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第128話 魔女は神に祈らない
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「どうしたんだカミューーなっ!? なんで奴が生きてんだ!?」
カミュの叫び声を聞き、彼の元へ急行したクアトロが目にしたもの……それは、体躯こそ縮小してはいるが紛れもなく倒したはずの神獣・九尾妖狐であった。
今はダイアウルフや喚虎と同等程度の大きさになっており、傷や疲労などは一切無いように見受けられる。
そればかりか今の姿こそが本来の姿であるように思えてならず、そう思わせるほどの威圧感を奴は放っていた。
「ちっ、クソったれが……! これこそ一体全体どうなってんだって話だぜ……今は俺しかいねぇし、こりゃあ逆転負けも覚悟しとかねぇとな……だがよぉ!」
額から冷たい汗を掻きつつ、クアトロは右手を掲げて「カムル!」と思い切り叫ぶ。すると、投げたはずの大戦斧がどこからともなく飛んできては掲げた右手に収まる。
続けて彼は大戦斧を両手で持って足を開き、腰を落としてから身体を捻転させてチカラを溜め始めた。
「へっ、こいつが効かなかったら素直に諦めてやらぁ! いくぜ……キコリス流奥義! フォレストリッパー!」
目を見開いて力の限り大戦斧を横に振ると、扇状に発生した黒い斬撃が目にも留まらぬ速さで伝播していき、瞬く間に九尾妖狐の身体を通過。
音も無く通り過ぎてしまったので不発かと思われた次の瞬間、遅れて風切り音と金切り音が立て続けに鳴り響く。
その斬撃の威力は凄まじいもので、奴の後方に聳え立つ木々や点々と置かれた岩が次々に両断されていき、果ては視認できる範疇を超えて木や岩の倒れる音だけが聞こえてくるほど。
されど、奴の身体には傷一つ付いた様子はなく、逆に奥義を放ったクアトロの方に異変が起こるという結果に。
「……クソぉ、明らかに俺のターンだっただろうが……ったくよぉ、神獣なら空気くらい読めよなぁ……」
愚痴をボヤいたクアトロの右胸と背中には知らぬ間に小さな穴が空いており、その穴は九尾妖狐の攻撃によるもので何かが貫通した跡に他ならない。
一方の奴は身体にこそ傷は付かなかったものの、足元後方には6本もの尻尾がひっそりと斬り落とされていた。
つまり、クアトロの攻撃は効いていたことになる。
だがその事実を知る前に彼は力尽き、うつ伏せの状態で倒れてしまう。そして、薄れゆく意識のなか呟く。
「へへっ、まさか人生まで諦める羽目になるなんてな……わりぃみんな、俺先に逝くわ……」
彼はそう言い残し、遂には瞳を閉じる……ーー
「ーーって、勝手に逝くなバカぁぁぁーっ!!」
嫌な予感がしたのか、ファラの元から急いで戻ってきたネマは必死の形相で白い石を投げた。
その白い石は先程眠りについたクアトロの身体に当たり、バウンドしたと同時に白い治癒の光を放つ。
「お願い! どうか間に合って!」
ネマは両手を組んで強く祈った……が、クアトロに変化は見られず。
「そ、そんな……かっ、神様お願いします! どうか、どうかアイツを助けてください!」
本来、魔女は神に祈らない。というより、そもそも信じてなどいない。なので、神が彼女の願いを聞き入れる道理はない、のだが……
「……ん、んん……ん? 俺、もしかしなくても生きてんのか……?」
急にクアトロの全身が白く光っては消えた後、本当にただ眠っていただけかのように彼は起き上がった。
すると必死の形相から一変、大粒の涙を流しながらネマは……
カミュの叫び声を聞き、彼の元へ急行したクアトロが目にしたもの……それは、体躯こそ縮小してはいるが紛れもなく倒したはずの神獣・九尾妖狐であった。
今はダイアウルフや喚虎と同等程度の大きさになっており、傷や疲労などは一切無いように見受けられる。
そればかりか今の姿こそが本来の姿であるように思えてならず、そう思わせるほどの威圧感を奴は放っていた。
「ちっ、クソったれが……! これこそ一体全体どうなってんだって話だぜ……今は俺しかいねぇし、こりゃあ逆転負けも覚悟しとかねぇとな……だがよぉ!」
額から冷たい汗を掻きつつ、クアトロは右手を掲げて「カムル!」と思い切り叫ぶ。すると、投げたはずの大戦斧がどこからともなく飛んできては掲げた右手に収まる。
続けて彼は大戦斧を両手で持って足を開き、腰を落としてから身体を捻転させてチカラを溜め始めた。
「へっ、こいつが効かなかったら素直に諦めてやらぁ! いくぜ……キコリス流奥義! フォレストリッパー!」
目を見開いて力の限り大戦斧を横に振ると、扇状に発生した黒い斬撃が目にも留まらぬ速さで伝播していき、瞬く間に九尾妖狐の身体を通過。
音も無く通り過ぎてしまったので不発かと思われた次の瞬間、遅れて風切り音と金切り音が立て続けに鳴り響く。
その斬撃の威力は凄まじいもので、奴の後方に聳え立つ木々や点々と置かれた岩が次々に両断されていき、果ては視認できる範疇を超えて木や岩の倒れる音だけが聞こえてくるほど。
されど、奴の身体には傷一つ付いた様子はなく、逆に奥義を放ったクアトロの方に異変が起こるという結果に。
「……クソぉ、明らかに俺のターンだっただろうが……ったくよぉ、神獣なら空気くらい読めよなぁ……」
愚痴をボヤいたクアトロの右胸と背中には知らぬ間に小さな穴が空いており、その穴は九尾妖狐の攻撃によるもので何かが貫通した跡に他ならない。
一方の奴は身体にこそ傷は付かなかったものの、足元後方には6本もの尻尾がひっそりと斬り落とされていた。
つまり、クアトロの攻撃は効いていたことになる。
だがその事実を知る前に彼は力尽き、うつ伏せの状態で倒れてしまう。そして、薄れゆく意識のなか呟く。
「へへっ、まさか人生まで諦める羽目になるなんてな……わりぃみんな、俺先に逝くわ……」
彼はそう言い残し、遂には瞳を閉じる……ーー
「ーーって、勝手に逝くなバカぁぁぁーっ!!」
嫌な予感がしたのか、ファラの元から急いで戻ってきたネマは必死の形相で白い石を投げた。
その白い石は先程眠りについたクアトロの身体に当たり、バウンドしたと同時に白い治癒の光を放つ。
「お願い! どうか間に合って!」
ネマは両手を組んで強く祈った……が、クアトロに変化は見られず。
「そ、そんな……かっ、神様お願いします! どうか、どうかアイツを助けてください!」
本来、魔女は神に祈らない。というより、そもそも信じてなどいない。なので、神が彼女の願いを聞き入れる道理はない、のだが……
「……ん、んん……ん? 俺、もしかしなくても生きてんのか……?」
急にクアトロの全身が白く光っては消えた後、本当にただ眠っていただけかのように彼は起き上がった。
すると必死の形相から一変、大粒の涙を流しながらネマは……
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