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あなたとのいろいろ
第二話
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「え? ここ?」
4人で何度も行った居酒屋でも行く、そう思っていた私だったが連れてこられた隠れ家のような高級な店構えにかなり驚いてしまう。
「俺も本気で行くから」
さらりと言った尋人に私は訳がわからない。
「ねえ、尋人。どうしたの? 急に変だよ?」
私なんかをどうしてこんな素敵な場所につれてきたのかわからない。そんな気持ちのまま伝えれば尋人は私をジッと見下ろす。
「変にもなるよ。お前、また宗次郎に傾くの?」
「え?」
宗次郎君? 何を言っているのだろう。そう思っていた時、目の前の扉が開けられ、落ち着いたブラックの制服に身を包んだ男性が私たちに微笑む。
「いらっしゃいませ」
その声に尋人は小さく息を吐くと、私に語り掛けるように言う。
「とりあえず食事にしよう」
落ち着いた店内はほとんど個室のようで、通された部屋はモダンな部屋だった。落ち着いた照明に、おしゃれなインテリア。
いかにもカップルのデートに使われそうな店だった。
「俺が頼んでいい?」
私の好みは熟知している尋人に、コクコクと頷く。尋人は接待などで慣れているかもしれないが、私はあまり高級店に今まで縁がない。ワイン一つ選ぶにもわからないので、おとなしく注文する尋人を見ていた。
慣れた様子で頼み終えると、私の方を向き直る。
「さっきの話。佐和子たちの結婚が延期になって、宗次郎に何か言われた?」
その問いの意味が解らなくて、私は首を振りながら口を開く。
「私は特に何も聞いてない」
「じゃあ、どうして今日宗次郎と食事の約束したんだ?」
冷静な冷たい口調に私はなぜこんな風に言われているのかわからない。
「それは……」
キスをされてから、尋人が何を考えているのかわからず、悩んでいた私を励まそうとしてくれた。そんな理由はもちろん言えず口ごもる。
「さっきのを見てわかっただろ? 宗次郎は佐和子のことをまだ思ってるぞ」
自分に言い聞かせたいのだろうか。冷たく言われて私も言い返したくなってしまう。
「そんなことわかってるよ。どうしたの急に。尋人こそ佐和子と宗次郎君がうまく行かない方がいいと思ってるんじゃないの?」
つい本音が零れてしまい、私はしまったと口を押える。
「なんだよ、それ」
かなり驚いた表情の尋人に私は覚悟を決めた。離婚もしたのだし、何を言ってもいいのかもしれない。
「尋人、ずっと佐和子のことが好きでしょ。気づいてた」
「は?」
初めて見るかもしれない尋人の表情に、私は何かおかしなことを言ってしまったかと訳が分からなくなってしまう。
「弥生さ、どうして俺との結婚了承したの?」
色々なことをこの一年話してきたが、初めてこの核心に触れられたかもしれない。
もちろん、一番の理由は私がずっと尋人を思ってきたからだ。しかしそれは言葉にできない。
二番目の理由は、佐和子のことを忘れて欲しい。結局自分の事ばかりだ。
想いを遂げられなかった尋人を元気づけたいだの、大義名分を掲げていたが、最後は自分に向いてほしかったという浅ましい考え。
それに気づいて私は恥ずかしくなる。
「それは……」
明確な答えなど言えるわけがなく、私も目の前のグラスに手を伸ばす。それをさせまいとするように尋人の手が私の手をギュッと握りしめた。
4人で何度も行った居酒屋でも行く、そう思っていた私だったが連れてこられた隠れ家のような高級な店構えにかなり驚いてしまう。
「俺も本気で行くから」
さらりと言った尋人に私は訳がわからない。
「ねえ、尋人。どうしたの? 急に変だよ?」
私なんかをどうしてこんな素敵な場所につれてきたのかわからない。そんな気持ちのまま伝えれば尋人は私をジッと見下ろす。
「変にもなるよ。お前、また宗次郎に傾くの?」
「え?」
宗次郎君? 何を言っているのだろう。そう思っていた時、目の前の扉が開けられ、落ち着いたブラックの制服に身を包んだ男性が私たちに微笑む。
「いらっしゃいませ」
その声に尋人は小さく息を吐くと、私に語り掛けるように言う。
「とりあえず食事にしよう」
落ち着いた店内はほとんど個室のようで、通された部屋はモダンな部屋だった。落ち着いた照明に、おしゃれなインテリア。
いかにもカップルのデートに使われそうな店だった。
「俺が頼んでいい?」
私の好みは熟知している尋人に、コクコクと頷く。尋人は接待などで慣れているかもしれないが、私はあまり高級店に今まで縁がない。ワイン一つ選ぶにもわからないので、おとなしく注文する尋人を見ていた。
慣れた様子で頼み終えると、私の方を向き直る。
「さっきの話。佐和子たちの結婚が延期になって、宗次郎に何か言われた?」
その問いの意味が解らなくて、私は首を振りながら口を開く。
「私は特に何も聞いてない」
「じゃあ、どうして今日宗次郎と食事の約束したんだ?」
冷静な冷たい口調に私はなぜこんな風に言われているのかわからない。
「それは……」
キスをされてから、尋人が何を考えているのかわからず、悩んでいた私を励まそうとしてくれた。そんな理由はもちろん言えず口ごもる。
「さっきのを見てわかっただろ? 宗次郎は佐和子のことをまだ思ってるぞ」
自分に言い聞かせたいのだろうか。冷たく言われて私も言い返したくなってしまう。
「そんなことわかってるよ。どうしたの急に。尋人こそ佐和子と宗次郎君がうまく行かない方がいいと思ってるんじゃないの?」
つい本音が零れてしまい、私はしまったと口を押える。
「なんだよ、それ」
かなり驚いた表情の尋人に私は覚悟を決めた。離婚もしたのだし、何を言ってもいいのかもしれない。
「尋人、ずっと佐和子のことが好きでしょ。気づいてた」
「は?」
初めて見るかもしれない尋人の表情に、私は何かおかしなことを言ってしまったかと訳が分からなくなってしまう。
「弥生さ、どうして俺との結婚了承したの?」
色々なことをこの一年話してきたが、初めてこの核心に触れられたかもしれない。
もちろん、一番の理由は私がずっと尋人を思ってきたからだ。しかしそれは言葉にできない。
二番目の理由は、佐和子のことを忘れて欲しい。結局自分の事ばかりだ。
想いを遂げられなかった尋人を元気づけたいだの、大義名分を掲げていたが、最後は自分に向いてほしかったという浅ましい考え。
それに気づいて私は恥ずかしくなる。
「それは……」
明確な答えなど言えるわけがなく、私も目の前のグラスに手を伸ばす。それをさせまいとするように尋人の手が私の手をギュッと握りしめた。
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