱きしめられていた腕の力が緩む。
「好きすぎて、可愛すぎていじめたりしてごめん。きちんと気持ちを伝えなくてごめん」
「尋人……」
まさかそんなふうに思っていたことに驚きが隠せない。
付き合うって決めてからも、モヤモヤしていた気持ちが少しずつ晴れていく。
「付き合い始めてから触れなかったのも、まだ弥生が俺を好きになってくれてないと思ってたから、触れて嫌われたくなかった」
嘘……。そんなことを思っていてくれたなんて想像もしていなかった。
そう思ったと同時にふわりと唇が温かくなる。キスされたことに気づいて、私は目がまん丸になってしまった。
そこで尋人の瞳をものすごく近くで見た。
「佐和子より弥生のことが好きな理由はいっぱいあるけど」
そういうと、チュッとリップを立ててキスをする。
「優しいところ、いつも笑顔なところ、一緒にいて穏やかな気持ちになるところ」
一つづつ言うたびに、尋人はキスをする。
自分のことを褒められている上に、キスをされて私はもうキャパオーバーだ。
「わかった! 尋人もうわかったから」
「弥生はもっと自信持てよ。あっ、でもそのままでいい。他の男の前でそんな表情になられたら困るからな」
「え? どういうこと……」
それ以上問いかけることはできず、さっきより長い口づけを落とされ、私は慌てて目を閉じた。
前のキスとは違い何度も触れるだけのキスが、温かくて気持ちが溢れるようなキスに恥ずかしいし嬉しいし、感情が忙しかったのは言うまでもない。
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