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あなたとのいろいろ

第四話

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その後、ふわふわした気持ちのまま料理を食べ終えた。せっかくのおいしい料理だったが、味があまりわからなかった。
今まで好きをひたすら隠し、友達として接してきた私。いざこうしてアプローチされることに慣れていなくて、尋人の行動一つ一つに挙動不審だ。
何を話せばいいかわからなくなってしまう。

「弥生、普通でいいよ」
店を出て手をつないで歩いていると、尋人が苦笑しながら私を見る。
その瞳すら今までと違う気がして、私はパッ視線をそらしてしまった。
しまったと思うものの、普通がまったくわからない。
「なあ、今度の休みはどこか行こうか」
そんな私を気にすることなく、尋人は優しく語り掛ける。
「何か買いたいものあるの?」
今までも買い物などは一緒に行っていた。あえて約束をされることなどなくて私は聞き返す。

「デートしよう」
「デート?」
聞きなれない単語を繰り返す。
「そう、少しずつ意識してほしいから。俺のこと」
いや、もう意識しまくりです……。どうしていいかわからないぐらいに。

佐和子への気持ちが私の勘違いと知っただけでも驚いたのに、まさか尋人の気持ちが私に向けられていたなんて。

でも、今まで尋人の彼女を見てきた。いつも佐和子みたいな綺麗でハキハキとした人だったと思う。
こんなところで自分に自信がなくて、どうしていいかわかない。

さっき「私も尋人が好き」そう伝えられなかった一番の理由は、自分に自信がないからだと気づく。
尋人の気持ちを疑ったのかもしれない。どうして私なんて……。


「どこか行きたいところある?」
尋人は私を送ってくれるようで、タクシーを拾おうとしながら聞いてくる。
私は急に言葉が出なくて、そんな彼を見上げた。
車内でもいろいろ話してくれる尋人に、私はなんとか「うん」とか相槌だけを打っていた。
こんな雰囲気にしたいわけじゃないのに。
そんなことを思っているうちに、いつの間にかタクシーは私のマンションの前に止まっていた。
「弥生、また会社で」
「うん」
柔らかな笑顔を向けてくれる尋人に、キュッと胸が締め付けられる。
マンガならここでお茶でもどう? そんなセリフを言うところだろうが到底言えなかった。

「なにやってるんだか……」
見えなくなるまでタクシーを見送った後、私の口からその言葉が零れ落ちた。

結婚までしておいて何を言っているんだか、そう思われても仕方がないが、私がいろいろと消極的になるのは訳がある。

それは……。

急になったスマホにため息が零れた。相手は予想通りで小さく息を吐く。
私の両親は研究職でいろいろな場所に行ったっきりで不在が多かった。
だから、結婚するときも「そう、おめでとう!」で終わりだったし、式をしないことも帰れないと思っていたせいか、特に咎められることもなかった。
その代わり……。

「はい」

『弥生、どういうこと?』
低音の声が完全に怒っていて私はビクっとした。
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