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あなたとのいろいろ
第三話
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「俺が悪かったな……」
「え?」
握られた手が熱くて、私は訳がわからない。
「まさかずっと弥生が俺が佐和子を好きだなんて思ってるなんて気づかなかった」
その言葉に、私は恐る恐る尋人に尋ねる。
「違うの?」
「違うよ」
力強く否定されて私はパニックだ。
「俺はずっと弥生を見てたつもりだよ。それを伝えてたつもりだったけど、全く伝わってなかったってことか」
「うそ……」
そんなことがあるわけがないと、私はそう呟くも頭の中はパニック寸前だ。
「うそなんて言わない」
「じゃあ、なんで? どうして言ってくれなかったの?」
「それは……」
そこで尋人は言葉を止めた。その後、ゆっくりと口を開く。
「俺がヘタレだからだよ。ずっと俺の隣で笑ってくれる弥生との関係を壊すのが嫌だった。宗次郎と佐和子が結婚が決まって、あの日酔ってた俺は順番を間違えた」
「順番?」
「ああ」
握られたままの手をほどくタイミングがわからない。
「酔いに任せて結婚を迫ったこと。告白もせずに。まさか、弥生がOKするなんて思ってもみなかった」
確かに私が冗談でしょ? そう言えば済んだ話だ。尋人だって本気ではなかったのだ。
「だから、酔ってそのまま籍を入れてしまって、俺は後悔した。こんなずるいやり方で弥生を手に入れたことを。だから手も出さずにひたすら約束の一年を待った」
嘘でしょ……。そのために離婚を待ったというのか。尋人の誠実さというのだろうか。手も出されない自分に自信を無くしていたなんて尋人はこれっぽっちも思っていないのだろう。
「え?」
私だって宗次郎を思ってなどいない。どこでどう間違えたらそうなってしまったのだろう。
でも、社内の人が勘違いするようぐらいだから、当人である私たちも誤解してもおかしくないのかもしれないが、実際は全く違ったというわけだ。
一年前にきちんと話しておけば。そう思うも今更だ。
「弥生、俺は宗次郎に渡したくないから」
臆面もなく言う彼に私はキャパオーバーだ。そこへメイン料理が運ばれ来る。
「食べよう」
蕩けそうな笑顔を浮かべられて、私の顔は真っ赤だろう。
「その顔を見ればこの間のキスは間違ってなかったな。ようやく男として意識してもらったってところかな」
あくまでも誤解している尋人に私はこれだけはと口を開いた。
「私、宗次郎のこと好きじゃないよ」
「まじ?」
「まじ」
真剣に伝えれば、尋人は嬉しそうに笑った。恥ずかしくて照れる私に尋人はとどめを刺す。
「弥生、かわいい」
隠すことをやめた尋人の破壊力がすごくて、私は嬉しさと、恥ずかしさとがぐちゃぐちゃになってしまったのはいうまでもない。
「え?」
握られた手が熱くて、私は訳がわからない。
「まさかずっと弥生が俺が佐和子を好きだなんて思ってるなんて気づかなかった」
その言葉に、私は恐る恐る尋人に尋ねる。
「違うの?」
「違うよ」
力強く否定されて私はパニックだ。
「俺はずっと弥生を見てたつもりだよ。それを伝えてたつもりだったけど、全く伝わってなかったってことか」
「うそ……」
そんなことがあるわけがないと、私はそう呟くも頭の中はパニック寸前だ。
「うそなんて言わない」
「じゃあ、なんで? どうして言ってくれなかったの?」
「それは……」
そこで尋人は言葉を止めた。その後、ゆっくりと口を開く。
「俺がヘタレだからだよ。ずっと俺の隣で笑ってくれる弥生との関係を壊すのが嫌だった。宗次郎と佐和子が結婚が決まって、あの日酔ってた俺は順番を間違えた」
「順番?」
「ああ」
握られたままの手をほどくタイミングがわからない。
「酔いに任せて結婚を迫ったこと。告白もせずに。まさか、弥生がOKするなんて思ってもみなかった」
確かに私が冗談でしょ? そう言えば済んだ話だ。尋人だって本気ではなかったのだ。
「だから、酔ってそのまま籍を入れてしまって、俺は後悔した。こんなずるいやり方で弥生を手に入れたことを。だから手も出さずにひたすら約束の一年を待った」
嘘でしょ……。そのために離婚を待ったというのか。尋人の誠実さというのだろうか。手も出されない自分に自信を無くしていたなんて尋人はこれっぽっちも思っていないのだろう。
「え?」
私だって宗次郎を思ってなどいない。どこでどう間違えたらそうなってしまったのだろう。
でも、社内の人が勘違いするようぐらいだから、当人である私たちも誤解してもおかしくないのかもしれないが、実際は全く違ったというわけだ。
一年前にきちんと話しておけば。そう思うも今更だ。
「弥生、俺は宗次郎に渡したくないから」
臆面もなく言う彼に私はキャパオーバーだ。そこへメイン料理が運ばれ来る。
「食べよう」
蕩けそうな笑顔を浮かべられて、私の顔は真っ赤だろう。
「その顔を見ればこの間のキスは間違ってなかったな。ようやく男として意識してもらったってところかな」
あくまでも誤解している尋人に私はこれだけはと口を開いた。
「私、宗次郎のこと好きじゃないよ」
「まじ?」
「まじ」
真剣に伝えれば、尋人は嬉しそうに笑った。恥ずかしくて照れる私に尋人はとどめを刺す。
「弥生、かわいい」
隠すことをやめた尋人の破壊力がすごくて、私は嬉しさと、恥ずかしさとがぐちゃぐちゃになってしまったのはいうまでもない。
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