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これからの未来へ
第4話
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「全員揃うのは何年ぶりだろうな」
誠と弘樹の会話で始まったその会は、和気あいあいと莉乃の手料理を食べながら各々の時間を過ごしていた。
久し振りの年末の年越しはとても賑やかで、壮一も久しぶりに会う誠真たちと楽しそうに話していている。そんな様子を日葵も幸せな気持ちで見ていた。
「そういえば咲良ちゃん、誠真がいろいろ待たせて不安にさせたんだって?」
日葵は誠真の大切にしているという彼女の咲良とも、初めて会うことができ隣で可愛らしく微笑む咲良に視線を向けた。
「そうですね。初めは何もいってくれなかったので」
「本当に、ひどい奴よね。ごめんね」
日葵が咲良とそんな話をしていると、慌てたように誠真が走って来るのが見える。
「姉貴、何か変なことを言ってないだろうな?」
いつも余裕そうで、軽薄なイメージの強かった誠真のその表情を見て、日葵はクスリと声が漏れた。
「こんな誠真初めて見た」
「うるさい」
苦虫を潰したような誠真は、反撃するように日葵を見据える。
「姉貴だって、ようやく壮兄と……」
イジワルそうな表情は父親譲りの誠真の頭を日葵はペシっとはたく。
「うるさいよ」
そんな姉弟のやり取りをしていると、壮一の声が聞こえる。
「日葵」
甘く響く声に誠真が壮一を驚いたように振り返る。
「やばっ、今の壮兄の声かよ」
そう言葉にしてしまい、また壮一に叩かれる誠真を咲良が笑いながら見ていた。
「どうしたの?」
少し恥ずかしさを隠しながら、日葵が壮一に問いかけると壮一はそんな周りの様子を気にすることなく、日葵の手を取る。
「そうちゃん?」
驚いて声を上げると、ソファで4人で寛いでいた両親たちの元へと日葵は連れていかれる。
「誠さん、莉乃さん、そして親父たち」
真剣な声で呼びかけた壮一に、日葵も壮一が何を言いたいのかわかり、ピシッと姿勢を正した。
「8年前、俺のせいで日葵を泣かせて、みんなにも迷惑をかけて本当に申し訳ありませんでした」
そう言って頭を下げた壮一につられ、日葵も頭を下げる。
「再会して、やっぱり俺には日葵しかいないと分かりました。結婚を前提に日葵と付き合っていきたいと思ってます」
(結婚を前提……)
そこまで考えてくれた壮一の本気に、つい日葵は壮一の顔を仰ぎ見た。
「日葵は?」
そんな中、声を発した誠の声に、日葵は慌てて父親の顔を見る。
「私も同じ気持ちです」
はっきりと言い切った日葵に、誠たち両親はお互いの顔を見合わす。
「二人が産まれた日、こんな日が来るかもねって冗談交じりに話したことが、本当になったわね」
莉乃の声に香織も苦笑しながら、日葵を見た。
「うちの息子のせいで遠回りさせちゃってごめんね」
香織の言葉に日葵はブンブンと首を振ると口を開く。
「この会わない時間があったから、きちんと自分の気持ちを確認できたの。だからいいの」
「そう」
日葵の笑顔に、両親たちも幸せそうな顔を見せた。
「壮一! これ以上日葵を泣かせたら許さないぞ」
いきなり過保護な父親全開の誠に、壮一はニヤリと笑みを浮かべた。
「泣かせはしないけど、連れ去るよ」
「おい! 壮一?」
意味が解らないと言った誠の言葉に、壮一は日葵の耳元に唇を寄せる。
「もう二人になりたい」
囁かれたその言葉に、日葵は一気に顔が真っ赤になるのが分かった。
「壮一!」
誠の慌てる声を無視して、壮一は日葵の手を引く。
「誠真、咲良ちゃんまたな。親父たち、新年また挨拶に来るよ。みんな良いお年を」
「え? そうちゃん? あっ、みんな良いお年を……」
