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大人の関係は難しい
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「無事終わりました!」
ペコリと頭を下げた麻里に、友梨佳も微笑んだ。
「よかった。気に入ってくださった?」
「はい!本当に喜んでくださって。「わがまま言ってすみません。でもどうしても妥協したくなくて。写真以上に素敵です」って言ってもらえました。本当にありがとうございました」
また頭を下げた麻里に、友梨佳は「頭を上げて」と言って麻里を見た。
「麻里ちゃん、今どんな気持ち?」
「本当に嬉しいです!初めてこんなに達成感を感じたし、新婦様の笑顔が見られて幸せでした。全部自分でできたらよかったんですけど……これからもご指導よろしくおねがいします!」
頬を上気させて興奮気味に話す麻里を見て、友梨佳も嬉しくなり、
「この気持ちを忘れないでね」
「はい!」
麻里が自分の席に戻るのを、ホッとして友梨佳は見送った。
仕事が終わり、ショップ出ると友梨佳はスマホをカバンから取り出した。
不意に昨日の始とのやり取りが思い出され、友梨佳は一人歩きながら頬が熱くなり慌てて周りを見渡した。
(私どんな顔してたんだろ……)
チラリとすれ違った男性の視線を感じて、友梨佳は恥ずかしくなり慌てて無表情を決め込んだ。
そして21:20というスマホのディスプレイの文字を見て、始はまだ仕事だろうと思い再度カバンにしまおうとすると、着信をしらす画面が表示され咄嗟に通話ボタンを押していた。
『早いな。出るの』
クスクス笑いながら言った、始の声に友梨佳は恥ずかしくなり早口で言葉を発した。
「ちょうど今電話しようと思ってたんです」
少しの間があって、
『誰に?』
少しトーンの下がった声に、友梨佳は疑問を持ちつつも、
「館長に」
『ならいいけど』
友梨佳の返答にいつも通りの返事が返ってきて、気のせいかと友梨佳は言葉を続けた。
「昨日はありがとうございました。無事に終わりました」
『そうか。それはよかった。いい出来だったからな。それで俺の要件。今から帰るのか?』
「はい。明日休みなのでビールでもコンビニで買って」
おっさんの様な返事をしてしまい、相変わらずの自分の女子力のなさにちょっと返答を後悔しつつも、お洒落なカフェやバーで一人飲むよりは、ゆっくりと家でテレビを見ながらゴロゴロしたいというのは友梨佳の本音だ。
『じゃあ、ウィンストンホテルの5035室。来て。タクシー使っていいから』
「え……?」
その言葉に友梨佳は呆然として、なんと答えるか悩んでいると、
『契約だろ?』
その言葉にハッとした。
(どうしよう……そういうことだよね?え?本気だった?)
『何?怖気ついた?やめてもいいよ』
クスリと電話の向こうで、イジワルそうに笑った顔が友梨佳は想像できて、イラっとすると答えていた。
「別に怖気ついてなんか。すぐに行きます!」
(私のバカ……!!)
『48階のレセプションに伝えてあるから、鍵もらって部屋にきて』
「はい……」
言ってしまった事は、後悔しても仕方なく友梨佳は電話を切るとタクシーを止めると乗り込んだ。
エントランスでタクシーから降りると、友梨佳はホテルを見上げてため息をついた。
(どうせカラダだけの関係なら、ラブホとかでいいのに……。こんな高級ホテル彼氏とも来た事ないよ……)
都内でも有数の高級ホテルを前に友梨佳は複雑な気持ちでエレベーターを見つめると、言われた通り48のボタンを押した。
【クラブフロア】
その文字を見つめて、友梨佳はまたため息をついた。
恐る恐る友梨佳は扉の前に立ち、ベルを押した。
しばらくして、小さな物音とともに扉が開き、いつも通りの始が顔を出した。
「おつかれ」
不意に言われたねぎらいの言葉に、友梨佳は驚いて始を見た。
「どうした?入れよ」
これから始まることに緊張と、とまどいで落ち着かない友梨佳をよそに始はいたって余裕の表情を浮かべているように見えた。
「はい」
ゆっくりと部屋に足を踏み入れると、広い廊下があり、高級マンションのような玄関が広がり慌てて始の後ろに続いた。
目の前の扉を入ると、目の前に広がる大きな窓から見える東京の夜景に、一瞬で目を奪われた。
「すごい……キレイ」
呟くように言った友梨佳に、
