さあ 離婚しましょう、はじめましょう

美希みなみ

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あなたとのいろいろ

第一話

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こうして一緒に会社を出ることなんて今まで何度もある。

佐和子たちが一緒のこともあるし、ふたりの時もあった。尋人は会社の中でもムードメーカでいつも明るく、社交性に溢れ人だ。

一緒に過ごしたこの一年も、友人として接していたからか、とても楽しく穏やかな日々だったと思う。

初めの時同様、私をからかうようなことを言うことも多かったが、そういう尋人だったからこそ、あまり思ったことが言えない私が、何でも言い合えたのかもしれない。

無言で歩きながら、少し前の記憶が頭をよぎった。


※※※ 
時は少し遡る

勢いで結婚をして半年、日曜日の昼下がり。

2LDKのこのマンションは、お互いの部屋に、一緒に使うスペースがリビング、キッチン、浴室に洗面所だ。

昼まで自分の部屋でやりたかった仕事をしていた私は、お腹がすいてリビングへと向かった。
そこへ入るなり、文句をいいながら、しぶしぶ購入したはずのソファに、ゆったりと座る尋人が私に視線を向けた。

ブラックのスエットの上下姿すら様になっている。
私は一緒に住み始めてから、朝いちばんでメイクをして着替えているのに、この差にため息が零れそうになる。

『おい、弥生、今日の昼飯の当番お前だよ』
『知ってる。でもまだ十二時前だよ』
私が時計を見ながら言えば、尋人はニヤリと笑った。
『起きるのが遅かったから、朝飯食ってない。だから腹減った』
悪びれることなく言った尋人を軽く睨みつけた。
『私は食べたの』
『弥生ちゃん、お願い』
甘えたように言う尋人に、私は大きくため息をつくとキッチンへと向かう。
『オムライスかパスタ、どっち?』
『さすが弥生。オムライス』
会社で見る限り、おしゃれなイタリアンとかを食べていそうだが、意外にも尋人は庶民的な料理を好む。いや、お子様料理だろうか?
そんなことを思いながらも、甘やかしてしまう自分がバカかもしれない。

少し甘めのケチャップライスを作り、卵三個使ったふわふわ卵のオムライス。それなりに料理が好きでよかったそう思いながら作る。
『そっちで食べる?』
普通のダイニングテーブルもあるが、休日はソファでたべることも多いため、尋人に尋ねれば「んー」と答えがあった。
『弥生も食べるだろ?』
『まだ早いんだけどな。でも二度作るの嫌だから食べるよ』
本当は一緒に食べたいのを隠しつつ答えれば、尋人はテーブルの上を片付けている。
出来上がったオムライスと、作り置きのサラダをトレイに乗せて持っていけば、嬉しそうに笑う。
会社では絶対に見られない、屈託のない笑顔をみられるだけでこの結婚をしてよかった。そんなことを思ってしまう私は終わってるかもしれない。
そう思いながらも、自分のものを持って尋人の横に座れば、パチンと手を合わせる。
『いただきます』
二人で手を合わせれば、パクリと尋人がオムライスを口に運ぶ。
『うまっ』
子どものように喜ぶ尋人に安堵して、私もそれを口に運んだ。

そんな過去のことを思い出していると、尋人は何も言わず歩いていく。
しかし、長く一緒にいたが、こうして手を引かれ恋人のように手を絡まされて歩くのは初めてだし、こんな緊張感があったことはなかった。
ドキドキするのを悟られないように、少し後ろを歩きながら彼の背中を見つめた。

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