手を引かれながら、なんとか日葵はみんなの手を振ると、壮一にさらわれるように実家を後にした。
誠と弘樹の会話で始まったその会は、和気あいあいと莉乃の手料理を食べながら各々の時間を過ごしていた。
久し振りの年末の年越しはとても賑やかで、壮一も久しぶりに会う誠真たちと楽しそうに話していている。そんな様子を日葵も幸せな気持ちで見ていた。
「そういえば咲良ちゃん、誠真がいろいろ待たせて不安にさせたんだって?」
日葵は誠真の大切にしているという彼女の咲良とも、初めて会うことができ隣で可愛らしく微笑む咲良に視線を向けた。
「そうですね。初めは何もいってくれなかったので」
「本当に、ひどい奴よね。ごめんね」
日葵が咲良とそんな話をしていると、慌てたように誠真が走って来るのが見える。
「姉貴、何か変なことを言ってないだろうな?」
いつも余裕そうで、軽薄なイメージの強かった誠真のその表情を見て、日葵はクスリと声が漏れた。
「こんな誠真初めて見た」
「うるさい」
苦虫を潰したような誠真は、反撃するように日葵を見据える。
「姉貴だって、ようやく壮兄と……」
イジワルそうな表情は父親譲りの誠真の頭を日葵はペシっとはたく。
「うるさいよ」
そんな姉弟のやり取りをしていると、壮一の声が聞こえる。
「日葵」
甘く響く声に誠真が壮一を驚いたように振り返る。
「やばっ、今の壮兄の声かよ」
そう言葉にしてしまい、また壮一に叩かれる誠真を咲良が笑いながら見ていた。
「どうしたの?」
少し恥ずかしさを隠しながら、日葵が壮一に問いかけると壮一はそんな周りの様子を気にすることなく、日葵の手を取る。
「そうちゃん?」
驚いて声を上げると、ソファで4人で寛いでいた両親たちの元へと日葵は連れていかれる。
「誠さん、莉乃さん、そして親父たち」
真剣な声で呼びかけた壮一に、日葵も壮一が何を言いたいのかわかり、ピシッと姿勢を正した。
「8年前、俺のせいで日葵を泣かせて、みんなにも迷惑をかけて本当に申し訳ありませんでした」
そう言って頭を下げた壮一につられ、日葵も頭を下げる。
「再会して、やっぱり俺には日葵しかいないと分かりました。結婚を前提に日葵と付き合っていきたいと思ってます」
(結婚を前提……)
そこまで考えてくれた壮一の本気に、つい日葵は壮一の顔を仰ぎ見た。
「日葵は?」
そんな中、声を発した誠の声に、日葵は慌てて父親の顔を見る。
「私も同じ気持ちです」
はっきりと言い切った日葵に、誠たち両親はお互いの顔を見合わす。
「二人が産まれた日、こんな日が来るかもねって冗談交じりに話したことが、本当になったわね」
莉乃の声に香織も苦笑しながら、日葵を見た。
「うちの息子のせいで遠回りさせちゃってごめんね」
香織の言葉に日葵はブンブンと首を振ると口を開く。
「この会わない時間があったから、きちんと自分の気持ちを確認できたの。だからいいの」
「そう」
日葵の笑顔に、両親たちも幸せそうな顔を見せた。
「壮一! これ以上日葵を泣かせたら許さないぞ」
いきなり過保護な父親全開の誠に、壮一はニヤリと笑みを浮かべた。
「泣かせはしないけど、連れ去るよ」
「おい! 壮一?」
意味が解らないと言った誠の言葉に、壮一は日葵の耳元に唇を寄せる。
「もう二人になりたい」
囁かれたその言葉に、日葵は一気に顔が真っ赤になるのが分かった。
「壮一!」
誠の慌てる声を無視して、壮一は日葵の手を引く。
「誠真、咲良ちゃんまたな。親父たち、新年また挨拶に来るよ。みんな良いお年を」
「え? そうちゃん? あっ、みんな良いお年を……」
手を引かれながら、なんとか日葵はみんなの手を振ると、壮一にさらわれるように実家を後にした。
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