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本当の彼 2
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約束の時間になり、友梨佳は約束のバーの前で立ち止まった。
指定された場所は会員制のようで、薄暗い店内の奥には夜景が広がっていた。
(こんな場所だなんて……)
とりあえず一度化粧室へ行くと、自分の全身を見つめた。
アップにしていた髪を下ろし、ハーフアップにして、もう一度化粧ポーチを出して口紅を塗りなおした。
幸運なことに、今日は黒のワンピースを着ていた為なんとかこの空間でも浮かなさそうで安堵した。
(館長ってこんな所の会員になれるほどお給料いいの?)
そんな事が頭をよぎったが、意を決して友梨佳は店内へと足を踏み入れた。
やわらかな笑顔を向けた店員に約束の旨を伝えると、夜景の見える奥まった席に案内された。
「館長、お疲れ様です」
緊張したが、なんとか笑顔を作ると友梨佳は始を見た。
「お疲れ様です」
メガネの奥から冷ややかな視線を感じ、友梨佳はここに来たことをすでに後悔していた。
「あの……」
「座って下さい」
そう言われ、始の前の席にゆっくりと座ると「飲めますか?」そう聞かれて友梨佳は黙って頷いた。
「何が好きですか?」
「どんなものでも大丈夫です」
緊張して、好みのものなどいう事ができず、友梨佳は始に選択を任せた。
始は自分にウィスキーのロックと友梨佳に何かお勧めの物をと頼むと、じっと友梨佳を見据えた。
「社長と水崎さんの件ですか?」
いきなり本題に入られて、友梨佳は始をみることもできずコクリと頷いた。
「水崎さんの様子は……会社でも見てますがひどいですね。少し瘦せましたか?」
きちんと自分の部下を見ているのだと、意外な気持ちで友梨佳は始をチラリとみると、綺麗すぎる表情からは特に感情を読み取ることはできず、視線を戻すと運ばれてきたブルーのカクテルに目を向けた。
「はい。だいぶ痩せたと思います。なるべく一緒に食事を取るようにはしているんですが、あまり食べずに、眠れないみたいで……」
そこまで言うと友梨佳は、一口カクテルを口にすると、ゆっくりと飲み込んだ。
しばらくの沈黙の後、
「それで私にどうしろと?」
特に口調は変わらなかったが、淡々といわれた言葉に、友梨佳はイラっとして始を見た。
「どうしろって、あなたは友人じゃないいんですか?心配じゃないの?私はただ麻耶をきちんと納得した言葉で振らなかった社長が許せないんです!どうして……?」
勢いでそこまで言ってしまって、ハッとして友梨佳は慌てて口を噤むと、
「すみません……館長に……つい……」
「お前……そっちが素か……?」
クスリと笑った始に、友梨佳はその表情と、言葉使いに唖然と始を見た。
「別にいいよ。お前の本音で話せよ。俺だって心配だよ。アイツには幸せになって欲しい。ならないといけない……」
始の話を聞かないといけないのは解っていたが、氷の貴公子の変貌ぶりに友梨佳はついていけず、ポカンとして始を見続けていた。
「おい!聞いてるのか?」
額を指で押されて、初めてジッと始を見つめていた事に気づいて慌てて口を開いた。
「いや……あの、氷の貴公子……え?……ええ!」
「なんだよ?氷の貴公子って俺の事?」
尚もニヤリと笑った始は、目の前のグラスをゆっくりと手にすると妖艶の雰囲気を漂わせて、友梨佳を見据えた。
「だって……会社と……別人……」
「今はプライベートの話だろ?プライベートの話の時まで、仕事のスタイルを貫かないといけないの?」
ジッと始に見つめられて、友梨佳は頬が熱くなるのが解り、慌てて顔を逸らした。
「いえ……大丈夫です……。驚いただけなので……」
指定された場所は会員制のようで、薄暗い店内の奥には夜景が広がっていた。
(こんな場所だなんて……)
とりあえず一度化粧室へ行くと、自分の全身を見つめた。
アップにしていた髪を下ろし、ハーフアップにして、もう一度化粧ポーチを出して口紅を塗りなおした。
幸運なことに、今日は黒のワンピースを着ていた為なんとかこの空間でも浮かなさそうで安堵した。
(館長ってこんな所の会員になれるほどお給料いいの?)
そんな事が頭をよぎったが、意を決して友梨佳は店内へと足を踏み入れた。
やわらかな笑顔を向けた店員に約束の旨を伝えると、夜景の見える奥まった席に案内された。
「館長、お疲れ様です」
緊張したが、なんとか笑顔を作ると友梨佳は始を見た。
「お疲れ様です」
メガネの奥から冷ややかな視線を感じ、友梨佳はここに来たことをすでに後悔していた。
「あの……」
「座って下さい」
そう言われ、始の前の席にゆっくりと座ると「飲めますか?」そう聞かれて友梨佳は黙って頷いた。
「何が好きですか?」
「どんなものでも大丈夫です」
緊張して、好みのものなどいう事ができず、友梨佳は始に選択を任せた。
始は自分にウィスキーのロックと友梨佳に何かお勧めの物をと頼むと、じっと友梨佳を見据えた。
「社長と水崎さんの件ですか?」
いきなり本題に入られて、友梨佳は始をみることもできずコクリと頷いた。
「水崎さんの様子は……会社でも見てますがひどいですね。少し瘦せましたか?」
きちんと自分の部下を見ているのだと、意外な気持ちで友梨佳は始をチラリとみると、綺麗すぎる表情からは特に感情を読み取ることはできず、視線を戻すと運ばれてきたブルーのカクテルに目を向けた。
「はい。だいぶ痩せたと思います。なるべく一緒に食事を取るようにはしているんですが、あまり食べずに、眠れないみたいで……」
そこまで言うと友梨佳は、一口カクテルを口にすると、ゆっくりと飲み込んだ。
しばらくの沈黙の後、
「それで私にどうしろと?」
特に口調は変わらなかったが、淡々といわれた言葉に、友梨佳はイラっとして始を見た。
「どうしろって、あなたは友人じゃないいんですか?心配じゃないの?私はただ麻耶をきちんと納得した言葉で振らなかった社長が許せないんです!どうして……?」
勢いでそこまで言ってしまって、ハッとして友梨佳は慌てて口を噤むと、
「すみません……館長に……つい……」
「お前……そっちが素か……?」
クスリと笑った始に、友梨佳はその表情と、言葉使いに唖然と始を見た。
「別にいいよ。お前の本音で話せよ。俺だって心配だよ。アイツには幸せになって欲しい。ならないといけない……」
始の話を聞かないといけないのは解っていたが、氷の貴公子の変貌ぶりに友梨佳はついていけず、ポカンとして始を見続けていた。
「おい!聞いてるのか?」
額を指で押されて、初めてジッと始を見つめていた事に気づいて慌てて口を開いた。
「いや……あの、氷の貴公子……え?……ええ!」
「なんだよ?氷の貴公子って俺の事?」
尚もニヤリと笑った始は、目の前のグラスをゆっくりと手にすると妖艶の雰囲気を漂わせて、友梨佳を見据えた。
「だって……会社と……別人……」
「今はプライベートの話だろ?プライベートの話の時まで、仕事のスタイルを貫かないといけないの?」
ジッと始に見つめられて、友梨佳は頬が熱くなるのが解り、慌てて顔を逸らした。
「いえ……大丈夫です……。驚いただけなので……」
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