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変化と戸惑い 2
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どうして今日ここに呼ばれたかを友梨佳はすでに理解した。
くるりと踵をかえして、友梨佳は化粧室へと逃げ込んだ。
ジッと洗面台で俯き、心を落ち着かせるように大きく息を吐いた。
母には幸せになってもらいたい。常日頃そう思ってきた。でも……。
母はもう二度と恋愛も男の人もいいわ。それが口癖だった。
そんな母を見てきたからこそ、友梨佳は男を信用することもなく、だれも好きにならない。どうせ裏切られる。そう思って生きてきた。
しかし……。さっきの幸せそうな母の顔を見て友梨佳は混乱した。
(いつまでもこんなところにいても仕方がない。待たせる訳にもいかないよね)
大きく息を吐くと、友梨佳は母の元へと向かった。
「お母さん」
冷静に微笑みながら言うと、慌てたように隣にいた男性が席を立った。
「友梨佳!」
少し心配そうな顔をこちらに向けた母に、友梨佳はなにもいう事ができず、隣にいた男性に目を向けた。
「はじめまして。友梨佳さん。近藤勇といいます」
「初めまして」
友梨佳は頭を下げると、二人の前の席に座った。
「あのね……友梨佳」
今までの事があるせいだろう、母は言いづらそうに言葉を止めた。
「わかってる。お付き合いしてるんでしょ?」
フワリと笑って言った友梨佳に、母はホッとしたような表情を見せた。
「そうなの。今度結婚しようと思って」
「結婚?」
さすがにこの言葉に友梨佳は驚いて、言葉を止めた。
「あ……あのね」
そんな母を制するように、近藤が友梨佳を見た。
「友梨佳さん、友梨佳さんの心配もよくわかるんだ。お母さんの過去は聞いているし。私は妻に10年前に先立たれて、生きる希望を失っていたんだ。でも……お母さんに出会ってもう一度人生をやり直してみようって思えたんだ。許してもらえないだろうか?」
友梨佳はギュッとテーブルの下で、手を握りしめた。
「母をよろしくお願いします」
そんな動揺を隠すように、笑顔を向けた友梨佳に二人は安堵の表情を浮かべた。
そこから和やかに食事を済ませて、友梨佳は仕事のポーカーフェイスがこんなところで役にたつなんて。
そんな事を思いながら、友梨佳はコーヒーに手を伸ばした。
「友梨佳、行きましょうか?」
食事も終わり、母の言葉に友梨佳は首を振った。
「化粧室に寄ってからいくから、先に二人で帰って。今日はごちそうさまでいいんでしょ」
笑顔を向けた友梨佳に、
「もちろんよ。また家にも帰ってらっしゃいよ」
そんな母の言葉に、
「いいわよ。新婚の邪魔なんてしないわよ」
「友梨佳!」
恥ずかしそうに頬を赤らめた母を見て、友梨佳も笑みを浮かべた。
「次は友梨佳の結婚報告が聞けるとお母さん嬉しいわ」
その言葉に、友梨佳の心が凍り付くような気がした。
(何を言ってるの?ずっと結婚はしないって私言ったじゃない)
「そうだね」
なんとかそれだけを言うと、友梨佳は母と近藤に手を振った。
二人の姿を見送ると、友梨佳はスッと表情をなくして、ただ呆然とその場に座っていた。
ウエイトレスが水をそっと入れてくれたのも気づかずぼんやりと、今あった母を思い出した。
(あれは本当にお母さん?あんなお母さんは知らない……)
どうにも行き場のない自分の気持ちをどうすることもできず、友梨佳は無意識に携帯を操作していた。
くるりと踵をかえして、友梨佳は化粧室へと逃げ込んだ。
ジッと洗面台で俯き、心を落ち着かせるように大きく息を吐いた。
母には幸せになってもらいたい。常日頃そう思ってきた。でも……。
母はもう二度と恋愛も男の人もいいわ。それが口癖だった。
そんな母を見てきたからこそ、友梨佳は男を信用することもなく、だれも好きにならない。どうせ裏切られる。そう思って生きてきた。
しかし……。さっきの幸せそうな母の顔を見て友梨佳は混乱した。
(いつまでもこんなところにいても仕方がない。待たせる訳にもいかないよね)
大きく息を吐くと、友梨佳は母の元へと向かった。
「お母さん」
冷静に微笑みながら言うと、慌てたように隣にいた男性が席を立った。
「友梨佳!」
少し心配そうな顔をこちらに向けた母に、友梨佳はなにもいう事ができず、隣にいた男性に目を向けた。
「はじめまして。友梨佳さん。近藤勇といいます」
「初めまして」
友梨佳は頭を下げると、二人の前の席に座った。
「あのね……友梨佳」
今までの事があるせいだろう、母は言いづらそうに言葉を止めた。
「わかってる。お付き合いしてるんでしょ?」
フワリと笑って言った友梨佳に、母はホッとしたような表情を見せた。
「そうなの。今度結婚しようと思って」
「結婚?」
さすがにこの言葉に友梨佳は驚いて、言葉を止めた。
「あ……あのね」
そんな母を制するように、近藤が友梨佳を見た。
「友梨佳さん、友梨佳さんの心配もよくわかるんだ。お母さんの過去は聞いているし。私は妻に10年前に先立たれて、生きる希望を失っていたんだ。でも……お母さんに出会ってもう一度人生をやり直してみようって思えたんだ。許してもらえないだろうか?」
友梨佳はギュッとテーブルの下で、手を握りしめた。
「母をよろしくお願いします」
そんな動揺を隠すように、笑顔を向けた友梨佳に二人は安堵の表情を浮かべた。
そこから和やかに食事を済ませて、友梨佳は仕事のポーカーフェイスがこんなところで役にたつなんて。
そんな事を思いながら、友梨佳はコーヒーに手を伸ばした。
「友梨佳、行きましょうか?」
食事も終わり、母の言葉に友梨佳は首を振った。
「化粧室に寄ってからいくから、先に二人で帰って。今日はごちそうさまでいいんでしょ」
笑顔を向けた友梨佳に、
「もちろんよ。また家にも帰ってらっしゃいよ」
そんな母の言葉に、
「いいわよ。新婚の邪魔なんてしないわよ」
「友梨佳!」
恥ずかしそうに頬を赤らめた母を見て、友梨佳も笑みを浮かべた。
「次は友梨佳の結婚報告が聞けるとお母さん嬉しいわ」
その言葉に、友梨佳の心が凍り付くような気がした。
(何を言ってるの?ずっと結婚はしないって私言ったじゃない)
「そうだね」
なんとかそれだけを言うと、友梨佳は母と近藤に手を振った。
二人の姿を見送ると、友梨佳はスッと表情をなくして、ただ呆然とその場に座っていた。
ウエイトレスが水をそっと入れてくれたのも気づかずぼんやりと、今あった母を思い出した。
(あれは本当にお母さん?あんなお母さんは知らない……)
どうにも行き場のない自分の気持ちをどうすることもできず、友梨佳は無意識に携帯を操作していた。
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