I Still Love You

美希みなみ

文字の大きさ
上 下
55 / 59
これからの未来へ

第4話

しおりを挟む
「全員揃うのは何年ぶりだろうな」
誠と弘樹の会話で始まったその会は、和気あいあいと莉乃の手料理を食べながら各々の時間を過ごしていた。
久し振りの年末の年越しはとても賑やかで、壮一も久しぶりに会う誠真たちと楽しそうに話していている。そんな様子を日葵も幸せな気持ちで見ていた。

「そういえば咲良ちゃん、誠真がいろいろ待たせて不安にさせたんだって?」
日葵は誠真の大切にしているという彼女の咲良とも、初めて会うことができ隣で可愛らしく微笑む咲良に視線を向けた。
「そうですね。初めは何もいってくれなかったので」
「本当に、ひどい奴よね。ごめんね」
日葵が咲良とそんな話をしていると、慌てたように誠真が走って来るのが見える。

「姉貴、何か変なことを言ってないだろうな?」
いつも余裕そうで、軽薄なイメージの強かった誠真のその表情を見て、日葵はクスリと声が漏れた。
「こんな誠真初めて見た」
「うるさい」
苦虫を潰したような誠真は、反撃するように日葵を見据える。
「姉貴だって、ようやく壮兄と……」
イジワルそうな表情は父親譲りの誠真の頭を日葵はペシっとはたく。
「うるさいよ」
そんな姉弟のやり取りをしていると、壮一の声が聞こえる。

「日葵」
甘く響く声に誠真が壮一を驚いたように振り返る。
「やばっ、今の壮兄の声かよ」
そう言葉にしてしまい、また壮一に叩かれる誠真を咲良が笑いながら見ていた。

「どうしたの?」
少し恥ずかしさを隠しながら、日葵が壮一に問いかけると壮一はそんな周りの様子を気にすることなく、日葵の手を取る。
「そうちゃん?」
驚いて声を上げると、ソファで4人で寛いでいた両親たちの元へと日葵は連れていかれる。

「誠さん、莉乃さん、そして親父たち」
真剣な声で呼びかけた壮一に、日葵も壮一が何を言いたいのかわかり、ピシッと姿勢を正した。
「8年前、俺のせいで日葵を泣かせて、みんなにも迷惑をかけて本当に申し訳ありませんでした」
そう言って頭を下げた壮一につられ、日葵も頭を下げる。
「再会して、やっぱり俺には日葵しかいないと分かりました。結婚を前提に日葵と付き合っていきたいと思ってます」

(結婚を前提……)
そこまで考えてくれた壮一の本気に、つい日葵は壮一の顔を仰ぎ見た。
「日葵は?」
そんな中、声を発した誠の声に、日葵は慌てて父親の顔を見る。

「私も同じ気持ちです」
はっきりと言い切った日葵に、誠たち両親はお互いの顔を見合わす。
「二人が産まれた日、こんな日が来るかもねって冗談交じりに話したことが、本当になったわね」
莉乃の声に香織も苦笑しながら、日葵を見た。
「うちの息子のせいで遠回りさせちゃってごめんね」
香織の言葉に日葵はブンブンと首を振ると口を開く。
「この会わない時間があったから、きちんと自分の気持ちを確認できたの。だからいいの」
「そう」
日葵の笑顔に、両親たちも幸せそうな顔を見せた。

「壮一! これ以上日葵を泣かせたら許さないぞ」
いきなり過保護な父親全開の誠に、壮一はニヤリと笑みを浮かべた。

「泣かせはしないけど、連れ去るよ」

「おい! 壮一?」
意味が解らないと言った誠の言葉に、壮一は日葵の耳元に唇を寄せる。

「もう二人になりたい」
囁かれたその言葉に、日葵は一気に顔が真っ赤になるのが分かった。

「壮一!」
誠の慌てる声を無視して、壮一は日葵の手を引く。

「誠真、咲良ちゃんまたな。親父たち、新年また挨拶に来るよ。みんな良いお年を」
「え? そうちゃん? あっ、みんな良いお年を……」
手を引かれながら、なんとか日葵はみんなの手を振ると、壮一にさらわれるように実家を後にした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

夫の不貞現場を目撃してしまいました

秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。 何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。 そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。 なろう様でも掲載しております。

三度目の結婚

hana
恋愛
「お前とは離婚させてもらう」そう言ったのは夫のレイモンド。彼は使用人のサラのことが好きなようで、彼女を選ぶらしい。離婚に承諾をした私は彼の家を去り実家に帰るが……

ずっと君のこと ──妻の不倫

家紋武範
大衆娯楽
鷹也は妻の彩を愛していた。彼女と一人娘を守るために休日すら出勤して働いた。 余りにも働き過ぎたために会社より長期休暇をもらえることになり、久しぶりの家族団らんを味わおうとするが、そこは非常に味気ないものとなっていた。 しかし、奮起して彩や娘の鈴の歓心を買い、ようやくもとの居場所を確保したと思った束の間。 医師からの検査の結果が「性感染症」。 鷹也には全く身に覚えがなかった。 ※1話は約1000文字と少なめです。 ※111話、約10万文字で完結します。

婚約をなかったことにしてみたら…

宵闇 月
恋愛
忘れ物を取りに音楽室に行くと婚約者とその義妹が睦み合ってました。 この婚約をなかったことにしてみましょう。 ※ 更新はかなりゆっくりです。

隣人はクールな同期でした。

氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。 30歳を前にして 未婚で恋人もいないけれど。 マンションの隣に住む同期の男と 酒を酌み交わす日々。 心許すアイツとは ”同期以上、恋人未満―――” 1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され 恋敵の幼馴染には刃を向けられる。 広報部所属 ●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳) 編集部所属 副編集長 ●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳) 本当に好きな人は…誰? 己の気持ちに向き合う最後の恋。 “ただの恋愛物語”ってだけじゃない 命と、人との 向き合うという事。 現実に、なさそうな だけどちょっとあり得るかもしれない 複雑に絡み合う人間模様を描いた 等身大のラブストーリー。

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~ その後

菱沼あゆ
恋愛
その後のみんなの日記です。

私が死ねば楽になれるのでしょう?~愛妻家の後悔~

希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令嬢オリヴィアは伯爵令息ダーフィトと婚約中。 しかし結婚準備中オリヴィアは熱病に罹り冷酷にも婚約破棄されてしまう。 それを知った幼馴染の伯爵令息リカードがオリヴィアへの愛を伝えるが…  【 ⚠ 】 ・前半は夫婦の闘病記です。合わない方は自衛のほどお願いいたします。 ・架空の猛毒です。作中の症状は抗生物質の発明以前に猛威を奮った複数の症例を参考にしています。尚、R15はこの為です。

処理中です...