「いいだろ?たまにはこういう雰囲気も。昨日から疲れただろうし」
友梨佳の真横にたち、夜景に目を向けた始の横顔を友梨佳はこっそり盗み見た。
ペコリと頭を下げた麻里に、友梨佳も微笑んだ。
「よかった。気に入ってくださった?」
「はい!本当に喜んでくださって。「わがまま言ってすみません。でもどうしても妥協したくなくて。写真以上に素敵です」って言ってもらえました。本当にありがとうございました」
また頭を下げた麻里に、友梨佳は「頭を上げて」と言って麻里を見た。
「麻里ちゃん、今どんな気持ち?」
「本当に嬉しいです!初めてこんなに達成感を感じたし、新婦様の笑顔が見られて幸せでした。全部自分でできたらよかったんですけど……これからもご指導よろしくおねがいします!」
頬を上気させて興奮気味に話す麻里を見て、友梨佳も嬉しくなり、
「この気持ちを忘れないでね」
「はい!」
麻里が自分の席に戻るのを、ホッとして友梨佳は見送った。
仕事が終わり、ショップ出ると友梨佳はスマホをカバンから取り出した。
不意に昨日の始とのやり取りが思い出され、友梨佳は一人歩きながら頬が熱くなり慌てて周りを見渡した。
(私どんな顔してたんだろ……)
チラリとすれ違った男性の視線を感じて、友梨佳は恥ずかしくなり慌てて無表情を決め込んだ。
そして21:20というスマホのディスプレイの文字を見て、始はまだ仕事だろうと思い再度カバンにしまおうとすると、着信をしらす画面が表示され咄嗟に通話ボタンを押していた。
『早いな。出るの』
クスクス笑いながら言った、始の声に友梨佳は恥ずかしくなり早口で言葉を発した。
「ちょうど今電話しようと思ってたんです」
少しの間があって、
『誰に?』
少しトーンの下がった声に、友梨佳は疑問を持ちつつも、
「館長に」
『ならいいけど』
友梨佳の返答にいつも通りの返事が返ってきて、気のせいかと友梨佳は言葉を続けた。
「昨日はありがとうございました。無事に終わりました」
『そうか。それはよかった。いい出来だったからな。それで俺の要件。今から帰るのか?』
「はい。明日休みなのでビールでもコンビニで買って」
おっさんの様な返事をしてしまい、相変わらずの自分の女子力のなさにちょっと返答を後悔しつつも、お洒落なカフェやバーで一人飲むよりは、ゆっくりと家でテレビを見ながらゴロゴロしたいというのは友梨佳の本音だ。
『じゃあ、ウィンストンホテルの5035室。来て。タクシー使っていいから』
「え……?」
その言葉に友梨佳は呆然として、なんと答えるか悩んでいると、
『契約だろ?』
その言葉にハッとした。
(どうしよう……そういうことだよね?え?本気だった?)
『何?怖気ついた?やめてもいいよ』
クスリと電話の向こうで、イジワルそうに笑った顔が友梨佳は想像できて、イラっとすると答えていた。
「別に怖気ついてなんか。すぐに行きます!」
(私のバカ……!!)
『48階のレセプションに伝えてあるから、鍵もらって部屋にきて』
「はい……」
言ってしまった事は、後悔しても仕方なく友梨佳は電話を切るとタクシーを止めると乗り込んだ。
エントランスでタクシーから降りると、友梨佳はホテルを見上げてため息をついた。
(どうせカラダだけの関係なら、ラブホとかでいいのに……。こんな高級ホテル彼氏とも来た事ないよ……)
都内でも有数の高級ホテルを前に友梨佳は複雑な気持ちでエレベーターを見つめると、言われた通り48のボタンを押した。
【クラブフロア】
その文字を見つめて、友梨佳はまたため息をついた。
恐る恐る友梨佳は扉の前に立ち、ベルを押した。
しばらくして、小さな物音とともに扉が開き、いつも通りの始が顔を出した。
「おつかれ」
不意に言われたねぎらいの言葉に、友梨佳は驚いて始を見た。
「どうした?入れよ」
これから始まることに緊張と、とまどいで落ち着かない友梨佳をよそに始はいたって余裕の表情を浮かべているように見えた。
「はい」
ゆっくりと部屋に足を踏み入れると、広い廊下があり、高級マンションのような玄関が広がり慌てて始の後ろに続いた。
目の前の扉を入ると、目の前に広がる大きな窓から見える東京の夜景に、一瞬で目を奪われた。
「すごい……キレイ」
呟くように言った友梨佳に、
「いいだろ?たまにはこういう雰囲気も。昨日から疲れただろうし」
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