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初めてのお付き合い
第一話
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呆然と立ち尽くしていると、後ろからコホンと遠慮気味な咳払いが聞こえた。
「あっ……」
なんとなく気まずくて、私が呟いて俯くとすぐそばに気配を感じた。
さっきまでは焦ってしまっていたが、星ちゃんが失礼なことをいったことを謝罪しなければ。
私は彼をチラリと見た後、小さく頭を下げた。
「弟がごめんね。嫌な思いさせて」
「いや」
小さく呟いた尋人は髪を掻き上げると、唇を噛んで思案する表情を浮かべた。
仕事が終わってこんなところまで来させてしまい、きっと気を悪くしたに違いない。
「本当にごめんね。両親の不在が多かったせいもあって、しっかりした弟が保護者みたいなところがあって」
言い訳のように伝えれば、尋人は大きく息を吐いたのがわかった。
「謝るのは俺だよ。弟さんが怒るのは当然だ」
「え?」
意外な言葉に驚いて尋人を見ると、彼も私を見た。
「勝手に誤解して嫌な態度取ったし、嫉妬しまくりだし……。俺かっこ悪いよな……」
嫉妬?
初めて尋人が怒っているのではないと知り、私は目をパチパチしてしまう。
「てっきり、弥生が他の男に声をかけられてるって思って。まだスタートラインすら立ってないのに、もう終わるのかと思ったらいてもいられなかった」
最後は呟くように言われて、私はキュッと心臓が締め付けられる気がした。
今まで会社で女の子に声をかけられても、尋人は余裕の表情で笑顔を崩すことなどなかった。
それなのに今は私の前でこんな顔を見せてくれている。
信じてもいいのだろうか?
「尋人……。この間言ってくれたこと本当? 私のこと……」
自分の気持ちを伝えていないのに卑怯だと思うも、もう一度聞きたくて私は問いかける。
そこまで言った私を、熱の孕んだ瞳がとらえた。
「何度でも言う。弥生が好きだ」
そっと伸びてきた手が私の頬に触れる。無意識にビクっとしてしまい、慌てたように尋人が手を引く。
「ごめん」
こんな風に謝らせたいわけではない。ただこうして改めて告白され意識をしてしまうと、経験の少ない私は訳が分からなくなってしまうだけだ。
本当にずっと好きだった人だからこうなってしまうのであって、決して嫌なわけではない。
宗次郎君や、星ちゃんに触れられても全然平気だし、今までも二人でいてもまったく平気だった。しかし、尋人の気持ちを知り、キスをしてからとうまく行かない。ドキドキとしてしまうし、緊張してしまうのだ。
何も言わない私に、尋人は何かを耐えるように眉根を寄せた後、くるりと私に背を向けた。
「仕事終わりの疲れてるときにいきなり悪かった」
帰るつもりのようで玄関に向かう彼を追いかけて、私はありたっけの思いを込めて後ろから彼のシャツを引っ張る。
「違うの、あの、嫌なわけじゃないの。ただ緊張しちゃって。……お茶飲んでって」
完全に意味不明だ。自分の言動にきっと私の頬は真っ赤だろう。
それでも私の思いが少しは伝わったのか、尋人がゆっくりと振り返る。
「弥生?」
尋人が戸惑ったように私の名前を呼ぶ。
これでは自分から誘ったようなものだが、これほどまで真剣に思ってもらっているのならきっと大丈夫。そう思えた。
「あっ……」
なんとなく気まずくて、私が呟いて俯くとすぐそばに気配を感じた。
さっきまでは焦ってしまっていたが、星ちゃんが失礼なことをいったことを謝罪しなければ。
私は彼をチラリと見た後、小さく頭を下げた。
「弟がごめんね。嫌な思いさせて」
「いや」
小さく呟いた尋人は髪を掻き上げると、唇を噛んで思案する表情を浮かべた。
仕事が終わってこんなところまで来させてしまい、きっと気を悪くしたに違いない。
「本当にごめんね。両親の不在が多かったせいもあって、しっかりした弟が保護者みたいなところがあって」
言い訳のように伝えれば、尋人は大きく息を吐いたのがわかった。
「謝るのは俺だよ。弟さんが怒るのは当然だ」
「え?」
意外な言葉に驚いて尋人を見ると、彼も私を見た。
「勝手に誤解して嫌な態度取ったし、嫉妬しまくりだし……。俺かっこ悪いよな……」
嫉妬?
初めて尋人が怒っているのではないと知り、私は目をパチパチしてしまう。
「てっきり、弥生が他の男に声をかけられてるって思って。まだスタートラインすら立ってないのに、もう終わるのかと思ったらいてもいられなかった」
最後は呟くように言われて、私はキュッと心臓が締め付けられる気がした。
今まで会社で女の子に声をかけられても、尋人は余裕の表情で笑顔を崩すことなどなかった。
それなのに今は私の前でこんな顔を見せてくれている。
信じてもいいのだろうか?
「尋人……。この間言ってくれたこと本当? 私のこと……」
自分の気持ちを伝えていないのに卑怯だと思うも、もう一度聞きたくて私は問いかける。
そこまで言った私を、熱の孕んだ瞳がとらえた。
「何度でも言う。弥生が好きだ」
そっと伸びてきた手が私の頬に触れる。無意識にビクっとしてしまい、慌てたように尋人が手を引く。
「ごめん」
こんな風に謝らせたいわけではない。ただこうして改めて告白され意識をしてしまうと、経験の少ない私は訳が分からなくなってしまうだけだ。
本当にずっと好きだった人だからこうなってしまうのであって、決して嫌なわけではない。
宗次郎君や、星ちゃんに触れられても全然平気だし、今までも二人でいてもまったく平気だった。しかし、尋人の気持ちを知り、キスをしてからとうまく行かない。ドキドキとしてしまうし、緊張してしまうのだ。
何も言わない私に、尋人は何かを耐えるように眉根を寄せた後、くるりと私に背を向けた。
「仕事終わりの疲れてるときにいきなり悪かった」
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「違うの、あの、嫌なわけじゃないの。ただ緊張しちゃって。……お茶飲んでって」
完全に意味不明だ。自分の言動にきっと私の頬は真っ赤だろう。
それでも私の思いが少しは伝わったのか、尋人がゆっくりと振り返る。
「弥生?」
尋人が戸惑ったように私の名前を呼ぶ。
これでは自分から誘ったようなものだが、これほどまで真剣に思ってもらっているのならきっと大丈夫。そう思えた。
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✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
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○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。
(作品シェア以外での無断転載など固くお断りします)
○雪さま
(Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21
(pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274
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