52 / 59
これからの未来へ
第1話
しおりを挟む
バタバタと日葵は抱えられる壮一とともに、病院へと向かっていた。
顔面蒼白の壮一を横に、もはや生きた心地がしない。何か悪い病気だったら。そんな心配を他所に、病院の診察は疲労、寝不足、栄養失調。その診断結果に日葵は心から安堵する自分に気づいた。
病室に移動させられても、まだ眠ったまま点滴を受けている壮一を見て日葵は苛立ちにも似た感情が湧き出てくる。
(昔も今もカッコつけすぎじゃない。なんでも一人でやろうとして……)
先ほどまでの緊張の糸が途切れたのか、ボロボロと涙が零れ落ちるのをハンカチで抑えながら、日葵は壮一への文句を小声でつぶやいていた。
「そうちゃんのバカ、結局心配したじゃない。隠すなら最後まで隠しなさいよ。でもそうしたらまた置いていかれるの?」
小さいころからの思い出と、再会してからのことが頭をグルグルと頭を廻り、もはや支離滅裂な言葉しかでてこない。
「崎本部長がいるからって諦められるなんて、それぐらいの気持ちなんじゃない。何が好きよ。どうせちょっと言っちゃったとかでしょ? どうせ壮ちゃんなんて昔から自分が一番好きなのよ……」
そう言いながら日葵は昔のことを思い出す。
『日葵はバカだな。仕方がないから一緒にいってやるよ』
『俺は今食べたくないから、日葵食えば?』
(そのあと、めちゃくちゃ夕飯食べてたっけ……)
泣き笑いでそんなことを思い出して、日葵は眠る壮一を見つめた。
なんだかんだ言っても、壮一は日葵を優先していた。文句を言いつつも、すべて日葵がしたいように、日葵の望みをかなえてくれていた。
「やっぱりバカじゃない。私のことなんてほっとけばいいのに……」
そう呟いた時、見つめていた壮一の瞳がゆっくりと開くのがわかった。
「大丈……」
問いかけようとした日葵を遮るように、壮一は驚いたように声を発する。
「日葵……お前どうしてここに。崎本部長はいいのか?」
“崎本部長”その言葉にさっきまでの苛立ちがよみがえる。目が覚めてホッとしているのに、可愛くない言葉が日葵の口からついてしまう。
「第一声がそれ?」
「え?」
日葵のいきなりの問いかけに壮一がゆっくりと身体を起こすのを、日葵は泣くのを我慢しつつ壮一を睨みつける。
「ねえどうしたいのよ!」
あの時、壮一が倒れた時、もう無意識になにも考えられなかった。
崎本のことも柚希のことも、すべてが頭から抜け落ち、ただ壮一が大切だと感じた。
もう一度傷つきたくなくて、隠して隠してきた気持ちは一瞬にして吹き飛んだ。
「私はそうちゃんがどうしたいのか聞いてるの!」
すでに涙腺は決壊して、日葵は壮一の胸をドンと叩いた。
うっと嗚咽を漏らさないようにしていた日葵だったが、グッと力強く両手首を取られ真っすぐな壮一の瞳とぶつかる。
「どうしたいって?」
何かを耐えるような壮一の表情に、日葵は嗚咽を漏らした。
「ただ日葵を俺の物にして、ずっと俺がお前を守って甘やかしたい。崎本部長から強引に奪いたいって何度思ったか」
最後は苦し気に表情を歪め、日葵から壮一は視線を外す。
「じゃあ、どうしてそうしてくれなかったの? 私の昔の不安もすべて責任取ってよ!」
「日葵……?」
意味が解らないのだろう、壮一は呆然と日葵の名前を呼んだ。
顔面蒼白の壮一を横に、もはや生きた心地がしない。何か悪い病気だったら。そんな心配を他所に、病院の診察は疲労、寝不足、栄養失調。その診断結果に日葵は心から安堵する自分に気づいた。
病室に移動させられても、まだ眠ったまま点滴を受けている壮一を見て日葵は苛立ちにも似た感情が湧き出てくる。
(昔も今もカッコつけすぎじゃない。なんでも一人でやろうとして……)
先ほどまでの緊張の糸が途切れたのか、ボロボロと涙が零れ落ちるのをハンカチで抑えながら、日葵は壮一への文句を小声でつぶやいていた。
「そうちゃんのバカ、結局心配したじゃない。隠すなら最後まで隠しなさいよ。でもそうしたらまた置いていかれるの?」
小さいころからの思い出と、再会してからのことが頭をグルグルと頭を廻り、もはや支離滅裂な言葉しかでてこない。
「崎本部長がいるからって諦められるなんて、それぐらいの気持ちなんじゃない。何が好きよ。どうせちょっと言っちゃったとかでしょ? どうせ壮ちゃんなんて昔から自分が一番好きなのよ……」
そう言いながら日葵は昔のことを思い出す。
『日葵はバカだな。仕方がないから一緒にいってやるよ』
『俺は今食べたくないから、日葵食えば?』
(そのあと、めちゃくちゃ夕飯食べてたっけ……)
泣き笑いでそんなことを思い出して、日葵は眠る壮一を見つめた。
なんだかんだ言っても、壮一は日葵を優先していた。文句を言いつつも、すべて日葵がしたいように、日葵の望みをかなえてくれていた。
「やっぱりバカじゃない。私のことなんてほっとけばいいのに……」
そう呟いた時、見つめていた壮一の瞳がゆっくりと開くのがわかった。
「大丈……」
問いかけようとした日葵を遮るように、壮一は驚いたように声を発する。
「日葵……お前どうしてここに。崎本部長はいいのか?」
“崎本部長”その言葉にさっきまでの苛立ちがよみがえる。目が覚めてホッとしているのに、可愛くない言葉が日葵の口からついてしまう。
「第一声がそれ?」
「え?」
日葵のいきなりの問いかけに壮一がゆっくりと身体を起こすのを、日葵は泣くのを我慢しつつ壮一を睨みつける。
「ねえどうしたいのよ!」
あの時、壮一が倒れた時、もう無意識になにも考えられなかった。
崎本のことも柚希のことも、すべてが頭から抜け落ち、ただ壮一が大切だと感じた。
もう一度傷つきたくなくて、隠して隠してきた気持ちは一瞬にして吹き飛んだ。
「私はそうちゃんがどうしたいのか聞いてるの!」
すでに涙腺は決壊して、日葵は壮一の胸をドンと叩いた。
うっと嗚咽を漏らさないようにしていた日葵だったが、グッと力強く両手首を取られ真っすぐな壮一の瞳とぶつかる。
「どうしたいって?」
何かを耐えるような壮一の表情に、日葵は嗚咽を漏らした。
「ただ日葵を俺の物にして、ずっと俺がお前を守って甘やかしたい。崎本部長から強引に奪いたいって何度思ったか」
最後は苦し気に表情を歪め、日葵から壮一は視線を外す。
「じゃあ、どうしてそうしてくれなかったの? 私の昔の不安もすべて責任取ってよ!」
「日葵……?」
意味が解らないのだろう、壮一は呆然と日葵の名前を呼んだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
590
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる