10 / 21
大人の関係は難しい 2
しおりを挟む
(そのまま契約を実行?シャワーぐらい浴びたいな……)
友梨佳は落ち着かない気分で、シャワーをというタイミングを計っていた。
「行こうか」
「え?!いきなり?」
ベッドルームに連れていかれると思った友梨佳は、慌てたような声を上げた。
「食事はいきなりか?」
「え?食事?」
ポカンとして始を見上げた友梨佳の顔を見て、クッと始は肩を揺らすと、
「いきなり取って食うほど俺は飢えてない。せっかくのクラブラウンジだ。少し飲みに行こう。軽食もあるし、レストランからも料理を運んでもらえるから」
その言葉をきいたからか、友梨佳のお腹がグーッとなり、友梨佳は自分の頬が真っ赤になったのがわかった。
「すみません……」
「お前って……本当にかわいいな」
初めて見るほど、満面の笑みで笑った始の笑顔に友梨佳はかわいいと言われた言葉より、始の笑顔に目を奪われた。
「館長……笑えるんですね」
「館長は止めろ。始だ」
少し不機嫌そうに言った始に、友梨佳も観念したように言葉を発した。
「あっ……。始さん……」
「さんもいらない」
「はい……」
連れていかれたラウンジは、照明が落とされた奥まったスペースで、夜景が目の前に広がる横並びの席だった。
周りからも隔離されており、すごく雰囲気のある場所だった。
(デートで初めてこんなところに連れてこられたら、一気にもりあがりそうだな。隣の距離も近いし……)
そんな事を友梨佳は思いながら、ここに来るまでにチラチラと始に向けられた視線で、改めて始の綺麗すぎる顔を再認識した。
そのあたりに芸能人がいても、始をみたら逃げ出したくなる。そんな雰囲気すら漂っていた。
いつものようにネクタイをしていない、そのあいた襟元から見える鎖骨が色っぽい。
初めて男の人に色気を感じ、友梨佳はゾクリとした感覚を覚えた自分に驚いた。
(こんな欲求が私にあったなんて……)
「何を飲む?」
そんな友梨佳の気持ちなど気づいていないだろう、始は慣れた様子でメニューに目を落とし、隣に座った友梨佳を見た。
「おまかせしてもいいですか?」
静かに言った友梨佳の言葉に、始は頷きオーダーすると友梨佳をジッと見た。
「疲れた顔してるな」
そっと伸ばされた指が目の下をゆっくりとなぞり、始の視線が絡みつき、友梨佳は目を離せなくなった。
「あっ……やっぱり昨日の作業は……少し疲れたから」
詰まりながら言った友梨佳の言葉に、始はそのまま友梨佳の頬を撫でると友梨佳の手を握った。
「かん……」
そこまで言ったところで始に睨まれ、
「始……」
呟くように言った友梨佳に、満足そうな表情を始は見せた。
(すごい……恋愛経験値が違いすぎる。もうここから雰囲気づくり?)
すでにバクバクと落ち着かない自分が、これから始とするだろう行為を想像して友梨佳は不安になった。
そこへシャンパンのボトルとグラスが運ばれ、目の前のグラスに綺麗な泡が広がった。
夜景をバックにきらめくゴールドの輝きは、現実の物じゃないような気分になり、友梨佳はじっとその泡を眺めた。
「乾杯」
軽くグラスを合わせて、口に含むとキリッと冷えた辛口のシャンパンがはじけた。
「おいしい」
すんなりと零れ落ちた友梨佳の言葉を拾うように、始も、
「ああ、美味しいな。後味もすっきりとして飲みやすい。酒は好きだっただろ?打ち上げた。沢山飲めよ」
王子様のような顔で、シャンパンを語る始にもはや友梨佳は王子でも貴公子でもなんでも来い!そんな気分になり一気にグラスのシャンパンを飲み干した。
寝不足な所に、一気に体内に入ったアルコールに友梨佳の体温が急激に上がったのが自分でも分かった。
次々と運ばれて来る、綺麗な前菜や料理を前に、友梨佳は啞然として始を見た。
(こんな高級な所で、こんなにたくさんの料理って……いったいいくら?)
自分の財布の中身を思い出して、友梨佳は青くなった。
「ねえ、始?ただの契約にこんな高級なところなんて……」
友梨佳の言葉の意味が分かったのだろう始は、
「友梨佳はそんな心配はしなくていい。俺のしたいようにするって言っただろ?お前は俺に付き合えばいいんだよ」
「でも……それとこれとは……」
まだ渋る友梨佳に、始は運ばれてきた料理を友梨佳にサーブしながら、呆れたように声を上げた。
「俺はそんな契約は望んでない。楽しく過ごして、ストレスを発散したいんだよ。そんな場末の情事みたいなことをするつもりはない」
はっきりと言われ、またこの貴公子がラブホに行く姿も想像することができず、友梨佳は軽く息を吐いた後、
「わかった」
「お前って本当に……普通の女なら喜んでついてくるぞ」
(他の女と一緒にしないでよ!)
そこまで思って、友梨佳はイラっとした自分に驚いた。
(別に私が特別じゃないんだし、気にすることないじゃない。お互いただのストレスの発散のはずでしょ)
友梨佳は冷静を装うと、お皿に盛られた綺麗なサーモンを口に入れた。
「おいしい」
つい、言葉がもれ笑顔になった友梨佳に、始は微笑んで友梨佳の髪にキスを落とした。
(本当に、海外の王子様みたいだよ……)
友梨佳は落ち着かない気分で、シャワーをというタイミングを計っていた。
「行こうか」
「え?!いきなり?」
ベッドルームに連れていかれると思った友梨佳は、慌てたような声を上げた。
「食事はいきなりか?」
「え?食事?」
ポカンとして始を見上げた友梨佳の顔を見て、クッと始は肩を揺らすと、
「いきなり取って食うほど俺は飢えてない。せっかくのクラブラウンジだ。少し飲みに行こう。軽食もあるし、レストランからも料理を運んでもらえるから」
その言葉をきいたからか、友梨佳のお腹がグーッとなり、友梨佳は自分の頬が真っ赤になったのがわかった。
「すみません……」
「お前って……本当にかわいいな」
初めて見るほど、満面の笑みで笑った始の笑顔に友梨佳はかわいいと言われた言葉より、始の笑顔に目を奪われた。
「館長……笑えるんですね」
「館長は止めろ。始だ」
少し不機嫌そうに言った始に、友梨佳も観念したように言葉を発した。
「あっ……。始さん……」
「さんもいらない」
「はい……」
連れていかれたラウンジは、照明が落とされた奥まったスペースで、夜景が目の前に広がる横並びの席だった。
周りからも隔離されており、すごく雰囲気のある場所だった。
(デートで初めてこんなところに連れてこられたら、一気にもりあがりそうだな。隣の距離も近いし……)
そんな事を友梨佳は思いながら、ここに来るまでにチラチラと始に向けられた視線で、改めて始の綺麗すぎる顔を再認識した。
そのあたりに芸能人がいても、始をみたら逃げ出したくなる。そんな雰囲気すら漂っていた。
いつものようにネクタイをしていない、そのあいた襟元から見える鎖骨が色っぽい。
初めて男の人に色気を感じ、友梨佳はゾクリとした感覚を覚えた自分に驚いた。
(こんな欲求が私にあったなんて……)
「何を飲む?」
そんな友梨佳の気持ちなど気づいていないだろう、始は慣れた様子でメニューに目を落とし、隣に座った友梨佳を見た。
「おまかせしてもいいですか?」
静かに言った友梨佳の言葉に、始は頷きオーダーすると友梨佳をジッと見た。
「疲れた顔してるな」
そっと伸ばされた指が目の下をゆっくりとなぞり、始の視線が絡みつき、友梨佳は目を離せなくなった。
「あっ……やっぱり昨日の作業は……少し疲れたから」
詰まりながら言った友梨佳の言葉に、始はそのまま友梨佳の頬を撫でると友梨佳の手を握った。
「かん……」
そこまで言ったところで始に睨まれ、
「始……」
呟くように言った友梨佳に、満足そうな表情を始は見せた。
(すごい……恋愛経験値が違いすぎる。もうここから雰囲気づくり?)
すでにバクバクと落ち着かない自分が、これから始とするだろう行為を想像して友梨佳は不安になった。
そこへシャンパンのボトルとグラスが運ばれ、目の前のグラスに綺麗な泡が広がった。
夜景をバックにきらめくゴールドの輝きは、現実の物じゃないような気分になり、友梨佳はじっとその泡を眺めた。
「乾杯」
軽くグラスを合わせて、口に含むとキリッと冷えた辛口のシャンパンがはじけた。
「おいしい」
すんなりと零れ落ちた友梨佳の言葉を拾うように、始も、
「ああ、美味しいな。後味もすっきりとして飲みやすい。酒は好きだっただろ?打ち上げた。沢山飲めよ」
王子様のような顔で、シャンパンを語る始にもはや友梨佳は王子でも貴公子でもなんでも来い!そんな気分になり一気にグラスのシャンパンを飲み干した。
寝不足な所に、一気に体内に入ったアルコールに友梨佳の体温が急激に上がったのが自分でも分かった。
次々と運ばれて来る、綺麗な前菜や料理を前に、友梨佳は啞然として始を見た。
(こんな高級な所で、こんなにたくさんの料理って……いったいいくら?)
自分の財布の中身を思い出して、友梨佳は青くなった。
「ねえ、始?ただの契約にこんな高級なところなんて……」
友梨佳の言葉の意味が分かったのだろう始は、
「友梨佳はそんな心配はしなくていい。俺のしたいようにするって言っただろ?お前は俺に付き合えばいいんだよ」
「でも……それとこれとは……」
まだ渋る友梨佳に、始は運ばれてきた料理を友梨佳にサーブしながら、呆れたように声を上げた。
「俺はそんな契約は望んでない。楽しく過ごして、ストレスを発散したいんだよ。そんな場末の情事みたいなことをするつもりはない」
はっきりと言われ、またこの貴公子がラブホに行く姿も想像することができず、友梨佳は軽く息を吐いた後、
「わかった」
「お前って本当に……普通の女なら喜んでついてくるぞ」
(他の女と一緒にしないでよ!)
そこまで思って、友梨佳はイラっとした自分に驚いた。
(別に私が特別じゃないんだし、気にすることないじゃない。お互いただのストレスの発散のはずでしょ)
友梨佳は冷静を装うと、お皿に盛られた綺麗なサーモンを口に入れた。
「おいしい」
つい、言葉がもれ笑顔になった友梨佳に、始は微笑んで友梨佳の髪にキスを落とした。
(本当に、海外の王子様みたいだよ……)
0
お気に入りに追加
498
あなたにおすすめの小説
寡黙な彼は欲望を我慢している
山吹花月
恋愛
近頃態度がそっけない彼。
夜の触れ合いも淡白になった。
彼の態度の変化に浮気を疑うが、原因は真逆だったことを打ち明けられる。
「お前が可愛すぎて、抑えられないんだ」
すれ違い破局危機からの仲直りいちゃ甘らぶえっち。
◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。
執着系上司の初恋
月夜(つきよ)
恋愛
初めての恋心に妄想と愛情が暴走する苦労性イケメン(36才)とワケあり真面目女子(29才)を優しく見守る、部長3人組や、美魔女、ツンデレ男子、忠犬(男)、乙女(熟女)などが織りなすラブコメ・・R18仕様です(笑)
7/02無事挙式。番外編として溺愛が過ぎる初夜、小話投稿。
7/16番外編 元カノ?な安藤課長編「キスとぬくもり」スタート。
バーで出会ったイケメンと一夜を過ごした安藤課長。その一夜は周りさえも巻き込んだ波乱の幕開けに。拗らせイケメンモデルとかわいいものは全て愛でる安藤課長の勘違いとすれ違いな攻防戦。11/10無事完結。
恋煩いから目を逸らす
玉響なつめ
恋愛
琴原ミズキは会社員。
同僚で同期の山科圭人とはセフレの関係だ。
最初は割り切った関係だったはずなのに、いつの間にか彼に恋をしていた。
だけど、セフレ関係で続いて、お互いプライベートも知らない。
そんな関係に未来を見出せなくて悶々とする中、新入社員の水原希美が圭人を狙っている姿を見て、ミズキは限界を迎えた。
「この関係を、終わりにしよう」
果たしてミズキはこの恋煩いから逃げ出せるのか。
※小説家になろう(ムーンライトノベルズ)にも掲載中
愛することを忘れた彼の不器用な愛し方
あさの紅茶
恋愛
エッチが下手という理由で突然別れを通告された私、西尾芽生(23)
職場で一目惚れした日下さん(28)と酔った勢いで一夜の過ちを犯してしまった。
きっと私のことを慰めるために抱いてくれたに違いないのに、なんと日下さんの方が泣いて甘えてきた。
どういうこと?
それ以来、私は日下さんが気になってしかたがない。
涙の理由
日下さんの指にはまる結婚指輪
私はどうしたらいいの?
**********
このお話は他のサイトにも掲載しています
Catch hold of your Love
天野斜己
恋愛
入社してからずっと片思いしていた男性(ひと)には、彼にお似合いの婚約者がいらっしゃる。あたしもそろそろ不毛な片思いから卒業して、親戚のオバサマの勧めるお見合いなんぞしてみようかな、うん、そうしよう。
決心して、お見合いに臨もうとしていた矢先。
当の上司から、よりにもよって職場で押し倒された。
なぜだ!?
あの美しいオジョーサマは、どーするの!?
※2016年01月08日 完結済。
冷酷無比な国王陛下に愛されすぎっ! 絶倫すぎっ! ピンチかもしれませんっ!
仙崎ひとみ
恋愛
子爵家のひとり娘ソレイユは、三年前悪漢に襲われて以降、男性から劣情の目で見られないようにと、女らしいことを一切排除する生活を送ってきた。
18歳になったある日。デビュタントパーティに出るよう命じられる。
噂では、冷酷無悲な独裁王と称されるエルネスト国王が、結婚相手を探しているとか。
「はあ? 結婚相手? 冗談じゃない、お断り」
しかし両親に頼み込まれ、ソレイユはしぶしぶ出席する。
途中抜け出して城庭で休んでいると、酔った男に絡まれてしまった。
危機一髪のところを助けてくれたのが、何かと噂の国王エルネスト。
エルネストはソレイユを気に入り、なんとかベッドに引きずりこもうと企む。
そんなとき、三年前ソレイユを助けてくれた救世主に似た男性が現れる。
エルネストの弟、ジェレミーだ。
ジェレミーは思いやりがあり、とても優しくて、紳士の鏡みたいに高潔な男性。
心はジェレミーに引っ張られていくが、身体はエルネストが虎視眈々と狙っていて――――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる