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初めてのお付き合い

第七話

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コインパーキングに止めるだけなので、数分もあれば尋人は来るはずだ。しかし、その間お茶を用意するとか、部屋を片付けるとか、何かできることはあるのに私は落ち着かずにうろうろしていた。

その時、部屋のインターフォンがなり私はパタパタと玄関へと走っていった。
「おかえりなさい」
一緒に住んでいた時の癖で、今まで一緒にいたにもかかわらずそんなことを言ってしまった私に、一瞬ポカンとした後尋人はふわりと笑った。
「ただいま?」
ポンと私の頭に触れた尋人が、靴を脱いで私の横をすり抜け家へと入っていく。尋人が触れた場所を私も触ると彼の後を追った。

「何か飲む? ごはん簡単に作ろうか?」

「車だし、お茶で」
はっきりと今日は帰ると意思表示をした尋人に、当たり前なのに私はなぜか少し寂しくなる。
さっきも誘ったのは私からだし、ただ断れなくて来ただけかもしれない。
お茶を入れる手が止まってしまった私に、尋人が驚いたように声をかける。

「弥生、どうかした?」
「寄りたくなかった?」
つい零れ落ちてしまった言葉に、私はハッとして口元を覆う。

そんな私を見て、尋人は立ち上がるキッチンにいる私の方へと歩いてくる。

「本気で言ってるのか?」
真剣な瞳で見据えられて、私はフルフルと頭を振った。

「違うの、違うの」
尋人がいろいろと伝えてくれて嬉しかったし、信じたかった。でも、本当に佐和子じゃなく私が好きだったと思えてないのは事実だ」

「何が?」

「だって、私より佐和子の方が魅力あるし、かわいいし、仕事できるし……」
友人にやきもちを焼くような発言はしたくはないのに、どんどん言葉が溢れてしまう。

「どうして佐和子がでてくるんだ?」
本当に意味が解らないと言った尋人。
でも……。

「尋人が佐和子より私の方が好きだなんて、ありえない」

「それは弥生だろ? 俺より宗次郎の方が優しいし、気を許してただろ」
尋人も珍しく苛立ちを露わにして、髪をクシャっとする。その表情は悲しそうにも見えた。しかし、私も言葉が止まらない。

「だから、宗次郎君のことなんて好きだったことないって言ったじゃん」

「は?」
そこで尋人は今までとは違う反応をした。心底驚いた様子だ。
その意味は解らないが、お付き合いをすることを了承したのに、これ以上隠してもいいことなどない。


「自分に自信がないの。尋人に好きだって言ってもらえるようなところないし……。佐和子の失恋の傷をただ私で本当はごまかしてるのかなとか、いろいろ考えちゃって。付き合うって言ったのに今日だって帰るって言うし、必要以上に触れないし」
もう、一度あふれ出した言葉は止まらず、訳の分からない涙まで零れ落ちた。

「弥生……」
私の名前を吐息交じりに呟くと私の手を取りリビングに戻ると、ラグの上に座らせ自分も私の前に座った。
そして、私の瞳を覗きこむ。

「一つだけ確認していい?」

「うん」
私の頬を手で包み込み少し乱暴に目じりの涙を拭うと、尋人は少し間をおいて口を開いた。
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